2019年12月28日

イヤホンの話

一見地味なようでいて、最近のイヤホンの進化には眼を見張るものがあります。ウォークマンの時代からしばらくはずっとインナーイヤー型のイヤホンが使われてきましたが、20年ほどまえでしょうか?カナル型がじわじわと勢力範囲を拡大し始め、高級オーディオブランドも参入するなど高級・高音質なイヤホンがもてはやされた時期がありました。その後、ヘッドホンからの流れでノイズキャンセリング搭載型のイヤホンが登場。また、Bluetoothによるワイヤレス化も進みましたが、最近になって左右分離(完全ワイヤレス)型のイヤホンが登場し、電車に乗ると一気に普及が進んでいることを思い知らされます。そして現在はそれらの要素が統合され、左右分離・カナル型でかつノイズキャンセリングを搭載したイヤホンがAppleとSonyからそれぞれ登場し、覇を争っている状況です。

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そんな中で、私もご多分に漏れず左右分離型のイヤホンを入手しました。HUAWEI のFreebuds 3です。11月末頃から発売になっていたようですが,ネットでも店頭でも在庫切れのことが多く、ようやく最近入手しました。パッケージはなかなか高級感があります。

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なぜこのFreebuds 3を選んだのかというと、このイヤホンはカナル型でない左右分離型イヤホンでは唯一、ノイズキャンセリングを搭載しているためです。カナル型は遮音性が高く、また低音も出やすいのですが、どうしても長時間装着していると耳が痛くなってきます。

上の写真では、カナル型が流行ってきた頃に買った「プロ用モニター」、MDR-EX800STが写っています。なかなか音質が高く、また耳の周りに引っ掛けるようになっていて運動中も外れにくいため、ジムに通っていたときにはこれを iPod nanoと組み合わせてよく使っていました。しかしイヤーチップを色々変えても耳の穴が痛くなるのは避けられません。

次に買ったのは左上に写っているBOSEのQuietComfort20(QC20)です。これはノイズキャンセリング性能が高い上、普通のカナル型とは構造が違い、耳に挿入する部分が柔らかい円錐状となっていてかなりソフトな感触です。そのため、上記EX800STよりはずっと楽なのですが、それでも2時間ぐらいすると違和感があります。またノイズキャンセリング(電源スイッチ)をOFFにすると音質が非常に劣化するという問題があり、しかし新幹線がトンネルに入った瞬間の気圧変化でボコボコという音がするという問題もありました。これも音質が高く気に入っていますが、これらのイヤホンが既に手元にあることもあって、今回はカナル型でなくインナーイヤー型(HUAWEIはオープンフィット型と言っています)を試すことにしたわけです。

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使ってみた印象ですが、ノイズキャンセリング性能はさすがにQC20には劣ります。QC20では、電車の走行音やエアコンのエア吹き出し音のような定常的な低音はほぼ完全に消える感じですが、Freebuds3では少し残ります。しかし効果が感じられないとか言うことはまったくなく、はっきりと音は小さくなります。感覚的には1/3〜1/5といったところでしょうか?カナル型は耳への接触状態により音響特性が大きく変わるので(インナーイヤー型のイヤホンでも耳に押し当てると低音がぐっと強くなるように、特に低域のゲインが大きく変わります)、致し方ないところかと思います。音質もバランスが取れており、超低域はカナル型には及びませんががスッキリした音質で、性格にあっているかと思います。

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当然のことながら装着感はよく、これなら長時間使えそう。また、ペアリングも簡単で、いったんペアリング出来ていれば次回の接続も速いです。このイヤホンはスマホ(HUAWEI P20 pro)のほか、iPad mini4、MacBook Proともペアリングしていますが、それぞれで選べばすぐに切り替わり共有も簡単。ケースの充電方式もUSB-Cでスマホと共有できますし、なにかと良い商品でした。

カナル型でよいのならAppleのAirPods Proの評判が高いようですし、ソニーの最新鋭機種も音質の評価が高いようです。しかし音質を追求するならどのみち有線型も捨てがたく、左右分離型のお手軽さは、インナーイヤー型の性格にあっているようにも思えます。インナーイヤー型の左右分離型といえば通常モデルのAirPodsが思い出されますが(ほかにはあまりない)、同等の価格でノイズキャンセリングがついているのがやはりこのFreebuds 3の最大の魅力でしょうか。
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2019年08月25日

ビデオヘッドセット Avegant GLYPH 使い勝手

ビデオヘッドセット Avegant GLYPH前に試した MOVERIO BT-30E と同様に、PCやスマートフォン・タブレットと接続して使用するディスプレイデバイスです。Oculus などの最近のVRゴーグルではスタンドアローン型がもてはやされていますが、ゲームやエンタメ中心で今ひとつ汎用性に欠け、仕事に使うにはちょっと無理があります。ではこの GLYPH ではどうでしょうか。

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PCやMacにはHDMIケーブルでダイレクトに接続ができます。MOVERIOと違い、途中に中継ボックスなどはありませんし、ヘッドセット内にバッテリーが内蔵されているので電源を接続する必要もありません。さらに充電中でも動作しますので、付属のMicroUSBケーブルをPCのUSB端子に繋げばPCから電力供給を受けることもできます。もっとも、内蔵バッテリーで4時間動くので実際には接続する必要はほとんど必要ありません。ともあれ、ケーブル1本で接続が完了し、音を聞くのに別途イヤホンを繋ぐ必要もないので、とてもセットアップが簡単。電源を入れると数秒で使用開始できます。PCからは単なるHDMIのテレビとして認識され、映像と音声信号が伝達されます。

この Avegant GLYPH で要注意なのは、受け付けるHDMI信号が720pまでであること。1080i/1080pの信号を入力すると、表示できない旨を表すエラー画面が表示されてしまいます。とはいえ、ほとんどの出力デバイスは相手先を自動認識して適合する信号を出力しますので、例えばこの MacBook Pro の場合でも接続するだけで問題なく画像表示されます。内部のDLP表示デバイスの解像度も720p (1280 x 720ピクセル)ですので不都合は全くありませんが、後述するように機器によっては720p出力に対応していないものがありますので念のため確認したほうがいいでしょう。

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アイピースから見える表示を iPad のカメラで無理に撮影してみた様子です。ディスプレイ素子がDLP/DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)で、RGBの3色が時分割で表示されるため、どうしてもカメラのローリングシャッターと干渉して色づいた縞模様が見えてしまいます。実際の肉眼ではこのような縞模様はもちろん一切見えません。ただし眼球を動かすとDLPプロジェクタの投影画面を見ているのと同様にカラーブレーキング現象(明るい点が色づいて見える現象)は生じます。ですが表示は非常に鮮明で、それぞれのドットがかなり明確に視認できます。といっても通常の液晶ディスプレイよりは解像度や見えが劣りますので、表示解像度を低め(文字を大きめ)にするといい感じ。これならPCのディスプレイを消して仕事をすることもできます。

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表示部が上下に薄く、また周囲を覆わないので、手元を見ることもできます。感覚的には斜め45度から下は見える感じですので、PCのキーボードやタブレット画面を見るのは十分可能。また、目の周りが覆われないので画面が曇りにくいというメリットもありそうです。

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スマートフォンでも試してみました。Huawei P20 Pro では問題なく 720p の信号が出力され表示されます。USB-CからHDMIへの変換アダプターとしてはもっと小型のものもありますので、それを使うとさらに小型軽量化が可能です。

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P20 Pro にはデスクトップモードがあり、外部ディスプレイにはこのようにPC風の画面を出すこともできます。アプリによってはこのモードでうまく動かないものもありますが、メールの読み書きなどはこちらのほうがやりやすい。このデスクトップモード、接続するディスプレイの解像度によって画面の大きさが変わるようで、1080で接続されてしまうMOVERIO に比べ 720pとなる GLYPH ではアイコンや文字が大きくなり、使いやすい感じです。スマートフォン本体はタッチパッドになるので、bluetoothキーボードがあればちょっとした仕事はできそうです。もちろんデスクトップモードを解除して普通のスマホ画面でも使うことができます。

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GLYPHの特徴として、電源を切っているときでもヘッドホンとして使用できるというものがあります。3.5mmのイヤホンジャックを接続すれば電源を切ったままでも音が鳴ります。そのときにディスプレイ部分を覆うカバーも付属しており、また、レンズも引っ込めることができます。ちゃんとしたヘッドホンに比べ少し装着感は劣りますが、面白いアイディアだと思います。ただし音質は、HDMI経由で聞くよりも悪い感じ。低音が少し強くなりすぎるようです。逆にいうと、HDMI経由のときの音質はなかなかのもので、ヘッドホンとして十分満足行くものですので、ここはちょっと惜しいところ。とはいえ、特に音が小さかったりノイズが乗ったりするわけではないですし、もちろんTV会議等にも問題ありません。

iPad にももちろん HDMI 経由で接続することも出ます。iPad のいいところは、Amazon Prime Video などを視聴している途中にカバーを閉じたり電源スイッチを押して本体の画面を消しても、HDMIには映像信号が流れ続けるところ。ネット経由の映像視聴にはこれが一番便利のように思えました。ただし iPad は(現在のところ)マウス操作ができません。そのため、タッチ操作が必要なときには必ず画面を見る必要があります。次期 iOS ではマウス対応になるようなので、それが使えれば問題なくなるかもしれません。

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カメラも接続して試してみました。手元のカメラのうちHDMI出力があるのは、パナソニックのビデオカメラHDC-TM85, ソニーα7, DSC-TX100V, TX30 などがあります。このうちα7は出力信号が1080に限定されるようで、残念ながら表示ができませんでした。TM85やTX100V, TX30 では問題なく表示ができました。TX100Vを使い、カメラを手元で操作しながら解説するムービーを撮ろうと思って作ってみたシステムが上の写真です。自分がカメラを見ながら操作するような映像が撮れましたが、熱的問題なのかどうしても1カットの動画が5分ぐらいで止まってしまうため、もうすこし検討が必要なようです。なおこの場合カメラが重いので、実際には頭を後ろから支えるバンドを付けないとちょっと不安定になってしまいます。

