2020年06月11日

ホバークラフトを作ろう(4)

前回の実験では全然前に進まなかったホバークラフト。理由を探ってみました。

そもそもリーフブロワーは風量よりも風速を重視して作られています。この場合、静止時の推力は大型の扇風機のような風量の大きいものよりも不利になってしまいます。推力は運動量、つまり単位時間あたりの空気の質量と風速の積で決まりますが、運動エネルギーは風速の2乗に比例するため、風速の速い送風機は推力の面では不利なのです。なので旅客機のエンジンには戦闘機のエンジンとは異なり外周にファンが付いたターボファンエンジンが用いられています。自動車で言えば、戦闘機は1速のローギアでなく2速や3速で発進しようとしているようなものだと言えます。

図1.jpg

もう1つはブロワーの性能による問題です。ブロワーは出口を絞ると風速が上がりますので、リーフブロワーでは先端がある程度細くなっています。しかしそれでは細くするほど風速が上がるのかというとそうでもなく、ある程度以上絞っても風速が上がらなくなります。上の図は、今回使用しているリーフブロワーとほぼ同等の性能と思われるブロワーの特性曲線を関数近似したものです(二次関数で非常によく近似できます)。横軸が風量となっており、出口を絞るほど風量が小さくなりますが、その割に風速、圧力(風速の二乗に比例)ともにさほど変化がないことがわかります。推力を得るためにはできるだけ出口を絞らずに使うほうが良いことがわかりました。

HC性能図.jpg

そこでこのブロワーをホバークラフトに取り付けたときにどうなるか計算してみました。前述したように、浮上用のエア配管は細いものしか見つからなかったので、直径が3cmしかありません。なのでこの直径を固定し、別途設けた推進用の開口径を変化させてプロットしたのが上の図になります(配管などの損失は無視しています)。推進用の口径を大きくするほど流量が増えますが、最初の図のように圧力や風速はさほど落ちないため、浮上にまわる風量もさほど変化しません。よって浮上高の変化はわずかですが、推進用のエア流量は大きく変化するため、推進力は大幅に変化します。先日の実験では推進用のノズルが浮上用の配管より細かったために、紫色で示したあたりの動作になっており、推力はわずかに 2.6N (270gf) 前後という僅かな値になっていたようです。すでに製作した偏向ノズルは推進用の開口径が10cm^2ほどあるので、ちょうどブロワ仕様あたりの条件になり700gfほどの推力(よって 1m/s^2ほどの加速力)が得られそうです。実際にはもっと開口径を増やしたほうが良いようですが・・



スロットル制御を付けないと止まれないので,まずはそのまま走らせてみようと思っていますが、興味あるテーマとして風力増大機構があります。ダイソンの「羽根のない扇風機」は高圧(高速)だが風量の乏しい気流で周りの空気を巻き込み、扇風機らしい風量と風速を得ています。同じものをリーフブロワーに付けたら風量が増えるはず・・と思いつつ、さすがにダイソンは買えないので、これまた2000円もしない怪しげな商品を買ってみました。空気の巻き込み口を塞いだり開放したりして試してみたのが上の動画です。スリットがかなり太く、あまり高速なエアは出てこない構造になっていますが、それもそのはず、開けてびっくり、丸い筐体ですが、中にはPC用の角型の冷却ファン(90mm角、12V 0.45A のブラシレスファン)が入っていました。ですがそれでもそれなりに効果があるようです。
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2020年06月09日

ホバークラフトを作ろう(3)

ホバークラフト、まだ浮上も推進もなんとかやっと、というところですが、とにかくラジコンとして動くようにしてしまいます。スロットル制御もそのうちつけるつもりですが、今のところ必要ない状況なので、方向だけを変えられるようにします。



ホバークラフトは浮上するので、水中に舵を置くことは出来ません(それだと陸上で走行できません)。舵のかわりに飛行機のような方向舵を使えば良いのですが、単なる方向舵だけだとかなりの速度で動いていないと向きが変えられないので、普通は推進ファンの直後に方向舵を付けます(ファンボートやエアボートといわれるプロペラ推進の船も同様です)。もう1つの方法は推力偏向による方法で、要するにファンまたはエア吹出口の方向を変えてしまう方法です。360度グルグルと回るものもありますが、効率が下がってしまいがちなので、まずは±35度ほどノズルの向きが変えられるものを設計しました。ついでに根元部分(マニフォールド)には、浮上用のエアが取り出せる口も付けておきます。

nozzle2.jpg

そもそも、このプロジェクトの目的の1つは3Dプリンタによるものづくり例を作ってみることでした。研究室の新メンバーによるプロジェクトの他に、大学院生向けの演習授業でも3Dプリンタのためのモデリングを演習課題に設定していることもあり、現物合わせでもきっちりと計測すればちゃんと意図通りに組み立てられることを示したい。今回取り付ける部品は4つあり、リーフブロワー本体の吹出口、ホバークラフトへの配管の他に、偏向ノズルに力がかかってもスムーズに動くように軸に挿入するボールベアリングと、駆動用のサーボがあります。サーボとの接続部分は、ホーンと呼ばれるサーボの軸に取り付ける角がピッタリとはめ込めるような造形にしました。また、反対側にはボールベアリングを押し込める寸法にします。ネジはM3を使い、タップでねじ切りをすることにしました。組み立ての関係で3Dプリンタで出力するパーツは3つです。

nozzle1.jpg

偏向ノズルを組み立てたものを、リーフブロワーとホバークラフト本体に取り付けたところです。いずれの部分の嵌合もピッタリで、無事、見本としての役目を果たせそうです(来週の講義で例として見せる予定になっています)。



時間帯の都合でまだエンジンを掛けての動作確認はしていませんが、無事に小気味よく遠隔操作できることを確認。あとはこれで、スムーズに浮上してそれなりの加速力がでてくれればいいのですが・・
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ホバークラフトを作ろう(2)

前回、浮上に失敗した、スポンジ式のスカート。これはだめだということで、まずは室内で実験をしてみることにしました。手近にあった梱包材の薄い発泡スチロールフィルム、とても裂けやすくて常用には無理ですが、確認すると空気は透過しないようですので、まずは少し余裕をもたせてかぶせ、ガムテで止めてみます。



室内ではエンジンは使えないので、ドライヤーで実験。あっけなく浮上しました。少し余裕がありそうなので2Lのペットボトルやドライヤー本体を載せましたがまだ滑ります。ペットボトル2本は無理な模様。自重を合わせて3.2kgは浮上しました。底面の面積や、ドライヤーの平均的なスペック(風速 15-20m/sec 程度、底面積0.2m2)の計算通りです。やっぱりさすがにスカート式は伊達ではないのだな。とあたりまえのことに納得しつつ、少しほっと胸をなでおろしました。



なんとかなりそうなので翌日さっそく、またリーフブロワーを載せてみます。浮きました。水はけのための僅かな傾斜でも下がっていきます。エンジン回転数をさほど上げなくても浮くようなのでなんとかなりそうです。しかし最初の映像でも同様でしたが、スカートの作りがいい加減で左前方が膨らみすぎているようで、少しそのあたりの接触を感じます。いかにスカートを均等に張るかが重要なようです。

bottom.jpg

とりあえずのスカートではうまくいったので、さっそく、もうちょっとマシなものを作ってみることに。ホームセンターで物色したところ、薄手のテーブルクロスが柔軟かつ空気を通さず、糸入りで耐久性もありそう。長さあたりの値段も安いので買ってみました。さらに本体上面に目隠しを兼ねた4mmのベニア板を取り付け。底面は圧力損失を下げるため、上の写真のような構造にしました。スカートがちぎれにくいようにアルミ板の角を丸めたりも。スカートとベニア板を合わせて自重は2kg(リーフブロワー除く)になりましたが、ドライヤーの実験では2kgのペットボトルも浮いたので、合計4kgまでは浮上できたことになります。



そして試運転です。今回はパイプの取り付け口に穴を開けて、トイレットペーパーの芯をとりあえずガムテで取り付けてノズルにしました。動かしてみたところ・・・微妙に前進はしますがすごく遅いです。リーフブロワーはスペック通りの性能が出ていたとしても、全風力を推進に使って推力はたかだか 1kgf 少々で,加速度は 0.2G にも足りません。風力を浮上にかなり振り分けていること、ちゃんとノズルが出来ていないことに加え、まだ底でスカートを引きずっていることもあってこんな速度になってしまっています。この対策はいくつかアイディアがあるのですが、それはさておき、まずは偏向ノズルを付けてラジコンとして操作できるのをまずは優先したいと思います。
posted by しんさく at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン