2020年06月09日

ホバークラフトを作ろう(3)

ホバークラフト、まだ浮上も推進もなんとかやっと、というところですが、とにかくラジコンとして動くようにしてしまいます。スロットル制御もそのうちつけるつもりですが、今のところ必要ない状況なので、方向だけを変えられるようにします。



ホバークラフトは浮上するので、水中に舵を置くことは出来ません(それだと陸上で走行できません)。舵のかわりに飛行機のような方向舵を使えば良いのですが、単なる方向舵だけだとかなりの速度で動いていないと向きが変えられないので、普通は推進ファンの直後に方向舵を付けます(ファンボートやエアボートといわれるプロペラ推進の船も同様です)。もう1つの方法は推力偏向による方法で、要するにファンまたはエア吹出口の方向を変えてしまう方法です。360度グルグルと回るものもありますが、効率が下がってしまいがちなので、まずは±35度ほどノズルの向きが変えられるものを設計しました。ついでに根元部分(マニフォールド)には、浮上用のエアが取り出せる口も付けておきます。

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そもそも、このプロジェクトの目的の1つは3Dプリンタによるものづくり例を作ってみることでした。研究室の新メンバーによるプロジェクトの他に、大学院生向けの演習授業でも3Dプリンタのためのモデリングを演習課題に設定していることもあり、現物合わせでもきっちりと計測すればちゃんと意図通りに組み立てられることを示したい。今回取り付ける部品は4つあり、リーフブロワー本体の吹出口、ホバークラフトへの配管の他に、偏向ノズルに力がかかってもスムーズに動くように軸に挿入するボールベアリングと、駆動用のサーボがあります。サーボとの接続部分は、ホーンと呼ばれるサーボの軸に取り付ける角がピッタリとはめ込めるような造形にしました。また、反対側にはボールベアリングを押し込める寸法にします。ネジはM3を使い、タップでねじ切りをすることにしました。組み立ての関係で3Dプリンタで出力するパーツは3つです。

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偏向ノズルを組み立てたものを、リーフブロワーとホバークラフト本体に取り付けたところです。いずれの部分の嵌合もピッタリで、無事、見本としての役目を果たせそうです(来週の講義で例として見せる予定になっています)。



時間帯の都合でまだエンジンを掛けての動作確認はしていませんが、無事に小気味よく遠隔操作できることを確認。あとはこれで、スムーズに浮上してそれなりの加速力がでてくれればいいのですが・・
posted by しんさく at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

ホバークラフトを作ろう(2)

前回、浮上に失敗した、スポンジ式のスカート。これはだめだということで、まずは室内で実験をしてみることにしました。手近にあった梱包材の薄い発泡スチロールフィルム、とても裂けやすくて常用には無理ですが、確認すると空気は透過しないようですので、まずは少し余裕をもたせてかぶせ、ガムテで止めてみます。



室内ではエンジンは使えないので、ドライヤーで実験。あっけなく浮上しました。少し余裕がありそうなので2Lのペットボトルやドライヤー本体を載せましたがまだ滑ります。ペットボトル2本は無理な模様。自重を合わせて3.2kgは浮上しました。底面の面積や、ドライヤーの平均的なスペック(風速 15-20m/sec 程度、底面積0.2m2)の計算通りです。やっぱりさすがにスカート式は伊達ではないのだな。とあたりまえのことに納得しつつ、少しほっと胸をなでおろしました。



なんとかなりそうなので翌日さっそく、またリーフブロワーを載せてみます。浮きました。水はけのための僅かな傾斜でも下がっていきます。エンジン回転数をさほど上げなくても浮くようなのでなんとかなりそうです。しかし最初の映像でも同様でしたが、スカートの作りがいい加減で左前方が膨らみすぎているようで、少しそのあたりの接触を感じます。いかにスカートを均等に張るかが重要なようです。

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とりあえずのスカートではうまくいったので、さっそく、もうちょっとマシなものを作ってみることに。ホームセンターで物色したところ、薄手のテーブルクロスが柔軟かつ空気を通さず、糸入りで耐久性もありそう。長さあたりの値段も安いので買ってみました。さらに本体上面に目隠しを兼ねた4mmのベニア板を取り付け。底面は圧力損失を下げるため、上の写真のような構造にしました。スカートがちぎれにくいようにアルミ板の角を丸めたりも。スカートとベニア板を合わせて自重は2kg(リーフブロワー除く)になりましたが、ドライヤーの実験では2kgのペットボトルも浮いたので、合計4kgまでは浮上できたことになります。



そして試運転です。今回はパイプの取り付け口に穴を開けて、トイレットペーパーの芯をとりあえずガムテで取り付けてノズルにしました。動かしてみたところ・・・微妙に前進はしますがすごく遅いです。リーフブロワーはスペック通りの性能が出ていたとしても、全風力を推進に使って推力はたかだか 1kgf 少々で,加速度は 0.2G にも足りません。風力を浮上にかなり振り分けていること、ちゃんとノズルが出来ていないことに加え、まだ底でスカートを引きずっていることもあってこんな速度になってしまっています。この対策はいくつかアイディアがあるのですが、それはさておき、まずは偏向ノズルを付けてラジコンとして操作できるのをまずは優先したいと思います。
posted by しんさく at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

2020年06月08日

ホバークラフトを作ろう(1)

突然ですが、エンジン式のラジコンホバークラフトを作りはじめました。

もとはといえば昨今のコロナウイルスによる Stay Home が影響しています。職場の研究室も活動停止になり、新しいメンバーもまだ初顔合わせすら出来ません。しかたないのでオンラインで進めながら、当面の課題として、プログラミングでも電子工作でも3Dプリンタでも何でも良いので、夏までに「作ってみた」的な活動を行って発表会をすることになりました。しかし、好き放題に言うだけではどうも締まりが出ないし、なにより自分から見本を見せねば・・というよりも実のところ、言っているうちに自分でもなにか作ってみたくなり、しかも自分のホームグラウンドでなく、ちょっと横道に逸れた方面で新しいことに挑戦したくなりました。

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そんな中で白羽の矢が立てられた、というか、作ってみたくなったのがホバークラフトです。その昔、小学生時代に、発泡スチロールの箱にプロペラのついたモーターと電池を載せ、浮上させて遊んでいたことがありました。また同じ頃、大きいお兄さんが近所の池でエンジン式のラジコンボートを走らせており、その速さと迫力にびっくりしたことも心のなかに残っています。また調べてみると、リーフブロワー(落ち葉を吹き飛ばす農機具)で人が乗れるホバークラフトが作れることが国内外で多数紹介されており、これならなんとか作れそう。ラジコン用の小さなエンジンも多数売られていますが、値段が結構高い上、燃料も特殊だし、燃料タンクやスターターモーター、グロープラグスターター、プロペラなど付属品を買い揃える必要があります。その点、農機具なら単体ですぐに動かせるし、ファンを付ける必要もなく、羽根への接触、やけどの危険もありません。それじゃ1つ作ってみるか、と、リーフブロワー単体で浮上と推進ができる構造をいくつかラフスケッチしてみたのが上の汚い落書きです。

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リーフブロワーを載せるボード部分は面積を大きくすれば人も浮上させられるようですが、そのためにはかなり大きくなります。気軽に遊ぶためには自分の車(ボクスター)に無理なく積めることも重要で、いろいろ検討した結果、少し面積の小ささと重心バランスに不安がありますが、2,000円ほどで売っていたボディーボードを調達。ボードはWeb上では「厚さ5cm」とあり、実際にそれぐらいの厚みがありましたので、計算上はエアが停止しても沈没はしません(リーフブロワーの重量は約5kgで、ボードの体積は約15L)。他に2chのプロポ・サーボのセットも購入しました。サーボの1つは方向舵、もう1つはスロットルの制御用に使う予定です。

parts2.jpg

リーフブロワーは、飽きてもつぶしがきくよう、単なるブロワーではなく吸込口とダストバッグを付けて掃除機(バキューム)にもできるタイプを調達。26cc で、本当かどうかわかりませんが、スペック的には風量 7.8m3/sec, 風速75m/sec だそうです。他にホームセンターで、リーフブロワーがうまく固定できそうな金具類(厚さ1mmと2mmのアルミ板やゴムバンド)などを買ってきました。また配管用に柔軟性のあるパイプが必要でしたが、これが意外と問題で、良い太さのものが売られておらず、やむなく購入したのが流しの排水管のパーツ。ちょっと直径が細すぎるので、最初の図の右の設計(ブロワの出口を前に向け、パイプを底に通すもの)では圧力損失が大きくなると判断し、左の分岐タイプでまずはやってみることにしました。

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まずは固定方法を確立した上で、どんな感じか確認してみよう、と、ボードにアルミ板を取り付け(下が1mm、上はバンドでリーフブロワーを固定するために2mmのアルミ板を使用しました)、穴を開けて配管を通しました。エンジン始動。結果は、・・・浮上しませんでした。計算上(ブロワの出口の圧力と底面積の関係)では十分なはずなのですが、うまく滑りません。さすがにこの「すき間テープ」では気密性と接触抵抗のバランスが取れないようで、ちゃんとスカートを作る必要があるようです。確認するとスポンジ状の部分は少しずつ空気を通してしまうものでした。実は当初は、あわよくば「ペリフェラルジェット式」(船体周辺部から内向きに空気を吹き込むことでスカートを不要とする方式)に挑戦しようかとも思っていたのですが、それどころではないようです。パワフルなエンジンだとこんな手抜きでもそれなりに浮くだろうと思った自分が甘すぎました。次回に続く。
posted by しんさく at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン