今年も早いもので,もう残すところあと2週間.そして年末恒例,京都 "How are you, PHOTOGRAPHY? 展" も無事終了しました.
昨年は6点出展したのですが,今年は3点だけ.ここのところ新しい暗室技法を試してきたのを一旦中断し,今年は昨年と同じ技法で仕上げました.ある程度,まとまった数ができてきたら,そのうちどこかで個展でも..と思っているからでもありますが,まあ,まだまだその道は長そうです.次回はちょっと被写体の方向を変えてみようかな,と思っていますが,どうなることやら.
なお,展示した写真は,ウェブフォトギャラリー "photogradation" の こちら から,大きな画像でも御覧いただけますので,ご興味があれば覗いてみてください.
今年も厚かましくあちこちへ案内状を送ったりしましたが,年末の慌ただしい中,多くの方が見に来てくださいました.顔を出すことが出来たのは最終日の午後だけでしたが,そこでも幾人かの方々とお会いすることもできました.たいへんありがとうございました.それではみなさま,良い新年をお迎えください.
2012年12月17日
2012年12月08日
フィルムで撮る写真(2)
先週に引き続き,フィルムで撮り,暗室で仕上げる写真について.今回は現像と引き伸ばしについて紹介します.
デジタルカメラになってからすっかり写真屋さんに行くこともなくなりましたが,そもそもフィルムで写真を撮っておられた方でも,フィルムの現像や引き伸ばしを自分の手でしたことがある方は少ないのではと思います.そういう僕も,写真をやり始めてからしばらくはやはり,なかなか現像や引き伸ばしには手が出ませんでした.高校や大学で写真部に所属していたような方,または芸術系の専門学校や大学を出られた方はともかく,なかなか自力で始めるには敷居が高いように思います.道具も普通のお店には売っていませんし,カメラと違って説明書だけでは心もとないし,どうしても自宅作業になるので出先で教えてもらうわけにも行きません.親しい知人などに教えてもらうケースも多いのですが,最近はフィルムを使う方が減っていてますますその機会もなくなってきているのではないかと思います.僕の場合は弟が先に始めたのに影響され,教えてもらいました.もっとも弟は熱しやすく冷めやすいのか,もう現像はやめてしまいましたが..
さて,本題の現像・引き伸ばしですが,まずは,撮影してきたフィルムはどんな道具で現像するのか.街の写真屋さんでは大きな現像機で自動的に処理をしていますが,自宅でやるには下のような「現像タンク」を使います.
この現像タンクは,言ってみればただのステンレス製のボトルですが,口の部分が少し工夫されていて,蓋を外しても内側に光が入らないように遮光板が取り付けられています.ですので一旦フィルムを入れてしまえば,その後は明るいところで現像液などの薬品を出し入れして現像を進めることができます.ただしフィルムそのものは非常に光に敏感なので,タンクにフィルムを入れるときは「完全に真っ暗」なところで行う必要があります.僕の場合,後の写真で引き伸ばし機が置いてあるところが1畳ほどの小さな暗室(暗幕で覆われた箱)になっていて,その中でフィルムを装填しますが,暗室がなくてもフィルム現像は可能です.腕を通す穴の開いた,光を通さない袋(チェンジバッグと呼ぶ)に手を入れ,手探りでフィルムを装填するのです.どちらにしても,フィルムを見ながら作業することは出来ないので,指先感覚できっちりとフィルムを扱えるように慣れる必要があり,これが現像作業の中で一番敷居が高いところでしょうか.フィルムの撮影面に触れると指紋が付いてしまうので,上手に現像するには慣れが必要です.
フィルムを缶(パトローネ)に入れたまま現像することは出来ないので,暗室の中でパトローネからフィルムを引き出して,リール(針金で出来た枠,上の写真の右下)にフィルムをはめ込む作業が必要です.このときフィルムがうまく枠にはまらずにフィルム同士が接触していたりすると,その部分は現像液が十分届かずに現像不良になります.2つのリールのうち,細い針金で組まれた右側のものが35mmフィルム用,左の太い針金で出来たものが中判フィルム用で,私は中判フィルムの装填には慣れましたが,いまだに35mmフィルムには苦手意識があります..
