2018年10月21日

カメラ最強スマホ決定戦(1)補足

HUAWEI P20 pro のカメラの画質(解像度)を CM1 と比べたこちらの記事を読んだ人から,以下のような指摘を受けました.いわく,P20 pro のJPEGは強力なエッジ強調処理がかかっているので,それでよく見えるのではないかと.そこで今回,RAWから現像した画像で比べてみました.

detail.jpg

上の写真は一度の撮影で保存されたJPEGとRAWの現像結果を並べたものです.RAW(DNG) のほうはPhotoshopで現像しましたが,このときにシャープネスを 0(デフォルトでは25)にして現像しました.つまり,かなりセンサから出たままの画像に近い状態です.ただ画像を見るとカメラ内である程度の処理が行われているようです.P20 pro の40MPセンサは画素配置が特殊なので(同色の画素が4つずつ並んでいる Quad Bayer 配列というもの),おそらくそのままではDNGの規格には合わないということもあると思います.ともあれ,上の画像からわかるように,遠目にはJPEGのほうがくっきりシャープですが,拡大して見てみると強すぎるエッジ強調でエッジが不自然になっていますし,そうでないところは似た色の領域が同色になる,いわゆる「塗り絵」になっています.それに対してRAWからの現像ではディテールがよく残っていますので,こちらでテストをしてみます.

comp.jpg

前のテストと同様に,P20 pro の画像から CM1 と同じ範囲を切り出し,それを CM1 と同じ大きさに縮小した画像を作って比べました(トリミングされているわけですから,P20 pro にとって不利な比較方法となっています).CM1 では F2.8 から F11 まで絞りを変えながら撮影しましたが,F5.6より絞ると回折の影響で画質が低下する上,周辺部の改善もありませんので,F2.8 と F5.6 の画像を並べました.どんなレンズも画質のいい部分,悪い部分があり(真ん中はどんなレンズでもまず良い画質になりますが),差がほとんどない部分もありますので,真ん中と,違いが目立ちやすい部分を選んで切り出しました.中心部はどれもほとんど違いはありませんが,周辺部ではCM1のレンズの収差の影響が見られます.絞り込むと改善しますが,一部で十分に改善しない領域が残ります.やはり P20 pro の解像度は CM1 を上回ると言って良いと思います.ただし大口径レンズらしく周辺減光は大きめです.

P20 pro は F1.8 の大口径レンズですがセンサの最低感度はISO50です.それに対し CM1 は ISO125が最低感度ですので,レンズの明るさが相殺され,P20 proとCM1 F2.8開放のシャッター速度はほぼ同じになります(今回の撮影ではそれぞれ1/1100秒と1/800秒でしたが,P20 pro のほうが少し暗めに写りましたので,露出度を合わせれば実際にほぼ同等です).ちなみにこの状態でセンサ上に記録される光子の総数もほぼ同じ(画角とレンズ口径がほぼ同じなので当然)ですので,ショットノイズ(光子数のゆらぎによるノイズ,暗所で顕著)のレベルも理論上は(センサの開口効率,量子効率等を無視した場合には)同等になります.今回は明るいシーンで撮影していますが,暗いシーンでは P20 pro と比べるべきは収差が目立つCM1 のF2.8 での撮影結果ということになります.しかも手ぶれ補正の有無という違いもあります.CM1 のように物理的な絞りのあるレンズでは,条件のいいときには絞り込むことでレンズの収差を低減することができますが,それでもなお P20 pro のほうが解像度に優れるといって良いと思います.

ただ1つ指摘しておきたいのは,どちらも極めて優れたカメラであるということです.もっと高価なフルサイズ用の28mm単焦点レンズでも開放ではもっと画質の悪いものが多くあります(センサが大きいぶんだけ,絞り込む余地が大きいのですが).重箱の隅をつつくような比較ですが,P20 pro は CM1 と同じく現代の「デジタルカメラ」として見てまず不足のない性能を有するスマートフォンであると自信を持って言うことができます.

例によって最後に,比較に用いた画像を示します.

P20 pro : RAW現像からの元画像(40MP), 切り出し+縮小(20MP), JPEG撮って出し画像(40MP)
CM1 : F2.8, F5.6, F11(いずれもRAW現像からの元画像)
タグ:P20 pro
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2018年10月20日

カメラ最強スマホ決定戦(4)

最後に,無謀にもデジタル一眼レフカメラと画質を比較してみることにしました.しかも相手は,少し前のカメラですが高画素数で話題になったD800Eです.さてどうなるでしょうか.

all.jpg

D800Eに画角がほぼ同じになる28mm単焦点レンズを取り付けて撮影しました.ただし手持ちの28mm単焦点は古いもの(NewNikkor 28mm F3.5)しかありません.もっとも他のズームレンズの画質がこれを超えるわけではありません.そこで念のため,開放絞りの他にF11まで絞り込んで撮影しました.画像はRAWファイルで保存します.P20 pro にも RAWファイルを保存する機能があるので,それを使いました.そして両方のファイルを Photoshop で,同じシャープネスのパラメータで現像しました.周辺光量低下も補正されていませんので,D800E のF3.5開放と,P20 pro のどちらも周辺が暗くなっているのがわかります(絞り込むとかなり改善しています).今回は画素数があまり変わらないのと,画素数の多い P20 pro のほうが縦に画角が広いため,今回はリサイズをせずにそのまま等倍で比較します.

