今回は、スマホ(Motorola razr 40)のカメラ、しかも1/2インチセンサという中級クラスのカメラと、フルサイズセンサとの比較をやってみます。比較対象はニコンのカメラの中ではもっとも解像度が高い、4500万画素のNikon Z7 で、レンズは AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR です。
razr 40のカメラは25mm相当ですので、ニコンのほうでは広角端の24mmで撮影しました。いくつかのF値で撮影したところ F8 が良かったので、その画像を用いています。画素数が違うため(なんとスマホのほうが多い)、被写体がほぼ同じ大きさに見えるように大きさを調整しています。見ての通り、やはりニコンのほうが高精細で、かつノイズも少なく高画質です。しかし、razr 40 も思いのほか、検討しているとは思わないでしょうか。正直、この程度の差なら、わざわざ大きなカメラを持ち出すこともないなと思わされるものでした。
写真の解像度は画素数やレンズ性能のほか、光の波の性質によっても制約を受けます。ざっくりいうと、収差がないレンズの解像度は、レンズを前から見たときの大きさ(口径)で決まります。razr 40のカメラは4.7mmF1.7ですので、口径は約2.8mm。フルサイズセンサの24mm F8も3mmですので、あまり差がないわけです。もちろんミラーレスカメラの方はもっと絞りを開くこともでき、もしレンズ収差が小さければもっと解像度が高くなりますが、画素数の制約があるため、F4とF8では、画像の中央部ではほとんど差がないということになってしまいます。スマホのカメラはこの画角にしてF1.7の大口径であり、設計製造が非常に難しいはずですが、近年の技術革新により画像の隅までシャープなレンズが搭載されるようになっています。
さらに最近のカメラの画質に大きな影響を及ぼしているのが、画像処理技術の向上です。特に学習型のノイズ除去・超解像の性能がAI技術の発展により飛躍的に向上しています。この写真は、razr 40の画像を Topaz DeNoise AI というソフトで処理したものです(すでに少し古いソフトになってしまっていますが)。このソフトはノイズ除去とともにディテール復元機能も持っており、その効果が少し強めのためにエッジが強調されすぎのきらいがありますが、カメラ内処理に比べるとずっと自然に画質改善され、もちろんノイズは圧倒的に減少しておりまったく気になりません。
スマートフォンのセンサは大型化が進み、Apple iPhoneやGoogle Pixelの上位機種では1/1.3インチの大型センサが採用され、他社には1インチセンサを搭載した機種もあり、とても高画質な写真が撮影可能です。しかし大型センサを用いるとレンズもそのぶん大きくなるため、レンズ部分の突出が大きくなってしまいます。また、近距離にピントを合わせることが難しくなります。センササイズ(または焦点距離)の2乗に比例してレンズの駆動スペースが必要になるためです。
そのような背景からか、AI 技術に自信のある Google は Pixel の中級機 (Pixel 10)では前機種よりもセンササイズを小さくし、1/2インチにしてしまいました。上位機種では変わらず1/1.3インチの大きなセンサを用いていますが、トレンドとしては、ほどほどのセンササイズへ落ち着く方向になるのではないかと思われます。なにより、1/2インチでこれだけ写るのですから。
スマートフォンと違い、ミラーレスカメラなど本格的なカメラではズームレンズや超望遠レンズが使えることも忘れてはなりません。上の写真は、Z7 のレンズを50mmまでズームして撮影したものを、ほぼ同じ大きさになるように揃えたものです。たった2倍ですが、やはり、圧倒的に高精細です。このレンズはさらに120mmまで伸ばせ、そうなるともはや、比べるべくもありません。
上の写真は最終的に「おすすめの条件」となった、Ultra-Resモードでの撮影結果を1/2に縮小したもの(4624x3468画素、16MPixel)です。ぜひフルスクリーン表示で、できれば4K以上の解像度のモニタで見てみてください。解像感、自然さやリアリティも十二分、のように思われます。もちろん、センサの大きなデジタルカメラには暗所性能やダイナミックレンジ、大口径レンズによるぼけなど、良い部分はたくさんあります。しかし、こと広角域の撮影に限っては、違いは非常に小さくなってきている、というのが現在の状況です。コンパクトデジカメ市場が急速に縮小したのも頷ける話です。
