2018年01月08日

Light L16 実写の感触と,ひとまずのまとめ

入手してから1週間でざっと試写,テストを行いました.ここでは実写結果を幾つか挙げつつ,ひとまずのまとめをしたいと思います.

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背景をぼかした例(80mmF5.6相当)

現在のところ,Light L16 のセールスポイントは,高解像度な写真を撮影できることと,撮影後に被写界深度を調整できることの2点だといえます.被写界深度の調整は前に紹介した LYTRO のカメラでも可能でしたが,出力される写真の解像度はかなり低く,SNS等への投稿には使えても,メインのカメラとしてはとても満足出来るものではありませんでした.それに対し,Light L16 では高い解像度のまま背景をぼかすことが出来ます.輪郭の形状が複雑な被写体や,髪の毛やロープのように細いもの,無効が透けて見えるものではうまく動作しないことが多いのですが,乱雑な室内の写真等で背景を省略してSNSに投稿するような場合にはそこそこ使えるのではないかと思います(手作業で背景をぼかしたりしている人もいるぐらいですので).ソフトウェアに対する依存度が高いので,これからの発展に期待がかかります.

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高解像度な写真の撮影については,多くの人にとって過剰とも言える性能があるのではないかと思います.そもそもこんなに解像度の高い写真が必要なことはあまりないのですが,解像度の高さ(画素数の多さ)は余裕に繋がります.縦・横それぞれ半分の解像度に落としても1300万画素程度の画素数となりますが,そうすると画素ごとの画像のキレ(画素値の独立性)は大変高くなりますし,ノイズも軽減されます.この場合でもやはり,髪の毛や木々の枝の向こうに別の建物が写っている場合など,複雑な形状を持つ部分ではうまく合成ができない場合がありますが,元となる1300万画素の広角画像を破綻させるような処理は行われないので,一定の画質は確保されており,あまり不安なく使用できます.

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では,このカメラはずばり「お勧め」なのでしょうか?現状では万人に勧められるわけではありません.画像はPC上で処理するのが前提で,カメラ内部で生成される画像は低解像度の画像に限られ,このカメラを使うメリットがありません.画像ファイルは1カットあたり150MBほどあり,ディスク容量を圧迫する上,専用ソフトでの処理にもかなり長い時間(分単位)がかかります.得意な被写体とそうでないものとの画質差が大きい点や,高画質が得られる画角が限定されること(35mm, 75mm 時に最も高画質な画像が得られます),薄型ではありますが大柄で,思ったほど軽くないこと,などもあります.フルサイズ一眼レフやミラーレス一眼,1インチセンサを搭載した高級コンパクトデジタルカメラ等を一通り所有して使っているが,それらでは飽き足らない人に向いています.これらの「既存のカメラ」の穴を埋める(かもしれない)カメラという認識が現状としては正しいと思います.

海外では「DSLR(デジタル一眼レフ)キラー」などと誇張して報じられたこともあって,厳しいレビュー記事も多く見られます.従来の物差しで図るとまだまだ,よちよち歩きの赤ん坊だと思いますが,個人的には,このような変わったカメラがあることが嬉しく,また応援したいと思っています.

最後に,得意とするもの,不得意な条件,などについてまとめておきます.

【得意な条件】

  • 遠景の風景.カメラの配置による見え方の違い(視差)がなく,画像の合成がうまくいきます.明るい昼間だけでなく,天気の悪い日や夕暮れぐらいまでならISO感度が上がりにくく,画質の低下もありません.
  • 少し暗いところでの中望遠域での撮影.フルサイズ一眼レフ等では被写界深度が浅くなりすぎるケースがありますが,それに対してピントの深い写真が撮影しやすい.スマートフォン等では広角レンズでの撮影しかできないし,コンパクトデジタルカメラでは望遠にすると暗くなるものが多くなりやすい.それに対し,小型センサ用の明るい単焦点望遠レンズを備えたカメラは珍しく,意外な強みと言えます.