さて,フィルムをリールにはめ込み,タンクに入れて蓋をしたら,明るいところで現像開始です.現像するにはいろいろな薬品を使いますが,必須といえるのは「現像液」と「定着液」の2つだけです.
フィルムは光を受けることで微妙な化学反応を起こしますが,それはそのままでは目に見えません.現像液はそれが見えるよう,光を受けた粒子を黒く変化させます.定着液は,光を受けなかったために黒くならなかった粒子を溶かして取り除く働きをします.実際には液がタンクに入っている間にタンクを振る「撹拌」作業や,フィルム内に残った薬品を洗い流すための水洗などの工程が入りますが,それらが終われば,あとはタンクを開けてフィルムを取り出し,吊り下げて干せば現像は終了です.写真に写っているうち,最も左の液体のものは定着液.その他は現像液の材料で,袋に入っているものは,これを水道水に溶かすだけで現像液になる粉末です.私はこれを使わず,最近は現像液はバラバラの原料から調合しています.
さて,フィルムの現像が終われば,次は「引き伸ばし」です.「引き伸ばし」は,その名の通りフィルムの像を大きな印画紙に拡大する作業ですが,同時に白と黒が反転した「ネガ」を,もとの階調をもつ「ポジ」に戻す働きもします.引き伸ばし機はちょっと大掛かりな機械です.
引き伸ばし機は写真の右上に写っているグレーの機械です.上にランプが入っており,中程にフィルムを取り付ける部分とレンズが付いています.その下の台に印画紙を置き,ネガの像を台の上に投影して引き伸ばしをします.印画紙は基本的にフィルムと同じ原理で化学反応を起こします.ただし,白黒写真用の印画紙は赤い光に反応しないように作られているので,暗室の中では,引き伸ばし作業中であれば,この赤いランプ(引き伸ばし機の左隣)を点けておくことができます.
写真に移っている引き伸ばし機(QE69)は中判フィルムに対応した機種で,カラー写真引き伸ばし用のものです.私はカラーフィルムの自家処理はしないのですが,ではなぜカラー引き伸ばし機を使っているのか?実はこれにも印画紙の仕組みが関係しています.印画紙には「多階調印画紙」と言われる種類のものがあり,これは引き伸ばしの時に当てる光の色(青から緑)によってコントラストを調整することができます.ですので,引き伸ばし機のダイヤル操作で,柔らかい(コントラストの低い)写真にすることも,白と黒の部分がはっきりして中間調の部分が少ない,硬い(コントラストの高い)写真に仕上げることもできるし,手間をかければ1枚の写真の中で一部のコントラストを変えることもできます.
さて,引き伸ばし機にネガと印画紙をセットし,印画紙を露光したら,その後は印画紙の現像が必要です.
印画紙とフィルムは同じような化学反応で現像されますが,印画紙には普通,フィルム用よりも強力な印画紙専用の現像液を使います.僕は,写真左下の白い袋「コレクトールE」を使っています.この現像液は古くから使われているものよりも環境にやさしい現像液で,主成分はアスコルビン酸(ビタミンC)で出来ています.印画紙用現像液は強力なので,現像のあと定着の前に,一旦「停止液」に印画紙を漬けます.停止液は弱酸性の液体ならよいので,普通は酢酸(お酢の成分)を使いますが,かなり臭うので最近はクエン酸もよく使われます.写真の左上に写っている赤っぽい液体は停止液の原液で,これは液が薄まってくると色の変化で使用限度を知らせてくれるものです.次に定着を行いますが,この時の定着液はフィルム用と同じものを使うことが出来ます.ここではコダック製の粉末(黄色い袋)を載せてみました.その後,印画紙を水洗して残った薬品を洗い流し,印画紙を自然乾燥したら出来上がりです.
このようにして作った写真を,先にもお知らせしたように来週,写真展で展示します.写真は絵画調(鉛筆画のような雰囲気)で,普通に写真を現像・引き伸ばししたものとはちょっと違っています.そのような写真にするために,僕は引き伸ばし段階(ネガの像を印画紙に当てるとき)に独自の技法を使っています.お近くに来られることがあれば是非御覧ください.今回も京都は三条の「同時代ギャラリー」にて,12月11日〜16日の6日間,展示を行います.時間やアクセスなど,詳細はこちらに書いておりますので是非御覧ください.