2025年08月25日
スマホの高画素カメラは是か非か(3)
今回は、標準の「写真モード」中で設定できる細かな設定が画質に及ぼす影響について調べてみます。細かな話のようですが、実は結構、画質への影響大でした。
写真モードでは上の写真のように、細かな設定ができる場所が2箇所あります。その中で画質に大きな影響があるのは「スマート高解像度」と「ショット最適化」です。スマート高解像度をONにすると、明るい日中など条件を満たしたときに、倍の大きさ(画素数は4倍)の6400万画素の画像で写真が保存されるようになります(条件を満たしたときは写真上のように「スマート高解像度ON」という表示が出ます)。また設定の中の「ショット最適化」は説明にあるように、写真を自動で調整する機能です。ほかに「自動HDR」なども画像に影響がありますが、今回のような順光の日中では動作しないため、今回は割愛します。
「写真モード」で「スマート高解像度」と「ショット最適化」をon/offしたときの画質の変化をまとめました。「スマート高解像度」が働くと(明るいときしか発動しません)保存される画像の画素数が大きくなるので、公平な比較のため、「スマート高解像度off」の時の画像を2倍に拡大してあります。スマート高解像度がonになると撮像素子からの読み出しモードが16MPixelのビニングモードから64MPixelの全画素読み出しモードに切り替わり、解像感がぐっと向上することがわかります。あとから示しますが、この解像感は "Ultra-Res" モードとほぼ同等です。
問題は「ショット最適化」です。これが働くと、このような風景の場合、空の彩度がかなり上がります。見た目にかなり華やかな印象になりますが、実際のシーンと比べるとかなり強調されていることも確かで、好みの範疇かもしれませんが、ナチュラルな発色という意味ではoffのほうが良いでしょう。またなにより、前回のテストでも問題になった「エッジ強調」の強度がこれによって変わります。特に「スマート高解像度」がoffのときが顕著で、山の稜線に黒いエッジができているし、遠くの鉄塔の左右にも白い縁取りが現れています。ほかにもあちこちに不自然な部分があり、いかにもスマホ臭い、安っぽい画質の元凶はこのモードによるものと思われます。ただしおそらくシーン認識により動作が切り替えられており、人物を撮ったときの肌の補正などにも影響する可能性があると思います(未検証)。ただ幸いなことに、「スマート高解像度」が発動しているときはエッジ強調の強度が弱められていて、解像度が低いときほどの悪影響はありません。ですが、スマート高解像度は動作したりしなかったりするので、「ショット最適化」はoffにしていたほうが無難な感じがします。なお色味やエッジ強調の感じは「プロモード」の写真に近いため、おそらく「プロモード」では「ショット最適化」の設定は無視され、常にoff担っているように思われます。
次に「スマート高解像度on」のときの写真モードと、Ultra-Resモードの画質とを比べてみます
等倍表示など大きくしないと見えないかもしれませんが、これらのモードでの最大の違いはノイズです。明るい環境でも Ultra-Res モードの画像は少しノイジーで、空などのフラットな部分でそれがわかります。それに対し写真モードではノイズ除去が動作しているようで、空などフラットで明るい部分ではノイズが見られません。細かく見ると、遠くの鉄塔が張る電線が消えかかっているなど細かく見ると違いはありますが、全体としてはあまり差はなく、ノイズの有無が最大の違いと言えるでしょう。またショット最適化をonにしたものはエッジ強調が働き、その副作用としてまたノイズが少し増えているように思われます。空の部分などでは違いはわかりまsんが、暗部でそれが少し目につきます。
なお Ultra-Res モードではショット最適化をon/offしても画質に変化はなく、このモードでは設定が無視されているようです。
さて結論です。画質としては、写真モードで「スマート高解像度on, ショット最適化off」が自然で、かつノイズも少なく、ファイルサイズも小さいため、メリットが大きそうです。ただ問題は、それが必ずしも発動するとは限らない点です。自動で切り替えてくれる、と前向きに捉えることもできますが、勝手に画像サイズが増減するのもやっかいです。そもそもスマホの写真は画質を求める場面ばかりではなく、メモ代わりの撮影ということも多いので、写真モードは「スマート高解像度」と「ショット最適化」を共にoffにして使うのがよいように思われます。
幸いなことに、この razr 40 の標準カメラアプリは、前回使用時の設定を次回起動時に保持する機能があります。つまり、いったん Ultra-Res モードで撮影すると、次にまたカメラを起動したときにまた Ultra-Res モードで撮影できます。このことから、Ultra-Res モードと写真モードを使い分けるのも1つの方法かと思います。「スマート高解像度」をワンタップで on/off できればいいのですが、残念ながらそうはなっておらず、〉のボタンと合わせて2回の操作が必要なのも少し残念な点かもしれません。
次回は最後に、スマホ撮影画像を高解像度のフルサイズミラーレスカメラ、Nikon Z7 と比べてみたいと思います。
写真モードでは上の写真のように、細かな設定ができる場所が2箇所あります。その中で画質に大きな影響があるのは「スマート高解像度」と「ショット最適化」です。スマート高解像度をONにすると、明るい日中など条件を満たしたときに、倍の大きさ(画素数は4倍)の6400万画素の画像で写真が保存されるようになります(条件を満たしたときは写真上のように「スマート高解像度ON」という表示が出ます)。また設定の中の「ショット最適化」は説明にあるように、写真を自動で調整する機能です。ほかに「自動HDR」なども画像に影響がありますが、今回のような順光の日中では動作しないため、今回は割愛します。
「写真モード」で「スマート高解像度」と「ショット最適化」をon/offしたときの画質の変化をまとめました。「スマート高解像度」が働くと(明るいときしか発動しません)保存される画像の画素数が大きくなるので、公平な比較のため、「スマート高解像度off」の時の画像を2倍に拡大してあります。スマート高解像度がonになると撮像素子からの読み出しモードが16MPixelのビニングモードから64MPixelの全画素読み出しモードに切り替わり、解像感がぐっと向上することがわかります。あとから示しますが、この解像感は "Ultra-Res" モードとほぼ同等です。
問題は「ショット最適化」です。これが働くと、このような風景の場合、空の彩度がかなり上がります。見た目にかなり華やかな印象になりますが、実際のシーンと比べるとかなり強調されていることも確かで、好みの範疇かもしれませんが、ナチュラルな発色という意味ではoffのほうが良いでしょう。またなにより、前回のテストでも問題になった「エッジ強調」の強度がこれによって変わります。特に「スマート高解像度」がoffのときが顕著で、山の稜線に黒いエッジができているし、遠くの鉄塔の左右にも白い縁取りが現れています。ほかにもあちこちに不自然な部分があり、いかにもスマホ臭い、安っぽい画質の元凶はこのモードによるものと思われます。ただしおそらくシーン認識により動作が切り替えられており、人物を撮ったときの肌の補正などにも影響する可能性があると思います(未検証)。ただ幸いなことに、「スマート高解像度」が発動しているときはエッジ強調の強度が弱められていて、解像度が低いときほどの悪影響はありません。ですが、スマート高解像度は動作したりしなかったりするので、「ショット最適化」はoffにしていたほうが無難な感じがします。なお色味やエッジ強調の感じは「プロモード」の写真に近いため、おそらく「プロモード」では「ショット最適化」の設定は無視され、常にoff担っているように思われます。
次に「スマート高解像度on」のときの写真モードと、Ultra-Resモードの画質とを比べてみます
等倍表示など大きくしないと見えないかもしれませんが、これらのモードでの最大の違いはノイズです。明るい環境でも Ultra-Res モードの画像は少しノイジーで、空などのフラットな部分でそれがわかります。それに対し写真モードではノイズ除去が動作しているようで、空などフラットで明るい部分ではノイズが見られません。細かく見ると、遠くの鉄塔が張る電線が消えかかっているなど細かく見ると違いはありますが、全体としてはあまり差はなく、ノイズの有無が最大の違いと言えるでしょう。またショット最適化をonにしたものはエッジ強調が働き、その副作用としてまたノイズが少し増えているように思われます。空の部分などでは違いはわかりまsんが、暗部でそれが少し目につきます。
