2025年08月25日

スマホの高画素カメラは是か非か(2)

Motorola razr 40のカメラの各撮影モードの画質を評価していきます。このスマホの標準カメラアプリの主要な撮影モードの動作をまとめると以下のようになります(各撮影モードについては前記事を参照ください)。各モードのほかにも、画質に影響する設定(スマート高解像度、ショット最適化など)がありますが、ここではひとまず標準的な設定(スマート高解像度OFF, ショット最適化ON)で話を進めます。

ss.jpg
razr 40の撮影モード


写真モード(通常モード)
倍率2倍以上のデジタルズームを行ったときのみ、全画素読み出し(64MPixel)になり解像度が上がる。1倍から2倍未満までの間は16Mixelのビニング読み出し。
エッジ強調処理がもっとも強く、エッジ周囲に濃い縁取りが生じる。
プロモード
デジタルズームを行っても全画素読み出しにならず、常に16MPixelのビニング読み出しになる
そのため、デジタルズーム時の画像が写真モードよりも甘い
この挙動はJPEGのみ保存か、RAW+JPEG保存かによらない
RAW画像にはデジタルズームが適用されず、常に1.0x(25mm)の広角の画像が保存される
望遠(デジタルズーム)と広角の画像の同時保存ができる
このRAW画像はデジタルズーム中かどうかに関わらず常に16MPixelに固定され、全画素(64MPixel)読み出しのRAWは保存されない
Ultra-Resモード
1.0x(25mm)の広角の画角のままで全画素読み出し(64MPixel)になる
写真モードやプロモードの 1.0x より明確に高精細になる
写真モードの2倍ズームとほぼ同等の解像感
ノイズ除去やエッジ強調、色補正が弱まる
解像感がありつつもエッジがギスギスしない、自然な画像が得られる
「写真」モードの「ナチュラル」よりもさらに色味が自然になる
画像がややノイジーになる
機能が低い
デジタルズームや RAW データ保存ができない
色味(ビビッド・ナチュラル)の変更ができない

これを理解するうえで重要なのが「全画素読み出し」か「ビニング読み出し」か、です。このスマホを含め、最近の多くのスマホ用イメージセンサはQuad-Bayer 配列という画素配置となっており、通常は2x2の4画素の情報をセンサ上でひとまとめにしてから読み出します(ビニング読み出し)。ですので、64MPixelのこのセンサもこのモードでは16MPixel相当になるわけです。読み出し速度のほか、低照度時のノイズ特性などの点でメリットがあるとされます。

それでは、上記の各モードについて見ていきましょう。なお、それぞれのオリジナル写真はこちらで確認できます。

pro.jpg
オリジナル画像:,

まずプロモードですが、こと解像感に関して言えば問題ありです。写真モード(通常モード)ではデジタルズームを使ったときに全画素読み出しモードに切り替わるのに対し、プロモードはビニング読み出し固定になっており、デジタルズーム時の解像感が明確に低くなってしまいます。上の写真は写真モードとプロモードで、2xデジタルズーム時の中央付近を切り出したものです。最近のスマホはこのように全画素読み出しとビニング読み出しを切り替えることで、デジタルズーム時の画質低下を抑制するようになっていますが、これが働かないのは致命的です。

プロモードではRAW画像の保存が可能ですが、このRAWも常にビニングモードのもので、全画素読み出しのRAW画像は保存できるようにはなっていないようです。ただしデジタルズームを使っているときもRAWには画像全体が保存されているので、広角と望遠の両方の画像が同時に得られるのは面白いですが、後述する Ultra-Res モードで撮影してから中央付近を切り出したほうが画質が良く、広角と望遠の両方の画像が得られるため、メリットはありません。1点、プロモードを弁護するとすれば、エッジ強調処理が通常の「写真」モードよりも弱く、特に倍率1倍の撮影時にはより自然な画像が得られます。ただ、これもやはり Ultra-Res モードで撮影した画像を1/2に縮小したほうが高画質です。