デジタルカメラになってからすっかり写真屋さんに行くこともなくなりましたが,そもそもフィルムで写真を撮っておられた方でも,フィルムの現像や引き伸ばしを自分の手でしたことがある方は少ないのではと思います.そういう僕も,写真をやり始めてからしばらくはやはり,なかなか現像や引き伸ばしには手が出ませんでした.高校や大学で写真部に所属していたような方,または芸術系の専門学校や大学を出られた方はともかく,なかなか自力で始めるには敷居が高いように思います.道具も普通のお店には売っていませんし,カメラと違って説明書だけでは心もとないし,どうしても自宅作業になるので出先で教えてもらうわけにも行きません.親しい知人などに教えてもらうケースも多いのですが,最近はフィルムを使う方が減っていてますますその機会もなくなってきているのではないかと思います.僕の場合は弟が先に始めたのに影響され,教えてもらいました.もっとも弟は熱しやすく冷めやすいのか,もう現像はやめてしまいましたが..
さて,本題の現像・引き伸ばしですが,まずは,撮影してきたフィルムはどんな道具で現像するのか.街の写真屋さんでは大きな現像機で自動的に処理をしていますが,自宅でやるには下のような「現像タンク」を使います.
この現像タンクは,言ってみればただのステンレス製のボトルですが,口の部分が少し工夫されていて,蓋を外しても内側に光が入らないように遮光板が取り付けられています.ですので一旦フィルムを入れてしまえば,その後は明るいところで現像液などの薬品を出し入れして現像を進めることができます.ただしフィルムそのものは非常に光に敏感なので,タンクにフィルムを入れるときは「完全に真っ暗」なところで行う必要があります.僕の場合,後の写真で引き伸ばし機が置いてあるところが1畳ほどの小さな暗室(暗幕で覆われた箱)になっていて,その中でフィルムを装填しますが,暗室がなくてもフィルム現像は可能です.腕を通す穴の開いた,光を通さない袋(チェンジバッグと呼ぶ)に手を入れ,手探りでフィルムを装填するのです.どちらにしても,フィルムを見ながら作業することは出来ないので,指先感覚できっちりとフィルムを扱えるように慣れる必要があり,これが現像作業の中で一番敷居が高いところでしょうか.フィルムの撮影面に触れると指紋が付いてしまうので,上手に現像するには慣れが必要です.
フィルムを缶(パトローネ)に入れたまま現像することは出来ないので,暗室の中でパトローネからフィルムを引き出して,リール(針金で出来た枠,上の写真の右下)にフィルムをはめ込む作業が必要です.このときフィルムがうまく枠にはまらずにフィルム同士が接触していたりすると,その部分は現像液が十分届かずに現像不良になります.2つのリールのうち,細い針金で組まれた右側のものが35mmフィルム用,左の太い針金で出来たものが中判フィルム用で,私は中判フィルムの装填には慣れましたが,いまだに35mmフィルムには苦手意識があります..
さて,フィルムをリールにはめ込み,タンクに入れて蓋をしたら,明るいところで現像開始です.現像するにはいろいろな薬品を使いますが,必須といえるのは「現像液」と「定着液」の2つだけです.
フィルムは光を受けることで微妙な化学反応を起こしますが,それはそのままでは目に見えません.現像液はそれが見えるよう,光を受けた粒子を黒く変化させます.定着液は,光を受けなかったために黒くならなかった粒子を溶かして取り除く働きをします.実際には液がタンクに入っている間にタンクを振る「撹拌」作業や,フィルム内に残った薬品を洗い流すための水洗などの工程が入りますが,それらが終われば,あとはタンクを開けてフィルムを取り出し,吊り下げて干せば現像は終了です.写真に写っているうち,最も左の液体のものは定着液.その他は現像液の材料で,袋に入っているものは,これを水道水に溶かすだけで現像液になる粉末です.私はこれを使わず,最近は現像液はバラバラの原料から調合しています.
さて,フィルムの現像が終われば,次は「引き伸ばし」です.「引き伸ばし」は,その名の通りフィルムの像を大きな印画紙に拡大する作業ですが,同時に白と黒が反転した「ネガ」を,もとの階調をもつ「ポジ」に戻す働きもします.引き伸ばし機はちょっと大掛かりな機械です.