なお Ultra-Res モードではショット最適化をon/offしても画質に変化はなく、このモードでは設定が無視されているようです。
さて結論です。画質としては、写真モードで「スマート高解像度on, ショット最適化off」が自然で、かつノイズも少なく、ファイルサイズも小さいため、メリットが大きそうです。ただ問題は、それが必ずしも発動するとは限らない点です。自動で切り替えてくれる、と前向きに捉えることもできますが、勝手に画像サイズが増減するのもやっかいです。そもそもスマホの写真は画質を求める場面ばかりではなく、メモ代わりの撮影ということも多いので、写真モードは「スマート高解像度」と「ショット最適化」を共にoffにして使うのがよいように思われます。
幸いなことに、この razr 40 の標準カメラアプリは、前回使用時の設定を次回起動時に保持する機能があります。つまり、いったん Ultra-Res モードで撮影すると、次にまたカメラを起動したときにまた Ultra-Res モードで撮影できます。このことから、Ultra-Res モードと写真モードを使い分けるのも1つの方法かと思います。「スマート高解像度」をワンタップで on/off できればいいのですが、残念ながらそうはなっておらず、〉のボタンと合わせて2回の操作が必要なのも少し残念な点かもしれません。
次回は最後に、スマホ撮影画像を高解像度のフルサイズミラーレスカメラ、Nikon Z7 と比べてみたいと思います。
スマホの高画素カメラは是か非か(2)
Motorola razr 40のカメラの各撮影モードの画質を評価していきます。このスマホの標準カメラアプリの主要な撮影モードの動作をまとめると以下のようになります(各撮影モードについては前記事を参照ください)。各モードのほかにも、画質に影響する設定(スマート高解像度、ショット最適化など)がありますが、ここではひとまず標準的な設定(スマート高解像度OFF, ショット最適化ON)で話を進めます。
これを理解するうえで重要なのが「全画素読み出し」か「ビニング読み出し」か、です。このスマホを含め、最近の多くのスマホ用イメージセンサはQuad-Bayer 配列という画素配置となっており、通常は2x2の4画素の情報をセンサ上でひとまとめにしてから読み出します(ビニング読み出し)。ですので、64MPixelのこのセンサもこのモードでは16MPixel相当になるわけです。読み出し速度のほか、低照度時のノイズ特性などの点でメリットがあるとされます。
それでは、上記の各モードについて見ていきましょう。なお、それぞれのオリジナル写真はこちらで確認できます。
まずプロモードですが、こと解像感に関して言えば問題ありです。写真モード(通常モード)ではデジタルズームを使ったときに全画素読み出しモードに切り替わるのに対し、プロモードはビニング読み出し固定になっており、デジタルズーム時の解像感が明確に低くなってしまいます。上の写真は写真モードとプロモードで、2xデジタルズーム時の中央付近を切り出したものです。最近のスマホはこのように全画素読み出しとビニング読み出しを切り替えることで、デジタルズーム時の画質低下を抑制するようになっていますが、これが働かないのは致命的です。
プロモードではRAW画像の保存が可能ですが、このRAWも常にビニングモードのもので、全画素読み出しのRAW画像は保存できるようにはなっていないようです。ただしデジタルズームを使っているときもRAWには画像全体が保存されているので、広角と望遠の両方の画像が同時に得られるのは面白いですが、後述する Ultra-Res モードで撮影してから中央付近を切り出したほうが画質が良く、広角と望遠の両方の画像が得られるため、メリットはありません。1点、プロモードを弁護するとすれば、エッジ強調処理が通常の「写真」モードよりも弱く、特に倍率1倍の撮影時にはより自然な画像が得られます。ただ、これもやはり Ultra-Res モードで撮影した画像を1/2に縮小したほうが高画質です。
