2020年06月20日

ホバークラフトの理論(1)浮上について

ホバークラフトが浮上するかどうか。またそれがどのぐらい浮くか。どんなファンを付ければどれぐらい加速するか。それらは比較的容易に計算できます。これから数回に分けてホバークラフトの基礎的な理論について紹介します。

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ホバークラフトが浮上するには、下部の気圧が大気圧よりも十分高くなければなりません。それではどれぐらい高ければいいかというと、ホバークラフトの面積と圧力(大気圧との差圧)の積が自重を上回れば良いだけです。たとえば一人乗りのホバークラフトを考えたとき、面積が1m2と小さめでも,わずか0.01気圧で浮上する条件を満たすことになります。大気圧がいかに大きいのかがわかります。

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ここで、流体力学においてもっとも重要とも言える理論を導入します。ベルヌーイの定理です。これは、流れている空気の流速と圧力の持つエネルギーの和が保存されることに基づいた理論で、ある風速を持つファンがどれぐらいの圧力を発することができるかや、ある圧力の空間から吹き出す空気がどれぐらいの速度になるのかを計算することが出来ます。厳密には非圧縮流体にしか適用できない理論だそうですが、ホバークラフトぐらいの圧力と風速であれば問題ないようです。

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この定理を用いて浮上高を計算していきます。まずは浮上したホバークラフトの下から外へ漏れる空気の流速を求めます。これにはベルヌーイの定理をそのまま用いることで計算できます。クッション内の圧力が高いほど、漏れる空気の流速が上がることがわかります。

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それではいよいよ浮上高の計算です。ホバークラフトのスカート下端が浮上すると空気が漏れるようになり、その漏れる部分の断面積は周囲長と浮上高の積で求められます。これに風速を掛けると、漏れる空気の毎秒あたりの量(風量)が求められます。風量はファンの能力である程度決まってくるので、それを用いることで浮上高が計算できます。

もし仮に、非常に高圧のガスボンベを繋いだとすると、非常に重い荷物を載せてもクッションは徐々に膨らみ、ホバークラフトが浮上します。しかしスカート下端が浮いた途端に空気が漏れ出します。ガスボンベからの流量は少ないため、僅かな隙間ができるだけでもクッション内の圧力が下がり、ほとんど浮上できません。それに対し風量は大きいものの風圧が低いファンを使った場合では、重い荷物を乗せると圧力に負けて浮上できなくなります。しかしある程度以上荷物が軽い場合は浮上し、ファンからの風量が大きいためにある程度浮いても圧力低下しにくくなります。このように、圧力源の種類によって最大積載量と浮上高は様々に変わり、圧力が高ければ高く浮上するわけではないことがわかります。ホバークラフトでは基本的にクッション内の圧力は一定で、その圧力に抗して送り込める風量によって浮上高が決まるという理屈になります。

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それではホバークラフトの形状はどのようなものがいいでしょうか。ホバークラフトの大きさを倍にすると面積は4倍に増加します。この場合、最大積載量も4倍に増加します。もしホバークラフト込みの重量が増加していない場合では、クッション内の圧力は1/4となり、その圧力を保つように浮上高さが変化して安定を保ちます。とすると浮上高は高くなるのでしょうか。実は変化しません。圧力が1/4になると風速は(ベルヌーイの定理により)1/2になりますが、ホバークラフトの大きさが2倍になっているために周囲長も2倍となり、漏れる空気の量は、同じ重さ・同じ浮上高では同じになります。もっとも、クッション内の圧力は低下し、また、ファンは圧力(背圧)が下がると風量が増加するので、そのぶん浮上高が上がることはあります。しかし、風量一定ではさほど違いが出ないことは知っておくと良いと思います。またホバークラフトの形状は面積に対して周囲帳が最小となる円形がもっとも理想的で、細長い形状は不利になります。航行中の水の抵抗を減らすために細長い形状になりがちな船舶と比べ、ホバークラフトが幅広なのはそのためです。

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実際の例で考察してみましょう。これまでに計算したのと同じ、面積 1m2、総重量100kgの場合について考えます。多くのリーフブロアは風速がかなり高いですから、ホバークラフトを浮上させられる風圧を持つことがわかります。一方、風量は機種によってまちまちで、エンジン式に対して電動のほうが若干劣り、さらに充電式ではかなり小さくなることが多いです。しかし風量が小さいと浮上高が低くなってしまいます。浮上高が低いと、スカート下端の凹凸による引きずりで抵抗が生じたり、アスファルト路面のような凹凸のある路面では必要な圧力に達するまでに空気の漏れ量がブロアの風量に達してしまい、浮上しなくなってしまいます。充電式のブロアや黒板消し、掃除機等のモーターでも人が乗れるホバークラフトが作れることが多数紹介されていますが、体育館の木張りの床やリノリウムタイルの廊下など、平滑な面でしか滑らせられないのはこれが原因であると思います。エンジン式のリーフブロアや、商用電源をつなぐタイプでも強力なタイプなら、うまく作ればアスファルト路面でも滑るものが作れるようです。
posted by しんさく at 02:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

2020年06月14日

ホバークラフトを作ろう(6)電動版

なんと同時並行で、電動(モーター式)のホバークラフトも作りました。

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もとはといえば、推力(風量)増大機構を試してみようと購入した「羽根のない扇風機」(Amazon で 1,880円)でした。そもそもはこの筐体にしか興味はなく、また使ってみると音の割に風量が微妙なので、ちょっと試してみてからすぐに分解してみました。するとびっくり・・・円筒形の筐体なのに、中からは四角いファン(でもやっぱり羽の部分はは当然、円形)が出てきました。そうです、放熱のためにデスクトップパソコンのケースに取り付けられるケースファンです。しかしさすがに扇風機として使おうというもののため、結構ハイパワーなモデルのようす。どうせならとそのへんにあった発泡スチロール箱につけて見るとうまく浮上し、小さなモバイルバッテリーを載せた状態でもなんとか浮上します。じゃあこれでもホバークラフトを作ってみよう、と悪乗りを始めました。

