2020年07月05日

ステンレス線でスチロールカッター

先日から作成しているホバークラフト、大きな農機具(リーフブロワー)を乗せるタイプも、PC冷却ファンや小型のCoxエンジンを乗せるタイプも、どちらも発泡スチロールが主な素材になっています。それを切ったり削ったりしていくわけですが、どうしても細かな粉が出ます。発泡スチロールの粉はとても静電気を帯びやすく、服についたら取れにくいし、どこにでも入り込むため屋内作業はしたくないところ。スタイロフォームをカッターで切る場合はさほどではないですが、これはこれで結構力がいるし、ということで、やっぱり熱線式のスチロールカッターに限るな、ということになりました。

そこで例によって amazon などでニクロム線を探してみるわけですが、いろんな太さがありどれがいいのかわかりません。それでネット検索。すると素晴らしいことに、どれぐらいの電力で熱すればちょうどよい具合に切れるか調べたブログが見つかりました。それによると、0.4W/cm(1cmあたり0.4W)ぐらいがよいようです。これと、ニクロム線の単位長さあたりの抵抗値(Ω/m)ぐらいががわかれば、どれぐらいの電圧・電流になるかがわかります。抵抗値が高いと電圧が高めで電流が小さくなりますが、あまりに電圧が高いと感電の危険があります。逆に抵抗値が低いと電流を大きくする必要があるため、電源の能力が問われたり、配線の太さが問題になります。丁度いいのはどれぐらいかな・・と思ってさらに検索をしていると、なんとステンレス線でも発砲スチロールカッターが作れるという記事を発見しました。たしかに、ステンレス(代表的なもの)も鉄にニッケルとクロムを混ぜたもの(18-8ステンレスというのは、クロムが18%、ニッケルが8%という意味)なので、ニクロム線に近いわけです。

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ステンレス線なら手持ちにいろいろあります(錆びにくく、汎用性が高いので、下手な針金を買うよりもずっとおすすめです)。その中で一番細いものというと、この0.3mmの線。距離を変えながら抵抗値の変化をテスターで調べてみると、どうも10Ω/mぐらいで、狙っていた抵抗値ドンピシャという感じです。さっそくこれで発砲スチロールカッターを作って見ました。電池式だとなにかと便利ですが、エネループ4本で電圧は約5V、ステンレス線の長さを25cmにすると抵抗値は2.5Ωなので約2Aが流れます。全体で10W、単位長さあたりの発熱量は0.4W/cmということでぴったりです。



木の棒で枠を作り、ステンレス線を張ってスチロールカッターにしました。ポイントとしては、ステンレス線へのはんだ付けでしょうか。そのままではハンダが乗らないのでステンレス用のフラックスが必要です。そして切ってみた様子が上の動画。もう少し切れ味が良くてもいいかなと思いますが、切断面もきれいでうまいこと切れました。ステンレスのほうがニクロムよりも抵抗値が低いので、同じ抵抗値ならステンレスのほうが細くなり、かえって具合がいいのではないかと思います。
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2020年07月04日

3DプリンタでFRPを造形する

3Dプリンタが安価になり、光硬化樹脂を用いたタイプではかなり高精度な造形も可能です。しかし素材が限られるために造形物の強度が制約され、アクリル素材に似た硬さになり、壊れにくさの点では一般のプラスティック造形品と同等とはいきません。特に、紫外線硬化樹脂は造形直後に比べて時間が経ったり光があたったりすると硬化が進み、出力直後よりも硬くなるかわりに脆くなることが多いようです。そのため細かなアクセサリを作っても落とすと欠けたてしまったりしますし、強度が必要な部分では厚みを十分にとる必要があったりします。なんとかならないか・・と思っていて、ふと思いつきました。FRP(繊維強化プラスティック)にすればいいのではないかと。

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そこでいろいろ調べていると、なんとグラスファイバーの短繊維を小分けで販売しているところ(フェザーフィールド株式会社)が見つかりました。さっそく、ガラス繊維を3mmの長さに切断した「チョップトストランド」と、さらに細かくすりつぶした粉末状の「ミルドファイバー」を500gずつ購入。たった500gと思いましたが、届いてみると意外に量が多く、かなり遊べそうです。