ultra.jpg
オリジナル画像:,

次に Ultra-Res モードです。このモードではデジタルズームはありませんが、画素数が4倍(一辺の画素数は2倍)ですので、通常モードの2xデジタルズームの画像と同じ画素数の領域を切り出すと、同じ倍率(画角)になります。結果は上の写真のとおりで、解像感には差がありません。同じセンサで同じように撮影しているわけですから、これはある意味で当然のことで、Ultra-Res モードで撮影した画像の中央付近を切り出したものが2xデジタルズームと言っても良いわけです。ただし注目すべきは、その画像処理の違いです。通常の写真モードではノイズ除去処理とエッジ強調処理がかなり強くかけられており、画質はいかにも「スマホの写真」らしい、ちょっとギスギスしたものになっています。それに対し Ultra-Res モードはノイズが見られますが、エッジ強調が弱いため、明部と暗部の境界線に黒い線などが出にくくなっています。

ultra2.jpg

この写真は同じ倍率で違う場所を拡大したものです。大きく拡大して観察すると、橋のトラスが写真モードではギザギザしてしまっていますが、Ultra-Resモードでは滑らかで自然です。山の稜線も、通常モードでは稜線の縁に薄く黒線を引いたようになっているのが、Ultra-Res モードでは自然です。ほかにも手前の木々の描写も、Ultra-Resモードのほうが繊細さを感じさせるものになっています。

ultra2.jpg
オリジナル画像:,

では、デジタルズームをしていないときではどうでしょうか。この写真は、Ultra-Resモードで撮影した写真を1/2の大きさにリサイズし(結果、画素数が全く同じになる)、同じ比率で拡大したものです。通常モードでは、デジタルズームをしない場合はビニング読み出しになってしまいます。そのため上の比較のように、精細度が明確に異なるものとなってしまいます。特にこの写真モードで2倍未満の倍率のときはエッジ強調が強くかかってしまい、山の稜線や建物の境界に不自然な陰影が現れてしまっています。手前の竹藪の質感なども、比べるべくもありません。縮小するとノイズが減少する効果が得られるため、Ultra-Resモードのノイズもさほど気にならないものとなっています。

ultra3.jpg

しかし、こういう違いは画像を大きく拡大して、目を皿のようにして比べないとわからないのではないか・・そう思われるかもしれません。しかし、エッジ強調の弊害は画像を小さくしても残ります。上の写真は、双方の画像を通常モードの1/4、つまり1156x867画素の1Mpixelサイズに縮小したものの一部です。これぐらい小さくすると、確かに違いはわかりにくくなりますが、やはり山の稜線や建物の屋根のエッジなどに不自然さが残ります。また、手前の草木の繊細さも Ultra-Res モードのほうが高く見えるのではないでしょうか。実は、エッジ強調は画像縮小時の繊細さを低下させてしまうことがわかっています。髪の毛のような細い線が密集した画像を縮小すると、それぞれの線は画素よりも小さくなり、画素値への影響も小さくなるため、明暗のコントラストも低下していきます。この「コントラストの低下」が「細かさ」の質感知覚に影響することが科学的に確かめられており、たとえ画素レベルで解像していなくても、その背後にある「細かそう」という人間の予測を機能させることができるわけです。エッジ強調された画像はこのコントラスト低下の法則を壊してしまうため、画像を縮小しても自然な繊細さが損なわれてしまいます。

ほかにも、 Ultra-Res モードは色調やコントラストが自然で(写真モードでも「ナチュラル」設定にしていますが、それでも鮮やかさが強調されます)、いわば「一眼デジカメで撮ったよう」な落ち着いた印象があります。撮影した元画像はこちらにありますので、確認してみてください(各撮影モードはファイル名で分かるようになっています)。ノイズは少し増えますが明るい環境では問題になるほどではないし、縮小すれば弱くなります。さらに後処理で、例えば Topaz Photo AI のような高度なソフトウェアを用いると、スマホ内処理よりもずっと自然にノイズ除去ができます。Ultra-Res モードは画像サイズが9248x6936画素ととても大きく、ファイルサイズも24MB前後と大きくなってしまいます。こんな大きな画像が必要になることはまずないので、スマホ内に「Ultra-Resモードで撮影し、その結果を1/2に縮小する」モードがあればよかったとは思いますが、縮小しない画像が保存されるということは、デジタルズームの代わりに、あとから切り出し(クロップ)が使えるというメリットにもなります。