引き伸ばし機は写真の右上に写っているグレーの機械です.上にランプが入っており,中程にフィルムを取り付ける部分とレンズが付いています.その下の台に印画紙を置き,ネガの像を台の上に投影して引き伸ばしをします.印画紙は基本的にフィルムと同じ原理で化学反応を起こします.ただし,白黒写真用の印画紙は赤い光に反応しないように作られているので,暗室の中では,引き伸ばし作業中であれば,この赤いランプ(引き伸ばし機の左隣)を点けておくことができます.
写真に移っている引き伸ばし機(QE69)は中判フィルムに対応した機種で,カラー写真引き伸ばし用のものです.私はカラーフィルムの自家処理はしないのですが,ではなぜカラー引き伸ばし機を使っているのか?実はこれにも印画紙の仕組みが関係しています.印画紙には「多階調印画紙」と言われる種類のものがあり,これは引き伸ばしの時に当てる光の色(青から緑)によってコントラストを調整することができます.ですので,引き伸ばし機のダイヤル操作で,柔らかい(コントラストの低い)写真にすることも,白と黒の部分がはっきりして中間調の部分が少ない,硬い(コントラストの高い)写真に仕上げることもできるし,手間をかければ1枚の写真の中で一部のコントラストを変えることもできます.
さて,引き伸ばし機にネガと印画紙をセットし,印画紙を露光したら,その後は印画紙の現像が必要です.
印画紙とフィルムは同じような化学反応で現像されますが,印画紙には普通,フィルム用よりも強力な印画紙専用の現像液を使います.僕は,写真左下の白い袋「コレクトールE」を使っています.この現像液は古くから使われているものよりも環境にやさしい現像液で,主成分はアスコルビン酸(ビタミンC)で出来ています.印画紙用現像液は強力なので,現像のあと定着の前に,一旦「停止液」に印画紙を漬けます.停止液は弱酸性の液体ならよいので,普通は酢酸(お酢の成分)を使いますが,かなり臭うので最近はクエン酸もよく使われます.写真の左上に写っている赤っぽい液体は停止液の原液で,これは液が薄まってくると色の変化で使用限度を知らせてくれるものです.次に定着を行いますが,この時の定着液はフィルム用と同じものを使うことが出来ます.ここではコダック製の粉末(黄色い袋)を載せてみました.その後,印画紙を水洗して残った薬品を洗い流し,印画紙を自然乾燥したら出来上がりです.
このようにして作った写真を,先にもお知らせしたように来週,写真展で展示します.写真は絵画調(鉛筆画のような雰囲気)で,普通に写真を現像・引き伸ばししたものとはちょっと違っています.そのような写真にするために,僕は引き伸ばし段階(ネガの像を印画紙に当てるとき)に独自の技法を使っています.お近くに来られることがあれば是非御覧ください.今回も京都は三条の「同時代ギャラリー」にて,12月11日〜16日の6日間,展示を行います.時間やアクセスなど,詳細はこちらに書いておりますので是非御覧ください.
2012年12月02日
フィルムで撮る写真(1)
今年も京都で行われる写真展に写真を出展することになりました.そこで久々にブログを更新することにしたのですが,それだけではつまらないので,もうすっかり「前世紀の技術」になってしまった銀塩写真(フィルムで撮る写真)の現状,ただし僕の場合,について何度か連載でご紹介することにしました.
そのまえに写真展のご案内.今回も京都は三条の「同時代ギャラリー」にて,12月11日〜16日の6日間,展示を行います.今年の写真も,鉛筆画調の銀塩写真を展示する予定です.時間やアクセスなど,詳細はこちらに書いておりますので是非御覧ください.
さて,フィルムの写真ですが,今回は使用している機材とフィルムについて少しご紹介します.最近,写真展用の写真の多くは「中判フィルム」と呼ばれる少し大きめのフィルムで撮影しています.
この写真で,右のカメラは58年前(1954年)に発売された,ニコン製カメラ黎明期の名機 "Nikon S2" です.今でも完調で,また大変美しいカメラですが,フィルムは近年まで一般的に使われていた「35mmフィルム」と呼ばれるフィルムを使います.それに対して左の大きなカメラは富士フイルムが14年前(1998年)に発売した "GA645Zi" で,こちらはもっと大きな「中判フィルム」を使うものです.このカメラは中判フィルムを使うカメラとしては最も多機能なカメラの1つで,今回の写真展に出展している作品はこのカメラで撮影したものです.これらのカメラで使うフィルムは下の写真のようなものです.