【不得意な条件】

  • 複雑な形状を持った物体.カメラの位置により見え方が違うため,広角画像に対し望遠画像がうまくマッチせず,解像度が低いまま出力されてしまう領域が発生します.近距離ほど顕著になります.
  • 非常に暗い場所での撮影.画像にノイズが乗ることにより広角画像と望遠画像の対応付けができなくなり,やはり解像度向上効果が得られなくなります.
  • 被写界深度を調整する際に,被写体に細長いものなどがあると,それが欠けたり,その近辺の背景が不自然にシャープになったりします.
  • 焦点距離(画角)は28-150mmの間で自由に設定できますが,もっとも画質がよいのは35mmと75mmの2箇所です.それより望遠寄りにしても周囲がクロップされるだけで解像度は上がりませんので,ズームする意味がほとんどありません(搭載されているレンズが全て,単焦点レンズなので,ある意味,当然の現象ですが).また28-35mm, 70-75mm の間では,画像の周囲部分を望遠レンズがカバーしないため,周辺部分に解像度が低い領域が現れます.中央の35mmないし75mmの画角内はシャープなので,35mm, 75mm までズームアップしなくても切り出せば同じことなのですが,拡大すると不自然に見えることがあります(縮小すると境界線は分からなくなります).1例としてこちらの写真(28mm相当)をご覧ください.


撮影例をこちらにまとめているので,よければご覧ください.
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Light L16 の暗所性能

Light L16 は16個ものカメラを備え,高解像度の写真を撮影したり,背景を事後的にぼかしたり出来ます.しかし,個々のカメラモジュールにはスマートフォン用の画像センサを利用しており,フルサイズセンサに比べると面積は 1/50 ほどしかありません.それでは暗所性能(高感度画質)は低いのでしょうか.そこで,通常の家庭の締め切った屋内程度の明るさでテストしてみました.シャッター速度 1/60秒,絞りF2.8でISO500前後というそこそこの暗さです.Light L16 での撮影結果をまず示します.

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これぐらいの暗さなら,比較的スッキリした写真が撮影できます.

つぎに,比較対象となるカメラとして,解像度テストと同様にフルサイズセンサを搭載したカメラ2機種(Nikon D800E, Sony α7)に,ちょっと古いのですが明るさを優先して Nikkor AF 35-70mm F2.8D を装着して撮影しました.絞り値はF2.8開放,F5.6, F14 の3通りです.解像度の違うカメラ同士を画素等倍で比較すると不公平なので,すべての画像を幅6000画素にリサイズしてあります.また,すべての画像は特定の位置の画素値が同じになるように現像しており,また,後に述べますが,ノイズレベルが同等になるようにノイズ除去処理を施してあります.チャート中央部の拡大写真は以下の様なものです.

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絞り開放ではレンズ収差のため甘い像となっていますが,F5.6では非常にシャープとなっています.しかしF14まで絞ったものでは,ノイズ除去処理の影響もあり,また甘い像になっています.

次に,もっとも高感度画質が良いであろう,Nikon D800E, 絞りF2.8 の時の写真全体を示します.

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サムネイルを見ただけで分かる,L16 での撮影結果との違いが2点あります.1つは開放絞りのため,周辺減光が生じていること.もう1つは,被写界深度が浅いことです.Light L16 の絞りはF2またはF2.4 ですが,撮像素子が小さいため,被写界深度はF15相当になります.チャートよりも奥においた温度計の部分を切り出した写真は次のようになっています.

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一目瞭然で,計算通りF14程度に絞らないと Light L16 と同等の被写界深度にはなりません.しかしそうすると,必然的にカメラに入る光量が減少してしまいます.F2.8 のときに比べると,F14 だと 1/25 にも減少してしまうのです.それによって,同じシャッター速度を保つためには感度を上げざるを得なくなり,ノイズが増えていきます.

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この写真は引き伸ばし機のヘッドの一部の拡大です.ちりめん塗装の間に樹脂製の帯がありますが,この部分のノイズレベルができるだけ同等となるようにノイズ除去処理の強度を調整してあります.F2.8の例では,被写界深度の浅さにより少しぼけてしまっています.それに対し,F5.6 では被写界深度が深くなりちりめん塗装の模様がはっきりしてきます.しかし,F14 に絞った例では,非常に強力なノイズ除去処理を施す必要があるため,これによって上下のちりめん塗装の模様がノイズと誤認されてしまい,のっぺりとしたテクスチャになってしまいました(それでも,黒色の帯部分にはまだかなりノイズが残っています).それに対して Light L16 では塗装部分のテクスチャも残しつつ,帯の部分もきれいに撮影できています.