次に Ultra-Res モードです。このモードではデジタルズームはありませんが、画素数が4倍(一辺の画素数は2倍)ですので、通常モードの2xデジタルズームの画像と同じ画素数の領域を切り出すと、同じ倍率(画角)になります。結果は上の写真のとおりで、解像感には差がありません。同じセンサで同じように撮影しているわけですから、これはある意味で当然のことで、Ultra-Res モードで撮影した画像の中央付近を切り出したものが2xデジタルズームと言っても良いわけです。ただし注目すべきは、その画像処理の違いです。通常の写真モードではノイズ除去処理とエッジ強調処理がかなり強くかけられており、画質はいかにも「スマホの写真」らしい、ちょっとギスギスしたものになっています。それに対し Ultra-Res モードはノイズが見られますが、エッジ強調が弱いため、明部と暗部の境界線に黒い線などが出にくくなっています。
この写真は同じ倍率で違う場所を拡大したものです。大きく拡大して観察すると、橋のトラスが写真モードではギザギザしてしまっていますが、Ultra-Resモードでは滑らかで自然です。山の稜線も、通常モードでは稜線の縁に薄く黒線を引いたようになっているのが、Ultra-Res モードでは自然です。ほかにも手前の木々の描写も、Ultra-Resモードのほうが繊細さを感じさせるものになっています。
では、デジタルズームをしていないときではどうでしょうか。この写真は、Ultra-Resモードで撮影した写真を1/2の大きさにリサイズし(結果、画素数が全く同じになる)、同じ比率で拡大したものです。通常モードでは、デジタルズームをしない場合はビニング読み出しになってしまいます。そのため上の比較のように、精細度が明確に異なるものとなってしまいます。特にこの写真モードで2倍未満の倍率のときはエッジ強調が強くかかってしまい、山の稜線や建物の境界に不自然な陰影が現れてしまっています。手前の竹藪の質感なども、比べるべくもありません。縮小するとノイズが減少する効果が得られるため、Ultra-Resモードのノイズもさほど気にならないものとなっています。
しかし、こういう違いは画像を大きく拡大して、目を皿のようにして比べないとわからないのではないか・・そう思われるかもしれません。しかし、エッジ強調の弊害は画像を小さくしても残ります。上の写真は、双方の画像を通常モードの1/4、つまり1156x867画素の1Mpixelサイズに縮小したものの一部です。これぐらい小さくすると、確かに違いはわかりにくくなりますが、やはり山の稜線や建物の屋根のエッジなどに不自然さが残ります。また、手前の草木の繊細さも Ultra-Res モードのほうが高く見えるのではないでしょうか。実は、エッジ強調は画像縮小時の繊細さを低下させてしまうことがわかっています。髪の毛のような細い線が密集した画像を縮小すると、それぞれの線は画素よりも小さくなり、画素値への影響も小さくなるため、明暗のコントラストも低下していきます。この「コントラストの低下」が「細かさ」の質感知覚に影響することが科学的に確かめられており、たとえ画素レベルで解像していなくても、その背後にある「細かそう」という人間の予測を機能させることができるわけです。エッジ強調された画像はこのコントラスト低下の法則を壊してしまうため、画像を縮小しても自然な繊細さが損なわれてしまいます。
ほかにも、 Ultra-Res モードは色調やコントラストが自然で(写真モードでも「ナチュラル」設定にしていますが、それでも鮮やかさが強調されます)、いわば「一眼デジカメで撮ったよう」な落ち着いた印象があります。撮影した元画像はこちらにありますので、確認してみてください(各撮影モードはファイル名で分かるようになっています)。ノイズは少し増えますが明るい環境では問題になるほどではないし、縮小すれば弱くなります。さらに後処理で、例えば Topaz Photo AI のような高度なソフトウェアを用いると、スマホ内処理よりもずっと自然にノイズ除去ができます。Ultra-Res モードは画像サイズが9248x6936画素ととても大きく、ファイルサイズも24MB前後と大きくなってしまいます。こんな大きな画像が必要になることはまずないので、スマホ内に「Ultra-Resモードで撮影し、その結果を1/2に縮小する」モードがあればよかったとは思いますが、縮小しない画像が保存されるということは、デジタルズームの代わりに、あとから切り出し(クロップ)が使えるというメリットにもなります。
センサから全画素読み出しして画像を生成し、それを縮小したら画質が高い、とするなら、デジタルズームなしの1x撮影でもそうやって動いてくれればいいとは思うのですが、そうはなっていません。暗所でのノイズ耐性を考えるとやむを得ないところでもあります。それでは、何倍から全画素読み出しに切り替わるのでしょうか。1.1倍ぐらいから切り替わるのであれば、ちょっと面倒だけれども、少しだけズームアップして撮影するという手が使えます。そこで確かめたところ、残念ながら2倍を超えてから初めて全画素読み出しに切り替わるようでした。上の写真では、1.97倍と2.05倍の間で解像感が急に向上していることがわかります。この挙動から、2倍未満のデジタルズームで撮影するよりも、Ultra-Resモードを用いたほうが良い(切り出して縮小するほうがよい)ことがわかります。
今回のテストは日中の明るい環境でのものということに注意は必要です。通常モードは明るさに合わせて自動でモードが切り替わり、暗いときには多数の画像を撮影して合成する「ナイトモード」も有効です。明るいときと暗いときで使い分けるのがいいように思われます。ただし、Google Photo では画像の切り出しや補正ができますが、縮小機能がないのが困りものです。6400万画素のファイルを共有すると相手にも迷惑でしょう。そこで、自前で縮小・圧縮を行うアプリも作ってしまいました。アプリストアの画像縮小アプリは広告がでるものばかりですので。
結論を最後にまとめます。こと razr 40 に関しては、いかにもスマホ撮影画像らしい強いエッジ強調を避けるために Ultra-Res モードがとても有効です。また、デジタルズームのかわりに Ultra-Res モードで撮影し、切り出す方法も有効です。プロモードは解像感の面ではデメリットが大きく、64MPixel RAW は保存方法がないようです。他のスマホではまた状況が異なりますが、同様にテストをすれば、各モードの利害得失を把握することができると思います。
次は、冒頭に述べた「スマート高解像度」と「ショット最適化」の設定の影響について調べてみます。
| 写真モード(通常モード) | |||||||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 倍率2倍以上のデジタルズームを行ったときのみ、全画素読み出し(64MPixel)になり解像度が上がる。1倍から2倍未満までの間は16Mixelのビニング読み出し。 | |||||||||||||||||||||||||||||||
| エッジ強調処理がもっとも強く、エッジ周囲に濃い縁取りが生じる。 | |||||||||||||||||||||||||||||||
| プロモード | |||||||||||||||||||||||||||||||
| デジタルズームを行っても全画素読み出しにならず、常に16MPixelのビニング読み出しになる | |||||||||||||||||||||||||||||||
| ・ | そのため、デジタルズーム時の画像が写真モードよりも甘い| ・ | この挙動はJPEGのみ保存か、RAW+JPEG保存かによらない | RAW画像にはデジタルズームが適用されず、常に1.0x(25mm)の広角の画像が保存される | ・ | 望遠(デジタルズーム)と広角の画像の同時保存ができる | ・ | このRAW画像はデジタルズーム中かどうかに関わらず常に16MPixelに固定され、全画素(64MPixel)読み出しのRAWは保存されない | Ultra-Resモード | 1.0x(25mm)の広角の画角のままで全画素読み出し(64MPixel)になる | ・ | 写真モードやプロモードの 1.0x より明確に高精細になる | ・ | 写真モードの2倍ズームとほぼ同等の解像感 | ノイズ除去やエッジ強調、色補正が弱まる | ・ | 解像感がありつつもエッジがギスギスしない、自然な画像が得られる | ・ | 「写真」モードの「ナチュラル」よりもさらに色味が自然になる | ・ | 画像がややノイジーになる | 機能が低い | ・ | デジタルズームや RAW データ保存ができない | ・ | 色味(ビビッド・ナチュラル)の変更ができない | | |||||
これを理解するうえで重要なのが「全画素読み出し」か「ビニング読み出し」か、です。このスマホを含め、最近の多くのスマホ用イメージセンサはQuad-Bayer 配列という画素配置となっており、通常は2x2の4画素の情報をセンサ上でひとまとめにしてから読み出します(ビニング読み出し)。ですので、64MPixelのこのセンサもこのモードでは16MPixel相当になるわけです。読み出し速度のほか、低照度時のノイズ特性などの点でメリットがあるとされます。
それでは、上記の各モードについて見ていきましょう。なお、それぞれのオリジナル写真はこちらで確認できます。
まずプロモードですが、こと解像感に関して言えば問題ありです。写真モード(通常モード)ではデジタルズームを使ったときに全画素読み出しモードに切り替わるのに対し、プロモードはビニング読み出し固定になっており、デジタルズーム時の解像感が明確に低くなってしまいます。上の写真は写真モードとプロモードで、2xデジタルズーム時の中央付近を切り出したものです。最近のスマホはこのように全画素読み出しとビニング読み出しを切り替えることで、デジタルズーム時の画質低下を抑制するようになっていますが、これが働かないのは致命的です。
プロモードではRAW画像の保存が可能ですが、このRAWも常にビニングモードのもので、全画素読み出しのRAW画像は保存できるようにはなっていないようです。ただしデジタルズームを使っているときもRAWには画像全体が保存されているので、広角と望遠の両方の画像が同時に得られるのは面白いですが、後述する Ultra-Res モードで撮影してから中央付近を切り出したほうが画質が良く、広角と望遠の両方の画像が得られるため、メリットはありません。1点、プロモードを弁護するとすれば、エッジ強調処理が通常の「写真」モードよりも弱く、特に倍率1倍の撮影時にはより自然な画像が得られます。ただ、これもやはり Ultra-Res モードで撮影した画像を1/2に縮小したほうが高画質です。
次に Ultra-Res モードです。このモードではデジタルズームはありませんが、画素数が4倍(一辺の画素数は2倍)ですので、通常モードの2xデジタルズームの画像と同じ画素数の領域を切り出すと、同じ倍率(画角)になります。結果は上の写真のとおりで、解像感には差がありません。同じセンサで同じように撮影しているわけですから、これはある意味で当然のことで、Ultra-Res モードで撮影した画像の中央付近を切り出したものが2xデジタルズームと言っても良いわけです。ただし注目すべきは、その画像処理の違いです。通常の写真モードではノイズ除去処理とエッジ強調処理がかなり強くかけられており、画質はいかにも「スマホの写真」らしい、ちょっとギスギスしたものになっています。それに対し Ultra-Res モードはノイズが見られますが、エッジ強調が弱いため、明部と暗部の境界線に黒い線などが出にくくなっています。
この写真は同じ倍率で違う場所を拡大したものです。大きく拡大して観察すると、橋のトラスが写真モードではギザギザしてしまっていますが、Ultra-Resモードでは滑らかで自然です。山の稜線も、通常モードでは稜線の縁に薄く黒線を引いたようになっているのが、Ultra-Res モードでは自然です。ほかにも手前の木々の描写も、Ultra-Resモードのほうが繊細さを感じさせるものになっています。
では、デジタルズームをしていないときではどうでしょうか。この写真は、Ultra-Resモードで撮影した写真を1/2の大きさにリサイズし(結果、画素数が全く同じになる)、同じ比率で拡大したものです。通常モードでは、デジタルズームをしない場合はビニング読み出しになってしまいます。そのため上の比較のように、精細度が明確に異なるものとなってしまいます。特にこの写真モードで2倍未満の倍率のときはエッジ強調が強くかかってしまい、山の稜線や建物の境界に不自然な陰影が現れてしまっています。手前の竹藪の質感なども、比べるべくもありません。縮小するとノイズが減少する効果が得られるため、Ultra-Resモードのノイズもさほど気にならないものとなっています。
しかし、こういう違いは画像を大きく拡大して、目を皿のようにして比べないとわからないのではないか・・そう思われるかもしれません。しかし、エッジ強調の弊害は画像を小さくしても残ります。上の写真は、双方の画像を通常モードの1/4、つまり1156x867画素の1Mpixelサイズに縮小したものの一部です。これぐらい小さくすると、確かに違いはわかりにくくなりますが、やはり山の稜線や建物の屋根のエッジなどに不自然さが残ります。また、手前の草木の繊細さも Ultra-Res モードのほうが高く見えるのではないでしょうか。実は、エッジ強調は画像縮小時の繊細さを低下させてしまうことがわかっています。髪の毛のような細い線が密集した画像を縮小すると、それぞれの線は画素よりも小さくなり、画素値への影響も小さくなるため、明暗のコントラストも低下していきます。この「コントラストの低下」が「細かさ」の質感知覚に影響することが科学的に確かめられており、たとえ画素レベルで解像していなくても、その背後にある「細かそう」という人間の予測を機能させることができるわけです。エッジ強調された画像はこのコントラスト低下の法則を壊してしまうため、画像を縮小しても自然な繊細さが損なわれてしまいます。
ほかにも、 Ultra-Res モードは色調やコントラストが自然で(写真モードでも「ナチュラル」設定にしていますが、それでも鮮やかさが強調されます)、いわば「一眼デジカメで撮ったよう」な落ち着いた印象があります。撮影した元画像はこちらにありますので、確認してみてください(各撮影モードはファイル名で分かるようになっています)。ノイズは少し増えますが明るい環境では問題になるほどではないし、縮小すれば弱くなります。さらに後処理で、例えば Topaz Photo AI のような高度なソフトウェアを用いると、スマホ内処理よりもずっと自然にノイズ除去ができます。Ultra-Res モードは画像サイズが9248x6936画素ととても大きく、ファイルサイズも24MB前後と大きくなってしまいます。こんな大きな画像が必要になることはまずないので、スマホ内に「Ultra-Resモードで撮影し、その結果を1/2に縮小する」モードがあればよかったとは思いますが、縮小しない画像が保存されるということは、デジタルズームの代わりに、あとから切り出し(クロップ)が使えるというメリットにもなります。
センサから全画素読み出しして画像を生成し、それを縮小したら画質が高い、とするなら、デジタルズームなしの1x撮影でもそうやって動いてくれればいいとは思うのですが、そうはなっていません。暗所でのノイズ耐性を考えるとやむを得ないところでもあります。それでは、何倍から全画素読み出しに切り替わるのでしょうか。1.1倍ぐらいから切り替わるのであれば、ちょっと面倒だけれども、少しだけズームアップして撮影するという手が使えます。そこで確かめたところ、残念ながら2倍を超えてから初めて全画素読み出しに切り替わるようでした。上の写真では、1.97倍と2.05倍の間で解像感が急に向上していることがわかります。この挙動から、2倍未満のデジタルズームで撮影するよりも、Ultra-Resモードを用いたほうが良い(切り出して縮小するほうがよい)ことがわかります。
今回のテストは日中の明るい環境でのものということに注意は必要です。通常モードは明るさに合わせて自動でモードが切り替わり、暗いときには多数の画像を撮影して合成する「ナイトモード」も有効です。明るいときと暗いときで使い分けるのがいいように思われます。ただし、Google Photo では画像の切り出しや補正ができますが、縮小機能がないのが困りものです。6400万画素のファイルを共有すると相手にも迷惑でしょう。そこで、自前で縮小・圧縮を行うアプリも作ってしまいました。アプリストアの画像縮小アプリは広告がでるものばかりですので。
結論を最後にまとめます。こと razr 40 に関しては、いかにもスマホ撮影画像らしい強いエッジ強調を避けるために Ultra-Res モードがとても有効です。また、デジタルズームのかわりに Ultra-Res モードで撮影し、切り出す方法も有効です。プロモードは解像感の面ではデメリットが大きく、64MPixel RAW は保存方法がないようです。他のスマホではまた状況が異なりますが、同様にテストをすれば、各モードの利害得失を把握することができると思います。
次は、冒頭に述べた「スマート高解像度」と「ショット最適化」の設定の影響について調べてみます。