2018年01月08日

Light L16 の暗所性能

2018.7.26追記 Light L16 が国内販売開始との報道がありますが,ヴェルテは過去,日本未導入ガジェットの輸入販売で多数のトラブルを起こしています.「松川 ゲッコー」等で検索され,適切に判断されるよう強くおすすめします.

参考
http://eps-r.hatenablog.com/entry/2017/11/16/welte
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/shop/1507605776


Light L16 は16個ものカメラを備え,高解像度の写真を撮影したり,背景を事後的にぼかしたり出来ます.しかし,個々のカメラモジュールにはスマートフォン用の画像センサを利用しており,フルサイズセンサに比べると面積は 1/50 ほどしかありません.それでは暗所性能(高感度画質)は低いのでしょうか.そこで,通常の家庭の締め切った屋内程度の明るさでテストしてみました.シャッター速度 1/60秒,絞りF2.8でISO500前後というそこそこの暗さです.Light L16 での撮影結果をまず示します.

L16_00159.jpg

これぐらいの暗さなら,比較的スッキリした写真が撮影できます.

つぎに,比較対象となるカメラとして,解像度テストと同様にフルサイズセンサを搭載したカメラ2機種(Nikon D800E, Sony α7)に,ちょっと古いのですが明るさを優先して Nikkor AF 35-70mm F2.8D を装着して撮影しました.絞り値はF2.8開放,F5.6, F14 の3通りです.解像度の違うカメラ同士を画素等倍で比較すると不公平なので,すべての画像を幅6000画素にリサイズしてあります.また,すべての画像は特定の位置の画素値が同じになるように現像しており,また,後に述べますが,ノイズレベルが同等になるようにノイズ除去処理を施してあります.チャート中央部の拡大写真は以下の様なものです.

c1.jpg

絞り開放ではレンズ収差のため甘い像となっていますが,F5.6では非常にシャープとなっています.しかしF14まで絞ったものでは,ノイズ除去処理の影響もあり,また甘い像になっています.

次に,もっとも高感度画質が良いであろう,Nikon D800E, 絞りF2.8 の時の写真全体を示します.

DSC_2969.jpg

サムネイルを見ただけで分かる,L16 での撮影結果との違いが2点あります.1つは開放絞りのため,周辺減光が生じていること.もう1つは,被写界深度が浅いことです.Light L16 の絞りはF2またはF2.4 ですが,撮像素子が小さいため,被写界深度はF15相当になります.チャートよりも奥においた温度計の部分を切り出した写真は次のようになっています.

c3.jpg


一目瞭然で,計算通りF14程度に絞らないと Light L16 と同等の被写界深度にはなりません.しかしそうすると,必然的にカメラに入る光量が減少してしまいます.F2.8 のときに比べると,F14 だと 1/25 にも減少してしまうのです.それによって,同じシャッター速度を保つためには感度を上げざるを得なくなり,ノイズが増えていきます.

c2.jpg

この写真は引き伸ばし機のヘッドの一部の拡大です.ちりめん塗装の間に樹脂製の帯がありますが,この部分のノイズレベルができるだけ同等となるようにノイズ除去処理の強度を調整してあります.F2.8の例では,被写界深度の浅さにより少しぼけてしまっています.それに対し,F5.6 では被写界深度が深くなりちりめん塗装の模様がはっきりしてきます.しかし,F14 に絞った例では,非常に強力なノイズ除去処理を施す必要があるため,これによって上下のちりめん塗装の模様がノイズと誤認されてしまい,のっぺりとしたテクスチャになってしまいました(それでも,黒色の帯部分にはまだかなりノイズが残っています).それに対して Light L16 では塗装部分のテクスチャも残しつつ,帯の部分もきれいに撮影できています.

なぜスマートフォンのセンサなのに暗所性能が高いのでしょうか?実はそもそも,スマートフォン用センサの面積あたりの性能(量子効率,低ノイズ性等)は低くないのです.しかし全体の大きさが小さいために,同じ画角・同じF値のレンズでも口径が小さくなってしまい,レンズに入る光子の数が少なくなります.結果として,1つ1つの画素に入る光子の数も少なくなってしまうのです.ISO100 の撮像素子が適正露出で露光されている時,スマートフォン用撮像素子の一辺 1μm の画素にはたった400個程度しか光子が届きません.それに対し,フルサイズセンサの画素は一辺5μmほどあり,同じISO100でも光子の数が25倍,ノイズレベルは 1/5 となります.これがフルサイズセンサで撮影した画像の滑らかさを生み出しているわけですが,同時にレンズが大きくなることで,被写界深度が浅くなってしまいます.結局,被写界深度を確保しつつ感度を上げていくことには,光が粒子である以上,(普通のカメラでは)限界があるのです.

画像のノイズは主に,この光子数の少なさに起因するノイズ(ショットノイズ)と,センサの熱エネルギーが生じるノイズ(熱雑音)の2つです.ショットノイズは上記の通りレンズに入る光子数で決まってしまうので,口径の大きな,被写界深度の浅いカメラほど有利になります.しかし熱雑音は,センサが大きいほど不利になります.フルサイズセンサを搭載したカメラは(画素が大きくショットノイズに影響されにくいために)ISO感度を上げやすいメリットがありますが,1画素あたりの光子数が同じだと,熱雑音の影響が強くなります.-18度ぐらいに冷やすと非常に良くなりますが,常温では,同じ被写界深度を得るためにはかえって不利なのです.

Light L16 では多数のカメラを備えているために,同じ箇所を異なるカメラで同時に撮影することが出来ます.これを重ね合わせることでノイズを減少させることも出来ます.大口径レンズが多くの光子を捉えるのと同様のノイズ低減効果がありますが,1つのレンズで光を集めるのとは異なり,小さな領域ごとに位置合わせを行うことで被写界深度を浅くすることなくノイズ低減ができます.他には,複数の(被写界深度の浅い)レンズで,互いに異なった距離にピントを合わせ,それらを合成して元の画像よりも被写界深度が深い画像を生成する「フォーカススタック」という技術もあります.被写界深度の伸長は,ぼけ生成とは逆の技術ですが,これもまた「コンピュテーショナルフォトグラフィ技術」の1つの有望な用途だと言えるでしょう.
タグ:Light L16
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2018年01月07日

Light L16 の被写界深度調整

2018.7.26追記 Light L16 が国内販売開始との報道がありますが,ヴェルテは過去,日本未導入ガジェットの輸入販売で多数のトラブルを起こしています.「松川 ゲッコー」等で検索され,適切に判断されるよう強くおすすめします.

参考
http://eps-r.hatenablog.com/entry/2017/11/16/welte
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/shop/1507605776


Light L16 の16個のレンズは全て,開放絞りに固定されています.スマートフォンのカメラでも同様に,基本的に絞りの調整は出来ません.なぜなら撮像素子が小さいため,絞りを絞っても画質が低下するだけでメリットがないことと,絞りを絞らなくても被写界深度が十分に深いためです.また同時に,背景を大きくぼかした写真を撮影することは出来ません.

しかし Light L16 には多数のカメラが備わっているため,それらを用いて「ステレオ計測」することで,被写体の形状を求めることが出来ます.これにより事後的に背景をぼかすような処理ができます.この種の機能は以前に紹介した LYTRO 社のカメラの特徴でしたが,最近では iPhone の上位モデルなど複数のレンズ(カメラ)を備え,やはり同様にステレオ計測を用いて背景をぼかすものが一般化してきました.

L16_00115F15.jpg

上の写真は Light L16 で撮った写真をそのまま出力したもので,人工的なぼけ付与はされておらず,もっとも被写界深度が深いものです(フルサイズセンサ搭載のデジタルカメラにおいて,75mm F15 相当です).これを専用ソフト Lumen を用いて処理することができ,以下のような写真(75mm F2相当まで可能)を生成することが出来ます.

L16_00115F2.jpg


背景が全体的にぼけているだけでなく,被写体上でも奥行きに応じて徐々にぼける効果が得られています.ただし,主要被写体の間からわずかに覗く背景など,どうしてもうまく距離計測ができない部分が生じ,そこでは不自然なぼけとなることがあります.

lumen.jpg

専用ソフト Lumen の画面では,左上のスライドバーが被写界深度(絞りのF値)の調整用で,その下にあるボタンがぼけ効果の修正用の機能です.距離計測を間違った領域を指定・修正することが出来ますが,まだソフトウェアがベータ版であるためか,必ずしも思い通りに修正できるようにはなっていません.

ソフトウェアはこれからも改善が続けられるので,このぼけ制御機能も高性能化していくと思われます.2つしかカメラを搭載していないスマートフォンよりもずっと高精度にぼけ付与することが出来ますが,本当のレンズで撮影したものと区別がつかない程度にきれいにぼかすのは難しいだろうと思います.雑然とした背景をぼかしてSNSに投稿したいような場合に向いている機能といえるでしょう.
タグ:Light L16
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Light L16 の高解像度性能

2018.7.26追記 Light L16 が国内販売開始との報道がありますが,ヴェルテは過去,日本未導入ガジェットの輸入販売で多数のトラブルを起こしています.「松川 ゲッコー」等で検索され,適切に判断されるよう強くおすすめします.

参考
http://eps-r.hatenablog.com/entry/2017/11/16/welte
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/shop/1507605776


16 個のカメラを備え,それらで同時に撮影したデータから1つの画像を作り出す,Light L16.まずはその最大のセールスポイントである,高解像度性能について調べてみました.

まずは室内にテストチャートを置いて撮影です.無謀にも,手持ちのカメラの中で最も解像度の高いフルサイズセンサ搭載の2台(Nikon D800E, Sony α7)と比較してみました.焦点距離はいずれも35mm相当で,比較対象のカメラでは絞りをF6.3〜F8に絞ってレンズの性能を最大限に引き出せるようにしています.撮影したシーンは以下のようなものです.


このシーンを3台のカメラで撮影し,中央のチャート部分を等倍で切り出して並べてたものが以下の写真です.

comp.jpg

Light L16の出力画像はなんと5112万画素もあり,等倍で切り出すともっとも拡大率の高い画像になります.解像感はα7(2400万画素)を上回り,3600万画素の D800E とほぼ同等のようです.またチャートの細かな部分では,D800E, α7 の画像でモアレ,偽色の発生が見られますが(このことはとりもなおさず,レンズの性能がセンサの性能以上に達していることを示しています),L16 ではほとんど見られません.

Light L16 はなぜこんなに解像度が高いのでしょうか?このカメラは28mm相当(5個),70mm相当(5個),150mm相当(6個)の合計16個の1300万画素のカメラを備えており,今回のように35mm相当の画角で写真を撮った場合,28mmの5個のカメラで撮った写真に加え,70mm相当のカメラが画面を4つに分割したそれぞれの領域を撮影します(残った1つは中央を撮影します).これらの画像を合成することで高解像度画像を生み出すわけです.1300万画素の写真を4つ使うと5200万画素になるわけですが,実際にはただ繋ぐのではなく,28mmの広角カメラの画像を基本とし,70mmのカメラから得た細部の情報をそれに加えるような処理をしているようで,継ぎ目が目につくことはありません.

comp2.jpg

さらに画像を見ていくと気づく点として,L16の写真がもっとも被写界深度が深いこと,シャッター速度が速いことがわかります.Light L16 のレンズには絞りがなく,F2固定(150mmのみF2.4固定)となっています.ただし撮像素子がスマートフォン用の小さなもので,フルサイズセンサに比べ 13%(面積では2%)しかありません.ですので,被写界深度としてはフルサイズセンサのカメラに換算してF15相当となっており,画像データ(EXIF)にもそのように記録されています.このことにより,撮影例ではα7 (F8), D800E(F6.3) よりも被写界深度が深いのです.しかし実際にはF2のレンズなので,同じシーンを同じ感度(今回の写真は全てISO100)で撮影するとシャッター速度が相対的に速くなります.被写界深度とシャッター速度の両立を図りやすいカメラだといえます.

画像のノイズも,この写真ではあまりフルサイズセンサと遜色ありません.感度を上げていないこともありますが,複数の画像を重ね合わせることによってノイズが均され,ノイズ低減される効果があるようです.

最後に,D800E, α7 で撮影した画像を掲載しておきます.



タグ:Light L16
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