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本体は、さすがに四角い箱のままもないだろうと思い、ちょっと凝った構造に挑戦することにしました。それは「ペリフェラルジェット式(周辺ジェット式)」という形式で、船底の周辺部から内側向きに、斜めに気流を吹き出す方式です。この気流の流れにより外へ漏れようとする気流をせき止めようとするもので、過去にはスカートなしのホバークラフトでも試みられたことがあるようですし、現在のホバークラフトでもスカート内部の気流は同様の流れになっています。ホームセンターで25mm厚のスタイロフォームを買ってきて、3枚重ねにすることにしました(1畳分が990円でしたが、使うのはその 1/4だけです)。これを壊さないようにペリフェラルジェットの経路をかこうするのにはかなり骨が折れましたが、なんとか完成。重ねて発泡スチロール用の接着剤でしっかり止めてから再度、外装を削って形を整えました。2段目はボディ內部の空気溜まりを作る部分で、最上段がファンを載せるとともに蓋となります。今回もファンは1つで、ファンの下部 1/3 ほどの領域を浮上用に、残りを推進用に用いる、一人乗りの小型ホバークラフトなどでよく見られる形式です。

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ローコスト化が条件で、また、ファンの能力が乏しいので重量削減も重要です。そこで、専用の充電器を買わなくてもよいモバイルバッテリーを使うことにしました。しかし1つ問題が。それは、ファンは12Vを要するのに対しUSBは5Vしかないことです。そこでネットで検索すると、12Vに昇圧するケーブルが売られていました。Amazonで送料込み699円と非常に安い上、回路部分はUSB端子部分に収められていて小型軽量。しかもその端子部分も簡単に分解できるようで、電流値も条件を満たし、今回の目的にぴったりです。USB端子からはラジコンの受信機とサーボを動かす5Vを直接引き出し、12Vはファンへと接続しました。また、方向舵を動かすサーボも必要です。これも軽くしたいので、やはりAmazonでたった9グラムのマイクロサーボを購入しました。こちらも驚きの5個入り1,599円ですが、これだけあればまた他に作りたいものが出来ても、再利用することなく惜しげもなく使えます。受信機はさすがに高いのでリーフブロアー用と共用します。方向舵は厚紙で作成しました。

そして試運転しました。まずはペリフェラルジェット式の能力を測るべくスカートなしで試してみましたが、テスト時の発泡スチロールの箱に比べて少し重くなったこともあって、浮かないことはないですがあまりスムーズではありません。しかたがないので今回もスカートを付けました。ただし今回はペリフェラルジェットが効果的に働くのでスカートは中央から引っ張るバッグタイプでなく、真ん中に大穴を開けた周辺部だけのタイプとしました。



動作の様子です。モーター式で、しかもかなり静かなので気兼ねなく室内で走らせられます。リーフブロアー式ホバークラフトは偏向ノズル式でかなりステアリングが効いた上、重量物が中央に集中しているので操縦はそれなりにできましたが、今回のものは舵の効きが悪い上によーモーメントの収束が弱く、非常に運転が難しいです。まっすぐ走らせるのも一苦労。しかしその分面白いともいえ、一度、大きな体育館などで走らせてみたいところです。

今回用いたケースファンは一辺が92mm、厚みが25mmの、いわば中型のタイプですが、筐体には 12V 0.45A とあります。0.45Aはこの手のファンとしてはかなり強力なタイプとなります。メーカサイトでも型番(HDH0912VA)が同じものは見つかりませんでしたが、命名ルール的にはHDB0912VAの流体軸受バージョンのようです。その場合、風量は2.24m^3/min、静圧値から求めた風速は約 11.8m/sec となりました。かなり強力なタイプと言えますので、同様の構造でホバークラフトを作られる場合はできるだけハイパワーなタイプを選んでください。
posted by しんさく at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

2020年06月13日

ホバークラフトを作ろう(5)とりあえず出来ました

リーフブロワーでホバークラフトラジコンを作る企画、とりあえず第1ステップはクリアです。一応ラジコンになって走るようになりました。



前回計算したように、とりあえず出口の口径を絞らなければ推力が上がるうえ、浮上力もさほど変化しないようなので、いろいろ案ずるよりはまずは動かしてみようと、製作した偏向ノズルを付けました。するとあっさり、前に比べると見違えるような加速を見せるようになりました。前の動画ではスカートの僅かな引きずりの抵抗や、ガレージの水はけのための勾配で推力の大半が損なわれていたのでしょう。桁が違うほど推力が増したわけではないはずですが、ガレージでは手狭なぐらいの動きを見せるようになりました。まだぜんぜん運転に習熟していないので下手くそすぎますが・・ホバークラフトの滑る動きになれてないだけでなく、そもそもどっちにハンドルを着るのか間違えているような始末ですが、そのうち慣れるでしょう。

梅雨入りしたため広い場所で試せないのが残念ですが、風速が速いために加速は遅くてもトップスピードはもっと伸びるはず。どれぐらいのトップスピードになるのか試してみたいと思います。しかしこれでも運転は十分遊べるので、推力の増大の優先度は下がりそうです。それよりはまずスロットル制御ですが、エンジンパワーを絞ると浮上しなくなるので、ノズルの部分にバタフライバルブでも入れようかと検討しているところです。
posted by しんさく at 13:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン