2019年08月25日

ビデオヘッドセット Avegant GLYPH 使い勝手

ビデオヘッドセット Avegant GLYPH前に試した MOVERIO BT-30E と同様に、PCやスマートフォン・タブレットと接続して使用するディスプレイデバイスです。Oculus などの最近のVRゴーグルではスタンドアローン型がもてはやされていますが、ゲームやエンタメ中心で今ひとつ汎用性に欠け、仕事に使うにはちょっと無理があります。ではこの GLYPH ではどうでしょうか。

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PCやMacにはHDMIケーブルでダイレクトに接続ができます。MOVERIOと違い、途中に中継ボックスなどはありませんし、ヘッドセット内にバッテリーが内蔵されているので電源を接続する必要もありません。さらに充電中でも動作しますので、付属のMicroUSBケーブルをPCのUSB端子に繋げばPCから電力供給を受けることもできます。もっとも、内蔵バッテリーで4時間動くので実際には接続する必要はほとんど必要ありません。ともあれ、ケーブル1本で接続が完了し、音を聞くのに別途イヤホンを繋ぐ必要もないので、とてもセットアップが簡単。電源を入れると数秒で使用開始できます。PCからは単なるHDMIのテレビとして認識され、映像と音声信号が伝達されます。

この Avegant GLYPH で要注意なのは、受け付けるHDMI信号が720pまでであること。1080i/1080pの信号を入力すると、表示できない旨を表すエラー画面が表示されてしまいます。とはいえ、ほとんどの出力デバイスは相手先を自動認識して適合する信号を出力しますので、例えばこの MacBook Pro の場合でも接続するだけで問題なく画像表示されます。内部のDLP表示デバイスの解像度も720p (1280 x 720ピクセル)ですので不都合は全くありませんが、後述するように機器によっては720p出力に対応していないものがありますので念のため確認したほうがいいでしょう。

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アイピースから見える表示を iPad のカメラで無理に撮影してみた様子です。ディスプレイ素子がDLP/DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)で、RGBの3色が時分割で表示されるため、どうしてもカメラのローリングシャッターと干渉して色づいた縞模様が見えてしまいます。実際の肉眼ではこのような縞模様はもちろん一切見えません。ただし眼球を動かすとDLPプロジェクタの投影画面を見ているのと同様にカラーブレーキング現象(明るい点が色づいて見える現象)は生じます。ですが表示は非常に鮮明で、それぞれのドットがかなり明確に視認できます。といっても通常の液晶ディスプレイよりは解像度や見えが劣りますので、表示解像度を低め(文字を大きめ)にするといい感じ。これならPCのディスプレイを消して仕事をすることもできます。

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表示部が上下に薄く、また周囲を覆わないので、手元を見ることもできます。感覚的には斜め45度から下は見える感じですので、PCのキーボードやタブレット画面を見るのは十分可能。また、目の周りが覆われないので画面が曇りにくいというメリットもありそうです。

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スマートフォンでも試してみました。Huawei P20 Pro では問題なく 720p の信号が出力され表示されます。USB-CからHDMIへの変換アダプターとしてはもっと小型のものもありますので、それを使うとさらに小型軽量化が可能です。

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P20 Pro にはデスクトップモードがあり、外部ディスプレイにはこのようにPC風の画面を出すこともできます。アプリによってはこのモードでうまく動かないものもありますが、メールの読み書きなどはこちらのほうがやりやすい。このデスクトップモード、接続するディスプレイの解像度によって画面の大きさが変わるようで、1080で接続されてしまうMOVERIO に比べ 720pとなる GLYPH ではアイコンや文字が大きくなり、使いやすい感じです。スマートフォン本体はタッチパッドになるので、bluetoothキーボードがあればちょっとした仕事はできそうです。もちろんデスクトップモードを解除して普通のスマホ画面でも使うことができます。

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GLYPHの特徴として、電源を切っているときでもヘッドホンとして使用できるというものがあります。3.5mmのイヤホンジャックを接続すれば電源を切ったままでも音が鳴ります。そのときにディスプレイ部分を覆うカバーも付属しており、また、レンズも引っ込めることができます。ちゃんとしたヘッドホンに比べ少し装着感は劣りますが、面白いアイディアだと思います。ただし音質は、HDMI経由で聞くよりも悪い感じ。低音が少し強くなりすぎるようです。逆にいうと、HDMI経由のときの音質はなかなかのもので、ヘッドホンとして十分満足行くものですので、ここはちょっと惜しいところ。とはいえ、特に音が小さかったりノイズが乗ったりするわけではないですし、もちろんTV会議等にも問題ありません。

iPad にももちろん HDMI 経由で接続することも出ます。iPad のいいところは、Amazon Prime Video などを視聴している途中にカバーを閉じたり電源スイッチを押して本体の画面を消しても、HDMIには映像信号が流れ続けるところ。ネット経由の映像視聴にはこれが一番便利のように思えました。ただし iPad は(現在のところ)マウス操作ができません。そのため、タッチ操作が必要なときには必ず画面を見る必要があります。次期 iOS ではマウス対応になるようなので、それが使えれば問題なくなるかもしれません。

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カメラも接続して試してみました。手元のカメラのうちHDMI出力があるのは、パナソニックのビデオカメラHDC-TM85, ソニーα7, DSC-TX100V, TX30 などがあります。このうちα7は出力信号が1080に限定されるようで、残念ながら表示ができませんでした。TM85やTX100V, TX30 では問題なく表示ができました。TX100Vを使い、カメラを手元で操作しながら解説するムービーを撮ろうと思って作ってみたシステムが上の写真です。自分がカメラを見ながら操作するような映像が撮れましたが、熱的問題なのかどうしても1カットの動画が5分ぐらいで止まってしまうため、もうすこし検討が必要なようです。なおこの場合カメラが重いので、実際には頭を後ろから支えるバンドを付けないとちょっと不安定になってしまいます。

GLYPH はメディア視聴用のデバイスですが、3D, VR にも一応対応しています。YouTubeにあるようなサイドバイサイドの映像であれば、左耳側のボタンを押すことで3D表示になります。また別のボタンを押すと、GLYPH内部のモーションセンサーの信号を出力することができます。この信号、なんとUSB経由でマウスの動きとして出力されますので、USBを繋いでおけば頭の動きでカーソルを上下左右に動かすこともできます。ちなみに右耳側のボタンではHDMI経由の音量と輝度(3段階)の調整ができます。

総合的に、画質と音質がともによく、接続も簡単で装着感も悪くない、よいデバイスでした。
posted by しんさく at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子モノ

ビデオヘッドセット Avegant Glyph

先日、エプソンのスマートグラスを購入した件についてこのブログに書きました。面白いデバイスなのですが、そもそもの目的(他人に覗かれないPCのディスプレイとしての用途)には画像のぼけが気になります。周囲のシーンが透けて見える光学シースルー式という難しい技術にチャレンジしているから仕方がない部分もあるのですが、実際に使うとなるとちょっと厳しいのは事実。そんななか、別のヘッドマウントディスプレイ(HMD)に良さそうなものがあるのを知り入手してしまいました。

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これは Avegant GLYPH というデバイスで、特徴はほとんど普通のヘッドホンの形をしている点。Oculus のVRゴーグルのように視野を完全に覆って没入感を得るものでもなく、かといって Google Glass や MOVERIO のように周囲環境と画像を同時に見るものでもなく、「ビデオヘッドセット」や「メディアゴーグル」と呼ばれ映像視聴用として企画されたもののようです。Avegant はもともとクラウドファンディングでこのデバイスを企画・開発して売り出したのが始まりのようで、今はより高度なヘッドマウントディスプレイを開発する企業として活動している模様。初出荷からは3年以上も経つデバイスなのですが、いろいろ調べていると多様なHMDの中でも画像のシャープネスがトップクラスらしく、重量バランスもよさそうなので買ってみました。当初は6万円ほどしたようですが、今は2万円ほどで買えるのも手を出す理由になりました。

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デバイスの重量は実測で432gです。前にMOVERIOを買ったときに書いたように重さは気になるところで、装着時の重さもさることながら出張などに持ち歩くことも考えると軽いほどいいのですが、4時間ほどディスプレイを駆動することができるバッテリーが内蔵されているために重めとなっています。しかし絶対的な重さは本格的なヘッドホン(右はオーディオテクニカの名機、アートモニター ATH-A900で、約350g)とそう変わらないということもできます。