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3Dプリンタにかけるまえに、まずは簡単な実験をしてみます。小さじにガラスファイバー2種類をとって、それにスポイトで約1mlずつ紫外線硬化樹脂を垂らします。紫外線硬化樹脂にはSK本舗のSK水洗いレジンの透明と黒色を混ぜたものを使いました。この水洗いレジンは後処理や掃除が非常に簡単になる上、匂いもほとんどせず、造形失敗も非常に起こりにくいので非常におすすめ、というか光造形を使うならこれに限ると思います。爪楊枝でよく混ぜてから紫外線ランプで固めました。



固めたものを曲げたり折ったりする様子を動画に撮影しました。今回は形を統一していませんし、そもそも統一したところで測定器がないのでどうにもなりませんが、かなり剛性が上がっている様子がわかると思います。破断する際の強度だけでなく、その前の曲がりやすさ(剛性:ヤング率)がかなり変わるのが印象的です。またこれは想像ですが、3Dプリンタ出力物は次第に反ってくることが多いところ、それをかなり防げるのではないかと思います。

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次に3Dプリンタで造形してみました。今回はミルドファイバーを、まずは少し、次は思い切った量を入れて造形してみました(それでも上の実験よりは混合比率は低いと思います)。造形結果を右に示しています。特に通常の造形と変わった点はありませんが、ミルドファイバーの混合率を高くしたときには一つ、造形物がプラットフォームから剥離したので、もしかしたら紫外線硬化樹脂の割合が減ることで接着力が下がる可能性はあると思います。ミルドファイバーを用いた場合、最終形状は普通の造形とそんなに違いはありませんが、側面は少しザラザラした印象になるようです(上下の面は通常の造形と同様にツルツルになります)。出来上がったものを曲げてみると、やはり混合しない場合に比べて剛性が高くなっているようで、幅10mm、長さ40mmの棒状の物体の場合、厚みが5mmもあれば、手の力では折ることが出来ないぐらいの強度になりました。

チョップトストランドではまだ実験していませんが、造形物の周囲に繊維が毛羽立ったような形状に造形されると思われます。薄い層ごとに固め、固めるごとにプラットフォームが上がって液を満たす動作をする関係から、全てのファイバーが水平方向に配向されると思われ、その方向の強度が高くなると思われます(よって薄板状のものは水平であれば強度が高くなると思いますが、縦に長いものは強度アップはあまり期待できない可能性があります)。次回実験してみたいと思います。

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FRP というと、ガラスマットやガラスクロスなどの布状のものを型に貼り込み、2液性の樹脂(マトリックス)で固める方法が一般的です。しかし産業界ではプラスティックの射出造形で短繊維を用いた造形も広く用いられています。また、今回の実験と同様に光硬化型3Dプリンタで素材にガラスパウダーを混ぜ、強度の評価を行った先行研究も見つかりました。ガラスパウダーとミルドファイバーがどう違うか不明ですが、ガラスパウダーでもかなり強度が向上することが報告されています。ちなみに今回購入したミルドファイバーは遠目にはただの粉末ですが、拡大すると上の写真のように繊維形状を保っています。これらのガラス素材は紫外線硬化樹脂よりも重量あたりの値段が1/10程度と安いので、量を水増しすることもできて面白いと思います。

ミルドファイバーを紫外線硬化樹脂に混ぜると、そもそも粘度が高めの紫外線硬化樹脂の粘度がさらに上がりドロっとしてきます。それ自体にはあまり問題はないようですが、比重の違いによりガラス繊維が次第に沈殿します。造形動作である程度撹拌されますが、造形前にはよく撹拌したほうがいいようです。また、今回はさほど気になりませんでしたが、ガラス樹脂は硬いため、3Dプリンタのバット底面のFEPフィルムが白濁しやすい可能性はあると思います。

今度は一度、強度最優先でチョップトストランドを用いた造形も試してみようと思います。
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2020年05月23日

