2018年01月07日

Light L16 の高解像度性能

16 個のカメラを備え,それらで同時に撮影したデータから1つの画像を作り出す,Light L16.まずはその最大のセールスポイントである,高解像度性能について調べてみました.

まずは室内にテストチャートを置いて撮影です.無謀にも,手持ちのカメラの中で最も解像度の高いフルサイズセンサ搭載の2台(Nikon D800E, Sony α7)と比較してみました.焦点距離はいずれも35mm相当で,比較対象のカメラでは絞りをF6.3〜F8に絞ってレンズの性能を最大限に引き出せるようにしています.撮影したシーンは以下のようなものです.


このシーンを3台のカメラで撮影し,中央のチャート部分を等倍で切り出して並べてたものが以下の写真です.

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Light L16の出力画像はなんと5112万画素もあり,等倍で切り出すともっとも拡大率の高い画像になります.解像感はα7(2400万画素)を上回り,3600万画素の D800E とほぼ同等のようです.またチャートの細かな部分では,D800E, α7 の画像でモアレ,偽色の発生が見られますが(このことはとりもなおさず,レンズの性能がセンサの性能以上に達していることを示しています),L16 ではほとんど見られません.

Light L16 はなぜこんなに解像度が高いのでしょうか?このカメラは28mm相当(5個),70mm相当(5個),150mm相当(6個)の合計16個の1300万画素のカメラを備えており,今回のように35mm相当の画角で写真を撮った場合,28mmの5個のカメラで撮った写真に加え,70mm相当のカメラが画面を4つに分割したそれぞれの領域を撮影します(残った1つは中央を撮影します).これらの画像を合成することで高解像度画像を生み出すわけです.1300万画素の写真を4つ使うと5200万画素になるわけですが,実際にはただ繋ぐのではなく,28mmの広角カメラの画像を基本とし,70mmのカメラから得た細部の情報をそれに加えるような処理をしているようで,継ぎ目が目につくことはありません.

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さらに画像を見ていくと気づく点として,L16の写真がもっとも被写界深度が深いこと,シャッター速度が速いことがわかります.Light L16 のレンズには絞りがなく,F2固定(150mmのみF2.4固定)となっています.ただし撮像素子がスマートフォン用の小さなもので,フルサイズセンサに比べ 13%(面積では2%)しかありません.ですので,被写界深度としてはフルサイズセンサのカメラに換算してF15相当となっており,画像データ(EXIF)にもそのように記録されています.このことにより,撮影例ではα7 (F8), D800E(F6.3) よりも被写界深度が深いのです.しかし実際にはF2のレンズなので,同じシーンを同じ感度(今回の写真は全てISO100)で撮影するとシャッター速度が相対的に速くなります.被写界深度とシャッター速度の両立を図りやすいカメラだといえます.

画像のノイズも,この写真ではあまりフルサイズセンサと遜色ありません.感度を上げていないこともありますが,複数の画像を重ね合わせることによってノイズが均され,ノイズ低減される効果があるようです.

最後に,D800E, α7 で撮影した画像を掲載しておきます.



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2018年01月04日

Light L16 が来た

数年前に発表されて以来,楽しみにしていた Light L16 という16眼カメラがやってきました.

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この奇抜な見た目をしたカメラ.28mm, 70mm, 150mm 相当のカメラモジュールが計16個搭載されており,それらが同時に撮影した画像から超高解像度画像を作り出したり,背景を自在にぼかしたり(撮影後にぼけの強さを調整したり)することが出来るカメラです.

このような,コンピュータによる計算によって写真撮影を高度化する技術は「コンピュテーショナルフォトグラフィ」と呼ばれ,私自身の研究分野(仕事)でもあります.この分野の製品は,産業用カメラ(工場の自動化や検査のためのカメラ)にも幾つかの例がありますが,一般消費者向けに発売されたのは以下の3台です.

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左の2台は LYTRO 社のカメラで,レンズは1つしかありませんが,撮像素子の手前に工夫を施すことによって,レンズが像を形成する前の光線の状態を記録し,計算機処理によってピントの合わせ直しを行うことが出来るカメラです.高品質なぼけ生成ができますが,画像の解像度が低いという欠点があり,手前の赤いカメラ(初代)と,左の大きなカメラ(LYTRO Illum)を発売した後,この分野からは手を引いてしまいました.それに対して今回の Light L16 は,それぞれのカメラは従来のものと大きく違いませんが,複数のカメラで同時に撮影すること,カメラの撮影方向が鏡の制御によって少し動くことによって新しい機能を実現しています.

その1つが,LYTROにもあった「ぼけのコントロール」です.普通のカメラは撮影時に絞りの大きさ(F値)を決めて,これにより背景のぼけ度合いを調整しますが,この Light L16 では撮影時には絞り値を調整することは出来ません.かわりに,画像をPCに読み込んでから調整することが出来ます.

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上の写真で,斜めに引いた赤い線より左が絞りを絞った時,右が絞りを開いて背景や前景をぼかしたときに相当します.同様の機能は最近の,レンズを2つ備えたスマートフォンでも出来るようになっていますが,それよりカメラの数が多く,高精度・高画質に実現できる点がポイントです.