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なんといってもこのHMDのいいところは重量バランスです。スマートフォン用と同様の大きさの大きな液晶パネルを用いたHMDに比べ、小さなDLP素子を使って作られているため、前側のディスプレイ部が小型軽量になっています。そのうえ、スピーカ部に回路やバッテリーなど重量物が集められているようで、重心はイヤーパッドの半径内にあります。上の写真は試しに乾電池を立ててバランスがとれるように置いてみたところ。

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装着性を高めるために鼻あては大きさ違いが4種類付属しています。この部品もよくできていて、シリコン状の柔軟な素材の裏から硬い板状のパーツで支えるような構造になっており、快適性が高いです。いずれにしても重量バランスが良いため鼻に重さがかからず負担は軽め。また頭頂部〜後頭部を押さえるバンドも付属しており、これを使うとさらに安定しますが、バランスが良いのと、イヤーパッドを押さえつける力が強いため、バンドや鼻あてがなくてもイヤーパッド部分の摩擦だけで見やすい位置に保持できるぐらいです。

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装着性といえば、光学系が少し傾けられている点も好印象。人間は手元を見て作業することが多いためか、真正面よりも少し下向きを見るほうが楽なようにできているようです。MOVERIOは画面が真正面に現れましたが、これを見るにはまぶたをしっかり見開く必要があったりして楽な視聴がやりづらいところがありました。その点、GLYPHでは画面がやや下寄りに出るので比較的楽になっています。大型のLCDパネルを用いたHMDに比べると光学系が小さく、目の位置合わせは重要になりますが、鼻あてがあるので一旦セットした後はずれることはあまりありません。

光学系が小さいメリットとしては、レンズのピント合わせ機能があること。これによりかなりの近視でも裸眼で映像を見ることができます。ピント合わせはレンズの周りのリングを回す仕組みで、左右の視力が違っていてもそれぞれ独立に調整できます。私は左目が-5.0D、右が-1.5Dぐらいと、両目の視力がかなり違うのですが問題なく裸眼でも使用できました。画面の見かけのサイズもMOVERIOの2割増しぐらいで、映像視聴には大きすぎず小さすぎずといったところ。ヘッドホンに似た見た目を狙ったキワモノのようでいて、実はかなりしっかりできたデバイスでした。PC等を繋いだときの使い勝手等は次のページで紹介します。
posted by しんさく at 22:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子モノ

2019年08月16日

スマートグラスを試してみる

5〜7年ほど前には Google Glass をきっかけにスマートグラスが話題になりました。これは結果的には一般に普及しませんでしたが、次には Oculus のような比較的大きめの液晶パネルを使ったHMD(ヘッドマウントディスプレイ)がブームになり、現在はゲーム用のデバイスとして一定の地位を占めているようです。とはいえ、私はあまりゲームをしないので、体験したことはあれど自分ではあまり購入動機を持っていませんでした。そんな中、突然ですがエプソンのスマートグラス、 MOVERIO BT-30E を買ってしまいました。

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なぜ急にこのデバイスを購入したかというと、1つは思ったより軽量化と高解像度化が進んでいたためです。表示パネルの解像度はいわゆる720p、つまり1280x720ドットで、PCの画面として使ってもなんとか使えなくはないスペック。またグラス部分の重量は69gと軽く、ケーブルの先に取り付けるコントローラーも小さくて軽い(上の写真ではテンプル、つまりメガネのツルの部分にアクセサリのゴムパッドを取り付けており、また、ケーブルの重さも少しかかっているので76gとなっています)。同じ解像度を持つソニーのHMZ-T3は本体が320gあり、さらにプロセッサーユニットも大ぶりで、基本的に自宅に置いて使うことを想定しているようです。OculusやHTCなどのVR用のHMDは高解像度化が進んでいますが 300-500g ほどあり、また普通にPCに繋いでディスプレイ代わりに使えないものも多そう。その点、このBT-30Eは普通にHDMIで繋いでディスプレイとして使えます。

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ではなぜこんなものを買おうと思ったのか。自宅やオフィスでは普通に外付けディスプレイなりノートPC(MacBook Pro)本体の液晶ディスプレイなりを見ればよく、解像度もそのほうがずっと高いです。でも、例えば新幹線では机の位置関係から猫背になってしまって疲れてしまうとか、隣の席から作業内容を覗かれるのがいやだったりして、なんとかならないかと思っていました。あと、・・これはあまり大きな声では言えませんが、学会発表を聴講しているときなど、あまり興味のない発表があったり、急な作業が必要になったときに、外から作業内容が見えないようにしてPCを使いたい場合もあるので、そんなときに使ってみようかと思って買いました。