腕時計バンド問題

腕時計の楽しみ方(悩み方?)の1つにバンドをどうするかという問題があります。デザインの好みの他に、快適性や耐久性などいろいろと考慮する要素があります。これはいいなと思っても生活しているうちに、意外とだめだったとかいうものも。最近は1000円程度でいろんなタイプのバンドが入手しやすくなっていることもあり、いくつか試してみました。

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腕時計のバンドにはかなりいろいろなタイプがありますが、まずは素材(革・金属・ファブリック)で大きく分類することができると思います。革はドレッシーですが、汗などで痛みやすいほか後述するように柔軟性や安全性の観点であまり好みでないので、ファブリックと金属からいくつか入手してみました。

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この1ヶ月で入手したバンドを並べてみました.多くは amazon の国内発送のものでも1000円台で入手でき、AliExpressなら時間はかかりますがもっと安くで入手できます。例えば一番左のものは AliExpressで送料込み7.55ドル(約800円)で入手しました(そもそも中国からの低価格便で時間がかかる上、コロナウイルスの影響でさらに遅延がありましたが・・)。

これらのバンドで最も気になるのは重量でしょう。そこで、それぞれ測定してみました。なんとその重量比は10倍以上。しかし後述するように実はバンドの重さは(慣れにも依存しますが)実はさほど決定的な違いではなく、他の要素が快適性に影響することがままあります。

その1つはヘッドとの重量バランスです。あまり軽いバンドですと、姿勢により時計本体(ヘッド)が自重で下がろうとし、腕の周りを回転します。ある程度きつくすると回らなくなりますが、それでも少しずれると腕が曲げにくくなったりして不快の原因になります。ヘッドとバンドのバランスが取れている方が快適になることが多いです。私の場合,運転中にハンドルを9時15分位置で握ったときに時計が縦になり,下にずれようとするのがかなり気になってしまいます。Garmin vivomove Style はヘッド単体の重さがたった25gと軽いのですが、それでもこれらのバンドの中では重いものほど回りにくくて快適に思えます(バンドと腕の摩擦の大小にもかなり影響されます)。

もう1つは柔軟性です。柔軟性なら金属よりも革やファブリック(布)のほうがいいだろうと思えますが、さにあらず。革mはもちろんファブリックのタイプでは、多かれ少なかれ、バンドが真っすぐになろうとする力を持ちます。これによって腕を締め付ける力が不均等になり、ちょっとした不快感の原因になります。使い込むと手の形に沿うようになるということはあるのですが・・・その点では、金属ブレスレットは曲げても元の形に戻ろうとする力は働きませんので、締め付け感が出にくいと思います。

金属製のバンド(ブレスレット)にも、細かなコマをピンで繋いだタイプの他に、金属の網のような構造のいわゆるミラネーゼタイプと呼ばれるのものもあります。特に薄手のミラネーゼの柔軟性は非常に高く、簡単にくしゃくしゃになるぐらいですが、本来の曲げ方向以外には曲がりにくく、強度もかなり高いので、伸縮性はほとんどありません。

就寝中の睡眠トラッキングなどでは逆に、尖った角がないファブリックタイプのバンドが快適です。ただし時計部分はどうしても飛び出しているので、うつぶせ寝のときなどは邪魔になりやすいのはかわりませんが・・

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他に気になる点として、バンドの平坦性があります。まず内側。内側に凹凸があると、外したときに腕にその跡がくっきりと付きます。特に長時間のPC作業でブレスが机に当たっていたりすると、内側に凹凸があると当たった部分が痛くなりがちです。外側の平坦性も、なにかにひっかかったり傷付けたりと行ったことの確率に影響します。

バンドと肌の摩擦も大きく違います。ミラネーゼタイプは通気性が良い上、細かな点で腕に接触するからか、汗を書くような使い方でも張り付く感触がなくサラサラ感がかなり高いブレスレットです。逆にいうと肌との摩擦が小さく、動きによってずれやすいです。同じ金属製でもコマを繋いだタイプは肌に密着しやすく、緩めの装着でも、少々の生活動作ではずれにくいという良さがあります。

最後に装着時の安全性について。装着時にバンドが切れてしまう(C字型になる)タイプは落下リスクが大きく、また、装着時に落とさないように気をつけるストレスがあります。外すときも切れてしまわないタイプは腕を通してしまえば安心なので、私個人的にはかなり重視するポイントです。

これらを総合して、今回購入したバンドについて少し感想を書いておきます。純正タイプは見た目も品質もよく、軽くて運動にも差し支えないので、なるほど純正か、という納得感があります。しかし上記のように脱着時に切れてしまうことと、軽すぎて姿勢によって向きがずれがちという問題点はあります。この手のバックルは長さ調節の手間がありませんが、逆に言えば毎回の装着時に長さを気にする必要があるという細かなストレスもあります。

カーキ色のバンドは非常に安価なものですが、純正よりもさらに軽い上、装着感も柔らかです。長さが自由に調整できるので、激しい運動時は締め付けを強くするなどの対応も簡単です。しかし両端の留め具もプラスティック製で成形時のバリもあり、どうにも品質感が低いということはあります。

ミラネーゼタイプは2つ購入しました。市場には脱着時にバンドが切れてしまうタイプが多いのですが、その中で探して上の写真の切れないタイプを見つけて購入。本命視していたのですが、私の場合腕が太く、ちょうど内側に来るバンドの端とバックルの折れ目の端がほぼ同じ位置になってしまいます。このため内側の段差感がかなり大きくなってしまうのが難点でした。腕の太さによって評価が変わると思います。

磁石タイプのミラネーゼブレスレットは Apple Watch が採用しているのと同様のタイプです。両端の金具も金属製で、品質感が高い上、柔軟性が極めて高いのが特徴です(そうでないと留め具部分で折り返せないので当然ですが・・)もう1つのミラネーゼタイプはかなり腰があり、一定以上は曲がらないのとは大きく異なります。このバンドも長さを微妙に調整できるのが利点ですが、逆に言えば装着時に微調整する必要があります。装着感はサラサラで夏場は特に良いだろうと思いますが、滑りやすく時計がずれやすいのと、磁石が強力で、ヘッドに近づけすぎると針がずれることがあります。また金属製のオフィス机で薄型のキーボードを使っていると、バックル部分が机に吸い付くことがあります。柔軟性が高い上に内側に凹凸がないので、ズレと磁石の問題以外はかなり良いのですが・・。磁石のついた部分が留め金を通ってしまうので、厳密な意味では「脱着時に切れてしまう」タイプのブレスレットですが、実際には最大まで緩めてから掌を通す装着法になるので問題はありません。留め金の一方を使わずに、直接バネ棒の周りを回す方法で付けられないかとも思ったのですが、幅が微妙に20mmを超えていて不可能でした。また留め金の形状から、時計に傷がつくリスクがあります。

最後に、最も重い金属ブレスですが、意外にこれが最も違和感がないブレスレットです。ヘッドと合計でちょうど100gですが、この時計までに常用していた時計(BREITLING B-2)はヘッドとブレスの合計で200gほどあったので、それに比べれば重さは半減です。時計がかなりずれにくく、内外の凹凸も気にならないレベルで、見た目も合格レベルです。あとは耐久性がどうかでしょうか。ちなみに私の場合、コマを1つ外して長さがちょうどでした。

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その後結局,さらにもう1つ金属ブレスレットを購入してしまいました。これはさすがに1000円台とはいかず、4000円少々しました。よく似たデザインのものが2種類売られていて、1つは長さを調整する部分が割りピンになっている廉価版。もう1つは上の写真のスクリューピン式(長さ調整のピンが太く、マイナスネジで固定されているもの)。1000円ほど違いますが、ピンが違うだけでなく、クラスプ部分も違います。このタイプは弓型の部品が削り出しで高級感・しっかり感があり、ブレスレット部分(各コマ)に厚みもあるようです。そのかわり93g(ヘッド込み118g)ほどになりますが・・またバネ棒を通す穴が太めで、普通のバネ棒だと少しガタツキがあるので、直径2mmのバネ棒を別途調達してガタツキを抑えました。良い感じです。結局、「相対的にヘッドが重いとずれやすいが、ブレスが重い分には問題ない」ということになりそうです。個人差があるとは思いますが・・
posted by しんさく at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子モノ