GLYPH はメディア視聴用のデバイスですが、3D, VR にも一応対応しています。YouTubeにあるようなサイドバイサイドの映像であれば、左耳側のボタンを押すことで3D表示になります。また別のボタンを押すと、GLYPH内部のモーションセンサーの信号を出力することができます。この信号、なんとUSB経由でマウスの動きとして出力されますので、USBを繋いでおけば頭の動きでカーソルを上下左右に動かすこともできます。ちなみに右耳側のボタンではHDMI経由の音量と輝度(3段階)の調整ができます。

総合的に、画質と音質がともによく、接続も簡単で装着感も悪くない、よいデバイスでした。
posted by しんさく at 23:04| Comment(3) | TrackBack(0) | 電子モノ

ビデオヘッドセット Avegant Glyph

先日、エプソンのスマートグラスを購入した件についてこのブログに書きました。面白いデバイスなのですが、そもそもの目的(他人に覗かれないPCのディスプレイとしての用途)には画像のぼけが気になります。周囲のシーンが透けて見える光学シースルー式という難しい技術にチャレンジしているから仕方がない部分もあるのですが、実際に使うとなるとちょっと厳しいのは事実。そんななか、別のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に良さそうなものがあるのを知り入手してしまいました。

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これは Avegant GLYPH というデバイスで、特徴はほとんど普通のヘッドホンの形をしている点。Oculus のVRゴーグルのように視野を完全に覆って没入感を得るものでもなく、かといって Google Glass や MOVERIO のように周囲環境と画像を同時に見るものでもなく、「ビデオヘッドセット」や「メディアゴーグル」と呼ばれ映像視聴用として企画されたもののようです。Avegant はもともとクラウドファンディングでこのデバイスを企画・開発して売り出したのが始まりのようで、今はより高度なヘッドマウントディスプレイを開発する企業として活動している模様。初出荷からは3年以上も経つデバイスなのですが、いろいろ調べていると多様なHMDの中でも画像のシャープネスがトップクラスらしく、重量バランスもよさそうなので買ってみました。当初は6万円ほどしたようですが、今は2万円ほどで買えるのも手を出す理由になりました。

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デバイスの重量は実測で432gです。前にMOVERIOを買ったときに書いたように重さは気になるところで、装着時の重さもさることながら出張などに持ち歩くことも考えると軽いほどいいのですが、4時間ほどディスプレイを駆動することができるバッテリーが内蔵されているために重めとなっています。しかし絶対的な重さは本格的なヘッドホン(右はオーディオテクニカの名機、アートモニター ATH-A900で、約350g)とそう変わらないということもできます。

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なんといってもこのHMDのいいところは重量バランスです。スマートフォン用と同様の大きさの大きな液晶パネルを用いたHMDに比べ、小さなDLP素子を使って作られているため、前側のディスプレイ部が小型軽量になっています。そのうえ、スピーカ部に回路やバッテリーなど重量物が集められているようで、重心はイヤーパッドの半径内にあります。上の写真は試しに乾電池を立ててバランスがとれるように置いてみたところ。

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装着性を高めるために鼻あては大きさ違いが4種類付属しています。この部品もよくできていて、シリコン状の柔軟な素材の裏から硬い板状のパーツで支えるような構造になっており、快適性が高いです。いずれにしても重量バランスが良いため鼻に重さがかからず負担は軽め。また頭頂部〜後頭部を押さえるバンドも付属しており、これを使うとさらに安定しますが、バランスが良いのと、イヤーパッドを押さえつける力が強いため、バンドや鼻あてがなくてもイヤーパッド部分の摩擦だけで見やすい位置に保持できるぐらいです。

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装着性といえば、光学系が少し傾けられている点も好印象。人間は手元を見て作業することが多いためか、真正面よりも少し下向きを見るほうが楽なようにできているようです。MOVERIOは画面が真正面に現れましたが、これを見るにはまぶたをしっかり見開く必要があったりして楽な視聴がやりづらいところがありました。その点、GLYPHでは画面がやや下寄りに出るので比較的楽になっています。大型のLCDパネルを用いたHMDに比べると光学系が小さく、目の位置合わせは重要になりますが、鼻あてがあるので一旦セットした後はずれることはあまりありません。

光学系が小さいメリットとしては、レンズのピント合わせ機能があること。これによりかなりの近視でも裸眼で映像を見ることができます。ピント合わせはレンズの周りのリングを回す仕組みで、左右の視力が違っていてもそれぞれ独立に調整できます。私は左目が-5.0D、右が-1.5Dぐらいと、両目の視力がかなり違うのですが問題なく裸眼でも使用できました。画面の見かけのサイズもMOVERIOの2割増しぐらいで、映像視聴には大きすぎず小さすぎずといったところ。ヘッドホンに似た見た目を狙ったキワモノのようでいて、実はかなりしっかりできたデバイスでした。PC等を繋いだときの使い勝手等は次のページで紹介します。
posted by しんさく at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子モノ