zoom.jpg

センサから全画素読み出しして画像を生成し、それを縮小したら画質が高い、とするなら、デジタルズームなしの1x撮影でもそうやって動いてくれればいいとは思うのですが、そうはなっていません。暗所でのノイズ耐性を考えるとやむを得ないところでもあります。それでは、何倍から全画素読み出しに切り替わるのでしょうか。1.1倍ぐらいから切り替わるのであれば、ちょっと面倒だけれども、少しだけズームアップして撮影するという手が使えます。そこで確かめたところ、残念ながら2倍を超えてから初めて全画素読み出しに切り替わるようでした。上の写真では、1.97倍と2.05倍の間で解像感が急に向上していることがわかります。この挙動から、2倍未満のデジタルズームで撮影するよりも、Ultra-Resモードを用いたほうが良い(切り出して縮小するほうがよい)ことがわかります。

今回のテストは日中の明るい環境でのものということに注意は必要です。通常モードは明るさに合わせて自動でモードが切り替わり、暗いときには多数の画像を撮影して合成する「ナイトモード」も有効です。明るいときと暗いときで使い分けるのがいいように思われます。ただし、Google Photo では画像の切り出しや補正ができますが、縮小機能がないのが困りものです。6400万画素のファイルを共有すると相手にも迷惑でしょう。そこで、自前で縮小・圧縮を行うアプリも作ってしまいました。アプリストアの画像縮小アプリは広告がでるものばかりですので。

結論を最後にまとめます。こと razr 40 に関しては、いかにもスマホ撮影画像らしい強いエッジ強調を避けるために Ultra-Res モードがとても有効です。また、デジタルズームのかわりに Ultra-Res モードで撮影し、切り出す方法も有効です。プロモードは解像感の面ではデメリットが大きく、64MPixel RAW は保存方法がないようです。他のスマホではまた状況が異なりますが、同様にテストをすれば、各モードの利害得失を把握することができると思います。

次は、冒頭に述べた「スマート高解像度」と「ショット最適化」の設定の影響について調べてみます。
posted by しんさく at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ

2025年08月24日

スマホの高画素カメラは是か非か(1)

IIJ の会員限定オンラインストアでモトローラの折りたたみスマホ、razr 40が24,800円と、とても安くなったのでスマホを買い替えました。スペックアップしたのに、これまで数年使っていたスマホを売却した値段でお釣りが来ました。

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普段スマホは前ポケットに入れているのですが、車の運転や仕事中など椅子に座ったときに、ポケットの浅いスマホだと股関節に食い込むように当たったり、ポケットから滑り落ちそうになることがあったのですが、そういうのがなくなり快適です。スマホを使うときにいちいち開かないとならないのは不便ですが、小さいアウトディスプレイで通知や時計は見られるので、使用頻度も大したことがないこともあってあまり不都合ありません。ただ、カメラ性能が気になったので今回、少し詳しくテストしてみました。

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というのは、このカメラは折りたたみということもあって薄型化が優先されており、カメラ周囲の外部ディスプレイ部分の突出は1mm程度と小さいものになっています。開いたときの厚みも7.4mmと薄型のため、あまり大きなカメラユニットが入りません。そのため、メインカメラのセンサは1/2インチサイズです。以前のスマホ(Nothing phone (1))は1/1.5インチでしたので小さくなっています。しかも画素数が6400万画素ととても多い。普段はビニング(画素混合読み出し)で1600万画素相当で動作するので問題ないとは思うのですが、一般にはセンサが小さくなるとどうしてもカメラ性能は下がる傾向にあります。しかし結論から言うと、以前のスマホよりも画質が良く、なにより、6400万画素という画素数が有効に働いていることがわかりました。標準の(付属の)カメラアプリにもちょっとクセがあり、この機種ならでは、という情報も多く含まれていますが、ほかのスマホのカメラに対しても、使いこなしの参考になるかもしれません。

ss.jpg

本題に入る前に、このスマホ標準のカメラアプリの撮影モードについて少し説明します。上の写真で、一番左のスクリーンショットが標準の「写真」モードで、カメラを起動するとこのモードになります。このモードで普通に撮影できますが、さらに凝った撮影をするには「プロ」モードも使え、フォーカス、ホワイトバランスや露出など細かい設定が可能で、ヒストグラムも表示されます。さらにもう1つ、"Ultra-Res" モード、つまり超高解像度モードがあります。これを「詳細」から選ぶと一番右の画面になりますが、このモードではデジタルズームが使えず、色味の調整などもできません。

普通のユーザは「写真」モードで事足りるでしょうし、僕のようなカメラ好きは「プロ」モードで露出を調整したりするぐらいでしょう。それに対し "Ultra-Res" モードは、いかにも「一応、6400万画素でも撮れます」というスペックのための機能に見え、実際に使うメリットも大したことがないだろう・・実際、過去のカメラでも解像度が高いモードで良かった例がないし・・と思っていました。しかし(少なくともこの機種に関しては、明るい日中の環境では)、一番いいのはこの "Ultra-Res" モードでした。解像感もさることながら、写真の自然さが高く、仮に解像度が低い写真しか必要なくても、もっとも自然な写りになるのは、この "Ultra-Res" モードで撮った結果を縮小したものでした。

長くなるので、比較結果とその評価は、次に続きます。撮影した元画像はこちらにあります(撮影モードはファイル名で確認ください)。
posted by しんさく at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ

2025年06月29日

オートテスト in 岡山国際サーキット

岡山国際サーキットで開催されたオートテストに参加してきました。

前回、ここに来たときは極寒で、雨もふったりやんだりでしたが、今回は一転、ピーカンの灼熱地獄。かたときでも日向に出ようものなら、ジリジリと音がしそうなほどの肌を刺す日差しです。屋根を閉めて走ろうかとも思ったのですが、雨でもないし、とオープンで走ったら、かなり日焼けしました。

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走行は、練習走行1本、本番2本の計3本。練習走行では 57.1 秒とまずまずのタイム、でもどこかでパイロンの縁を踏んだようでペナルティ5秒でした。どこで踏んだかわからなかったのですが、思えばこれをちゃんと確認していなかったのが良くなかった。本番1本目でもパイロンを踏み、これがたぶん同じ場所だったと思います。黄旗を見て集中が切れてしまい、直後の車庫入れのバックでエンスト・・ろくなタイムになりませんでした。



そこで2本目はパイロンから十分な余裕を取ることに。その結果、練習走行からは1秒以上遅くなり、クラス8位、出走71台中では16位でした。クラスが今回は EXP-S [エキスパート・軽快車] という区分で、一番、熾烈なクラス。確かにスポーツカーが集まってはいるのですが、こぶりなものが多く、もっとパワーがある大きめの車は、他の区分に入れられているので、ちょっとつらかった感じはします。コースとしてはそういう大きめの車にも優しいコースではあったのですが・・

最近、オートテストのレベルがとても上がっており、以前のように勝つのは難しくなってきた感じがします。オートテストで有利な車もある程度見えてきた感じがあり、速度域が遅いためパワーやコーナーリングだけでなく大きさがものをいうようで、特にロードスターとGRヤリスが猛威を振るっています(EXP-S は11台中7台が、このどちらかとなっています)。自分の順位(16位)よりも上の15台の中でも、自分の車より全長が長い車は2台だけでしたし、そもそも、そういう車のエントリーが全体に少なくなっています。かといってどうにもできないので、この車で、出来る範囲でやるしかないですね。相変わらずシフトミスが多いですし。。
posted by しんさく at 22:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 自動車競技