左に置いてあるのが中判フィルムで,右が35mmフィルムです.ご覧のとおり,35mmフィルムは缶に入っているのですが,中判フィルムは軸に巻いてあるだけ.ただしフィルムと一緒に不透明な紙が巻いてあるので,フィルムをカメラに出し入れするときに光が当たってせっかくの写真がダメになってしまうことはありません.
35mmフィルムはその名の通り,フィルムの幅が35mmになっています.しかしこのフィルムはもともと映画用に作られたもので,フィルムを速く送るためにフィルムの両端にたくさんの穴(パーフォレーションという)が付けられています.そのため実際に写真撮影に使えるのは24mm幅の部分だけ.多くのカメラでは,1コマの大きさが高さ24mm×幅36mmの範囲になります.
それに対して中判フィルムは幅が60mmもあります.しかも,もともと写真(静止画)用のフィルムなので,左右に穴がありません.11mm分も損してしまう35mmフィルムに対し,このフィルムでは端からそれぞれ2mmずつしか無駄にならず,写真の写る幅は35mフィルムの倍以上,56mmも写ります.この形の中判フィルムは35mmフィルムよりも古くから使われているもので,100年以上の歴史があります.
中判カメラでは画面の形にもいろいろな種類があります.35mmフィルムでは,(普通フィルムは横方向に巻くので)画面の高さ24mmに対して幅はその1.5倍の36mmに決まっています.それに対し,中判では自由に画面の幅を取ることができます.
この写真では,カメラ内部のフィルムを装填する部分のうち,写真が写る範囲を赤枠で示しています.上のカメラ GA645Zi では,中判カメラの判型のうちもっとも幅が狭い,41mm 幅の画面を撮影します.この時,画面の高さよりも画面の幅のほうが短いので,普通にカメラを構えると画面は縦長になります.他に人気のあるものとして,画面の幅を画面の高さ56mmと同じにして正方形が撮影できるもの,もっと横長の画面にして高画質なパノラマ写真が撮影できるものなど,古今東西,個性豊かなカメラがたくさん存在します.もちろん画面が大きいほど1本のフィルムで撮影できるコマ数が減ってしまいますが,同じフィルムをいろいろな大きさのカメラで使えるのは便利です.
現像済みのフィルムの例です.この写真では,左の中判フィルムは66判と言われる正方形の写真(ローライSL66Eというカメラで撮影したもの)で,右は普通の35mmカメラで撮影したものです.画面が大きいとその分だけフィルムの粒子が写真に現れにくく,高画質になることや,ボケを生かした写真が撮影しやすいなどのメリットがあります.
一昔前は,35mmフィルムに比べて中判のフィルムは売っている店が少なく,現像も小さな写真屋さんでは出来ないので時間がかかる,などのデメリットもあったのですが,これはカラーフィルムに限った話で,僕が作品制作に使っている白黒フィルムではそもそもどちらもさほど違いはありませんでした.今はデジカメが主流になり,35mmフィルムの使い勝手もどんどん不自由になってきているので,ますます大きな違いはなくなってきています.僕自身はフィルムの現像を自宅で行いますし,フィルムはヨドバシカメラなど大型カメラ店に行けば,どちらも違いなく売られています.中判は主にプロ用のフィルムということで値段が高そうな印象がありますが,実はフィルム1本あたりの値段でも中判のほうが35mmよりもかなり安いです(ただし1本で撮影できるコマ数が少ないので,1コマあたりでいくと2〜3倍ぐらいのコストになりますが..).
次回は,フィルムの現像について簡単に紹介しようと思います.
そのまえに写真展のご案内.今回も京都は三条の「同時代ギャラリー」にて,12月11日〜16日の6日間,展示を行います.今年の写真も,鉛筆画調の銀塩写真を展示する予定です.時間やアクセスなど,詳細はこちらに書いておりますので是非御覧ください.