なぜスマートフォンのセンサなのに暗所性能が高いのでしょうか?実はそもそも,スマートフォン用センサの面積あたりの性能(量子効率,低ノイズ性等)は低くないのです.しかし全体の大きさが小さいために,同じ画角・同じF値のレンズでも口径が小さくなってしまい,レンズに入る光子の数が少なくなります.結果として,1つ1つの画素に入る光子の数も少なくなってしまうのです.ISO100 の撮像素子が適正露出で露光されている時,スマートフォン用撮像素子の一辺 1μm の画素にはたった400個程度しか光子が届きません.それに対し,フルサイズセンサの画素は一辺5μmほどあり,同じISO100でも光子の数が25倍,ノイズレベルは 1/5 となります.これがフルサイズセンサで撮影した画像の滑らかさを生み出しているわけですが,同時にレンズが大きくなることで,被写界深度が浅くなってしまいます.結局,被写界深度を確保しつつ感度を上げていくことには,光が粒子である以上,(普通のカメラでは)限界があるのです.

画像のノイズは主に,この光子数の少なさに起因するノイズ(ショットノイズ)と,センサの熱エネルギーが生じるノイズ(熱雑音)の2つです.ショットノイズは上記の通りレンズに入る光子数で決まってしまうので,口径の大きな,被写界深度の浅いカメラほど有利になります.しかし熱雑音は,センサが大きいほど不利になります.フルサイズセンサを搭載したカメラは(画素が大きくショットノイズに影響されにくいために)ISO感度を上げやすいメリットがありますが,1画素あたりの光子数が同じだと,熱雑音の影響が強くなります.-18度ぐらいに冷やすと非常に良くなりますが,常温では,同じ被写界深度を得るためにはかえって不利なのです.

Light L16 では多数のカメラを備えているために,同じ箇所を異なるカメラで同時に撮影することが出来ます.これを重ね合わせることでノイズを減少させることも出来ます.大口径レンズが多くの光子を捉えるのと同様のノイズ低減効果がありますが,1つのレンズで光を集めるのとは異なり,小さな領域ごとに位置合わせを行うことで被写界深度を浅くすることなくノイズ低減ができます.他には,複数の(被写界深度の浅い)レンズで,互いに異なった距離にピントを合わせ,それらを合成して元の画像よりも被写界深度が深い画像を生成する「フォーカススタック」という技術もあります.被写界深度の伸長は,ぼけ生成とは逆の技術ですが,これもまた「コンピュテーショナルフォトグラフィ技術」の1つの有望な用途だと言えるでしょう.
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2018年01月07日

Light L16 の被写界深度調整

Light L16 の16個のレンズは全て,開放絞りに固定されています.スマートフォンのカメラでも同様に,基本的に絞りの調整は出来ません.なぜなら撮像素子が小さいため,絞りを絞っても画質が低下するだけでメリットがないことと,絞りを絞らなくても被写界深度が十分に深いためです.また同時に,背景を大きくぼかした写真を撮影することは出来ません.

しかし Light L16 には多数のカメラが備わっているため,それらを用いて「ステレオ計測」することで,被写体の形状を求めることが出来ます.これにより事後的に背景をぼかすような処理ができます.この種の機能は以前に紹介した LYTRO 社のカメラの特徴でしたが,最近では iPhone の上位モデルなど複数のレンズ(カメラ)を備え,やはり同様にステレオ計測を用いて背景をぼかすものが一般化してきました.

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上の写真は Light L16 で撮った写真をそのまま出力したもので,人工的なぼけ付与はされておらず,もっとも被写界深度が深いものです(フルサイズセンサ搭載のデジタルカメラにおいて,75mm F15 相当です).これを専用ソフト Lumen を用いて処理することができ,以下のような写真(75mm F2相当まで可能)を生成することが出来ます.

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背景が全体的にぼけているだけでなく,被写体上でも奥行きに応じて徐々にぼける効果が得られています.ただし,主要被写体の間からわずかに覗く背景など,どうしてもうまく距離計測ができない部分が生じ,そこでは不自然なぼけとなることがあります.

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専用ソフト Lumen の画面では,左上のスライドバーが被写界深度(絞りのF値)の調整用で,その下にあるボタンがぼけ効果の修正用の機能です.距離計測を間違った領域を指定・修正することが出来ますが,まだソフトウェアがベータ版であるためか,必ずしも思い通りに修正できるようにはなっていません.

ソフトウェアはこれからも改善が続けられるので,このぼけ制御機能も高性能化していくと思われます.2つしかカメラを搭載していないスマートフォンよりもずっと高精度にぼけ付与することが出来ますが,本当のレンズで撮影したものと区別がつかない程度にきれいにぼかすのは難しいだろうと思います.雑然とした背景をぼかしてSNSに投稿したいような場合に向いている機能といえるでしょう.
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