他にも,レンズの突出部が全くないフラットなボディであることなど,面白い点,変わった点の多いカメラですので,おいおい紹介していきたいと思います.
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2015年11月29日

邪魔なものは取ってしまえという話

ここのところ何度も,ミラーレス一眼カメラに対称型広角レンズを装着したときの周辺部の画質について取り上げています(原因の解説収差の補正色の補正).要するに,赤外線カットフィルタや光学ローパスフィルタが画面の周辺部で収差を発生させて画質を低下させるため,補正レンズの装着などによって補正する方法などを紹介してきましたが,「それならそもそも,そういうフィルタを撤去したらいいのでは?」という考えが浮かびます.

赤外線カットフィルタの撤去は天体撮影の分野では非常にポピュラーです.星雲などが強く発するHαと呼ばれる光線は赤外線カットフィルタで除去されやすいため,赤外線カットフィルタのないカメラでは明るく,鮮やかに写すことができます.そのため,天文ファン向けにカメラからフィルタを撤去してくれる業者も多くありますし,カメラメーカ自身もNikon D810ACanon EOS 60Daのような天体撮影専用のカメラを発売するぐらいです.私も時々天体撮影をすることがあるので,Sony NEX-5R の購入後あまり使わなくなっていた NEX-5 を改造することにしました.

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上の写真は NEX-5 から撮像素子ユニットを取り外したところです.NEX-5 は安価になっていることもあって,赤外線カットフィルタ・光学ローパスフィルタを撤去する方法についての情報はネット上に豊富にあります.詳細はここでは書きませんが,簡単にいうとカメラの背面からアプローチしていき,マウント側は一切手を付けません.裏蓋,液晶ディスプレイユニット,メイン基板の順に取り外すと撮像素子ユニットが現れます.フィルタは両面テープで貼り付けられているだけなので,隙間にカッターナイフ等を差し込むと簡単に剥がすことが出来ます.

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上の写真はフィルタを撤去した後のセンサの外観です.フィルタを撤去してもまだ,センサの直上には保護ガラスが残るため,センサに直接触れて破壊してしまう恐れはありません.ただし,超音波式のアンチダスト機構は残しておいても機能しなくなります.

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そして,これが取り外されたフィルタです.赤外線を反射するためと思われる干渉膜や光学ローパスフィルタのほか,水色に色づいたガラスがあり,分光感度の補正をしているようです.厚みは合わせて1.2mmあり,これを撤去することで光路長が0.4mmほど長くなるためにそのままでは無限遠にピントが合わなくなります.天体撮影のためにはそれでほとんど差支えありませんが,様々なレンズを装着できるようにするため,さらにカメラ内部に手を入れてフランジバックを短縮しました.

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最初の写真の撮像素子ユニットはボディ側の3箇所にネジ止めされていますが,そのネジ止め箇所に上の写真の青丸で囲ったスペーサーが置かれています.計測したところ,これらは 0.25〜0.3mm 程度の厚みでしたので撤去しました(このシムは,フランジバックの調整のため,カメラの各個体によって異なる厚みのものが使われている可能性があります).さらに撮像素子フレームの固定箇所(赤丸部分)を削り,0.1mm 程度薄くすることで総合的にフランジバックを短縮しました.かなり硬度の高いステンレス製で砥石ではかなり時間がかかるため,厚みをノギスで計測しながらグラインダーで削りました.

どちらかというと分解よりも組み立てのほうが難易度が高いですが,無事に組み付けも終了.早速天体撮影といきたいところですが,まずはその前に広角レンズの画質比較を行いました.

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比較結果をクリックして拡大して見ると一目瞭然ですが,オリジナルの NEX-5R に比べ,補正レンズを装着したときやフィルタを撤去した NEX-5 は周辺部がシャープに写っています.仔細に比較すると,NEX-5 よりも補正レンズを取り付けたもののほうが隅の方の画質が良いようですが,これはレンズそのものの収差を補正レンズがたまたま打ち消しているのかもしれませんし,NEX-5 に残っている保護ガラスの影響ということも考えられます.いずれにせよ,撮像素子直前に置かれたフィルタによる画質劣化がよりはっきりと確かめられましたが,一方で色再現性は実用には全く適さないものとなります.カラーバランスを調整しても,そもそも赤外線による感光の影響があるために,例えば植物の緑は淡い色になってしまい正しく再現されません.それでも天体撮影の他に,赤外線フィルタを用いて赤外写真を撮影したり,モノクロモードにして(またはRAW現像でモノクロ化して)モノクロ写真専用カメラとして使っても面白いのではないかと思います.

そしてようやく翌週,よく晴れた夜がやってきました.もう12月,寒いのでとりあえず玄関前に赤道儀をセットし,オリオン座大星雲を撮影しました.レンズは Ai Nikkor ED 500mm F4P に SIGMA APO TELECONVERTER 2x EX を装着し,赤道儀に載せて30秒間露光をかけました.

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合成焦点距離は1000mm,APS判なので1500mm相当の画角,ノートリミングです.星雲がなかなか広い範囲まで写りました.いい感じです.

最後に比較画像のオリジナルをアップロードしておきます.全て cornerFix で周辺の色かぶりを補正してあります.

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Carl Zeiss Biogon 21mm F4.5 + NEX-5R

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Carl Zeiss Biogon 21mm F4.5 + Nikon Close-up No.0 + NEX-5R

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Carl Zeiss Biogon 21mm F4.5 + NEX-5 (赤外線カットフィルタ・光学ローパスフィルタ除去,色補正後)
posted by しんさく at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