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ではPCに繋いでディスプレイとして使ったときはどうかというと、やはり解像度の低さも気になりますが、それよりはこのHMD特有の光学系の不完全さが気になりました。パネルのドットが全て鮮明に見えればいいのですが、目の位置によってはところどころ不鮮明になり文字が読めません。上の写真はスマホのカメラでHMDを覗いて撮影したもの。人間の目は目を向けたほうに焦点を自動で合わせるため、この写真よりは鮮明に見えますが、どうしてもはっきり見えない部分が少し残ります。どうも、何度も反射させながら自由曲面レンズ等で像を結んでいるため、単純なレンズを用いたHMDに比べるとどうしても画質が落ちるようです。ただしPCでは文字の大きさを変更できるので、文字サイズが最大となるよう設定すれば使えないことはありません。

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解像度や画質を考えると、PCで仕事に使うよりは、やはり映画・アニメなどの映像作品の視聴に向いているようです。ただし光学シースルータイプのHMDという制約から視野角が狭く、感覚的にはあまり大画面にはなりません。とはいえ本体もコントローラーも小さいので、小型のモバイルバッテリーを併用すればコンパクトなシステムを組むことができます。ただしタブレットやスマホは画面の表示を見ながら操作することが前提で、画面にはマウスポインタのようなものは表示されないので、HMDの画面を見ながらタッチ操作することは難しいです。その点このBT-30Eは光学シースルータイプであり周囲環境が透けて見えるうえ、上下に薄く、下から手元が見えますので、グラスを外さずに操作できるのはいい点かもしれません。

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さらにこのBT-30EはUSB Type-Cによる接続にも対応している点が美点としてあげられます。スマホやPCのUSB Type-Cの端子が映像出力を可能にするDisplayPort Alternate Mode に対応している必要がありますが、そうであれば上の写真のようにUSB ケーブルで接続するだけで電源供給も可能となりモバイルバッテリーも不要になります。これだと立ったまま、移動しながらの映像視聴も可能。そんな事が必要かどうかは別として・・・

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今回接続してみた HUAWEI P20 proはPCモードがあります。外部にディスプレイを接続するとPCのような横長画面になり、出力される映像にはマウスポインタが表示されます。スマホの画面がタッチパッドになり、これはノートPCと同じような相対移動(パッドをこするとポインタが移動していく)タイプ。ですから、映像を見ながらの操作も可能です。

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ただし、P20 proのPCモードはかなり大画面のディスプレイを前提としていて、文字が小さくなってしまいます。Chromeでウェブページを表示したら上のような状態になってしまい使い物になりません。文字サイズを調整できるアプリでないと実用的には使えないと思います。

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P20 pro ではPCモードの解除もでき、その場合はスマホの通常の画面がそのままミラーリング出力されるので、文字の大きさも好適で実用的になります。ただし横画面に対応していないアプリでは、視野の真ん中に縦長に映像が表示されるだけになるので見づらいです。上の例(google map)のように横長表示が可能なアプリではかなり実用性は高いと思います。これだけですと前述の iPad と同様に操作はスマホ側の画面を見ながらになってしまいますが、マウスを接続すると画面にマウスポインタが表示されるので、bluetoothのマウスなどがあるといいかと思います。このUSB-Cでの接続だけで良ければ、現在BT-30CというUSB-C専用の機種が発売されており、少し安価になっているので良いと思います。

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持ち歩きを前提としたケースが付属しています。容量には余裕があるので、関連する短いケーブルやアクセサリの減光シェード、小型のモバイルバッテリーなどを一緒に入れることもできます。ただしケースそのものの大きさは結構大きく,上の写真では下敷きになっているのが13インチタイプのMacBook Proですのでその大きさが想像できるかと思います。

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届いたときの外箱はこんなふうなシンプルなものです。エプソンとしては一般売りではなく、光学シースルーであることを活用したビジネス利用を主眼にしているようです。単なる映像視聴ではなく、他のなにかの作業の補助用に使うのもいいのかもしれません。例えばカメラを手元で操作しながら解説するムービーを撮影するようなとき、ファインダにうまく対象が移っているか確認しながら操作するのは難しいですが、このHMDをビデオカメラのファインダとして使えば可能かも。ちょっと、他の活用方法を考えてみたいと思います。
posted by しんさく at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子モノ