comp-78854.jpg

上の写真も順番は同じく,左からD800E + 28mmF3.5 の開放とF11, P20 pro の順です.なんと,意外と差がありません.中央部ではどれもシャープでディテールの再現もあまり違いがありませんが,さすがに絞り込んだ場合は明るい部分のハロが小さくコントラストが高くなっています.周辺部では 28mm F3.5 開放では甘くなっていますが,それに比べると P20 pro のレンズは(F1.8と大口径の割には)画質の均質性が高いようです.絞り込んだ写真はさすがに全体にシャープですが倍率色収差が残ります.それに対し P20 pro では倍率色収差は見られません.優秀なレンズです.

dev.jpg

P20 pro 内蔵の現像エンジンは,かなり画像処理の強度が高いものです.明るい状況でもデノイズ処理が働き,ディテールが潰れがちですし,エッジ強調が強すぎて明暗の境界が不自然になります.また色も派手すぎます.幸い,上記のように P20 pro ではRAWファイルが保存できます.しかもそのフォーマットは Adobe が提唱した共通規格の DNG ですので,最新の現像ソフトウェアを使わなくても現像が可能です.ここぞというときには RAW を ON にして撮影すると良いようです.ただしファイルサイズが1枚で約 80MB と巨大なのが玉に瑕・・ではありますが.

最後にやはり,元ファイルを掲載しておきます.
D800E, NewNikkor 28mm F3.5 F3.5, F11
P20 pro RAWから現像, 撮って出しJPEG
タグ:P20 pro
posted by しんさく at 19:12| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ

カメラ最強スマホ決定戦(3)

第3戦は画質勝負ではなく,絵作りの自由度で勝負です.Panasonic DMC-CM1 には物理的な絞りが備わっていますが,HUAWEI P20 pro にはそれがありません.そのかわり複数のカメラモジュールを用いてシーンの形状を推定し,画像処理により被写界深度を浅くする機能が備わっています.

rawcomp1.jpg

まずはレンズそのものでどの程度背景をぼかすことが出来るかを比べてみます.シーンに対してカメラをほぼ同じ位置に置いて撮影してみました.CM1 (右)は開放絞りのF2.8で,P20 pro (左)はぼかし処理を行わないプロモードです.先のテストと同様にP20 pro のほうが画角が広いので,同じ領域を切り出して画素数を合わせて比較します.

rawcomp2.jpg

左が P20 pro, 右がCM1です.色みや露出の違いは無視してください.CM1 のほうがややボケが大きいようです.CM1は1インチセンサにF2.8のレンズ,それに対して P20 pro は 1/1.7 インチセンサに F1.8 のレンズですので,1.7 ✕ 1.8 = 3.06 となり,CM1 よりも少し口径が小さいことになります.さらに画角が少し広いので余計に被写界深度が浅くなりますが,いずれにしてもあまり大きな違いはありません.また実際には P20 pro のほうが画角が広いので,このようなマクロ写真では被写体を同じ大きさで捉えるべく,すこし近寄って撮影することが多いでしょう.そうすれば被写界深度の違いはほとんど無くなると思われます.

もう1つ印象的だったのは,点光源のボケ方が似ていること.左奥のカメラ(Nikon S2)のキラキラした部分は輪郭と中央に明るい部分が出来るようなボケ型になっていて,とても良く似ています.どちらも多少なりともライカの技術や知見が導入されているからでしょうか.

dof1.jpg

次に被写界深度の調整です.P20 pro には「アパーチャ」という撮影モードがあり,画面上の操作でF値を 0.95 から 16 まで変えられます(0.95 という中途半端な数値はライカのノクチルックスにあやかったものでしょう).上の写真は両端の F16 と F0.95 の例で,狙い通りに背景が大きくぼかされています.画像処理が大変上手で,全景物体の輪郭付近にもほとんど違和感はありません.もっとカメラモジュール数が多く,理論上は制度が高いはずの Light L16 よりもいいかもしれません.ネット上のレビューでも iPhone X 等より高精度に背景がぼかされている(前景物体の輪郭に不自然さがない)結果が多く見られます.


さらになんと,撮影時にリアルタイムにぼけ具合が確認できます.ただソフトウェア処理をするだけでなく,GPU等のハードウェアを活用するなど,そうとう力を入れて開発をしているのだろうと思います.

dof2.jpg

使っているうちにもう1つ,「アパーチャ」モードの用途を発見しました.F16 (左)では画像処理なしのようですが,そこから1ステップ絞りを開いた F13 (右)に設定すると,背景に弱いぼかし処理がかかります.これによって背景のボケがきれいに(なめらかに)なり,背景のノイズも低減されます.上で述べた変わったボケ味が気に入らない場合には使いでがあると思います.

dof3.jpg

一方のCM1では,物理的な絞り値をコントロールすることが出来ます.左は開放の F2.8, 右は絞りきった F11 での撮影例です.狙い通りに被写界深度が深くなっています.そのかわり回折により少し合焦部のシャープネスが下がるのと,光量が減ってノイズが増加し,画像処理(ノイズ除去)の強度が上がってしまいます.明るい環境ではもう少しきれいな結果が得られるでしょうが,そもそも小さなレンズですのでマクロ域でなければ背景のボケが問題になることは少ないのではないかとは思います.

最後に,元画像をダウンロードできるようにしておきます.

P20 pro
プロモード元画像(10MP), 切り出し・縮小(6MP)
アパーチャモードF0.95元画像(10MP)

CM1
F2.8元画像(20MP), 縮小(6MP), F11元画像(20MP)
タグ:P20 pro
posted by しんさく at 02:28| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