さて,フィルムの写真ですが,今回は使用している機材とフィルムについて少しご紹介します.最近,写真展用の写真の多くは「中判フィルム」と呼ばれる少し大きめのフィルムで撮影しています.
この写真で,右のカメラは58年前(1954年)に発売された,ニコン製カメラ黎明期の名機 "Nikon S2" です.今でも完調で,また大変美しいカメラですが,フィルムは近年まで一般的に使われていた「35mmフィルム」と呼ばれるフィルムを使います.それに対して左の大きなカメラは富士フイルムが14年前(1998年)に発売した "GA645Zi" で,こちらはもっと大きな「中判フィルム」を使うものです.このカメラは中判フィルムを使うカメラとしては最も多機能なカメラの1つで,今回の写真展に出展している作品はこのカメラで撮影したものです.これらのカメラで使うフィルムは下の写真のようなものです.
左に置いてあるのが中判フィルムで,右が35mmフィルムです.ご覧のとおり,35mmフィルムは缶に入っているのですが,中判フィルムは軸に巻いてあるだけ.ただしフィルムと一緒に不透明な紙が巻いてあるので,フィルムをカメラに出し入れするときに光が当たってせっかくの写真がダメになってしまうことはありません.
35mmフィルムはその名の通り,フィルムの幅が35mmになっています.しかしこのフィルムはもともと映画用に作られたもので,フィルムを速く送るためにフィルムの両端にたくさんの穴(パーフォレーションという)が付けられています.そのため実際に写真撮影に使えるのは24mm幅の部分だけ.多くのカメラでは,1コマの大きさが高さ24mm×幅36mmの範囲になります.
それに対して中判フィルムは幅が60mmもあります.しかも,もともと写真(静止画)用のフィルムなので,左右に穴がありません.11mm分も損してしまう35mmフィルムに対し,このフィルムでは端からそれぞれ2mmずつしか無駄にならず,写真の写る幅は35mフィルムの倍以上,56mmも写ります.この形の中判フィルムは35mmフィルムよりも古くから使われているもので,100年以上の歴史があります.
中判カメラでは画面の形にもいろいろな種類があります.35mmフィルムでは,(普通フィルムは横方向に巻くので)画面の高さ24mmに対して幅はその1.5倍の36mmに決まっています.それに対し,中判では自由に画面の幅を取ることができます.
この写真では,カメラ内部のフィルムを装填する部分のうち,写真が写る範囲を赤枠で示しています.上のカメラ GA645Zi では,中判カメラの判型のうちもっとも幅が狭い,41mm 幅の画面を撮影します.この時,画面の高さよりも画面の幅のほうが短いので,普通にカメラを構えると画面は縦長になります.他に人気のあるものとして,画面の幅を画面の高さ56mmと同じにして正方形が撮影できるもの,もっと横長の画面にして高画質なパノラマ写真が撮影できるものなど,古今東西,個性豊かなカメラがたくさん存在します.もちろん画面が大きいほど1本のフィルムで撮影できるコマ数が減ってしまいますが,同じフィルムをいろいろな大きさのカメラで使えるのは便利です.
現像済みのフィルムの例です.この写真では,左の中判フィルムは66判と言われる正方形の写真(ローライSL66Eというカメラで撮影したもの)で,右は普通の35mmカメラで撮影したものです.画面が大きいとその分だけフィルムの粒子が写真に現れにくく,高画質になることや,ボケを生かした写真が撮影しやすいなどのメリットがあります.
一昔前は,35mmフィルムに比べて中判のフィルムは売っている店が少なく,現像も小さな写真屋さんでは出来ないので時間がかかる,などのデメリットもあったのですが,これはカラーフィルムに限った話で,僕が作品制作に使っている白黒フィルムではそもそもどちらもさほど違いはありませんでした.今はデジカメが主流になり,35mmフィルムの使い勝手もどんどん不自由になってきているので,ますます大きな違いはなくなってきています.僕自身はフィルムの現像を自宅で行いますし,フィルムはヨドバシカメラなど大型カメラ店に行けば,どちらも違いなく売られています.中判は主にプロ用のフィルムということで値段が高そうな印象がありますが,実はフィルム1本あたりの値段でも中判のほうが35mmよりもかなり安いです(ただし1本で撮影できるコマ数が少ないので,1コマあたりでいくと2〜3倍ぐらいのコストになりますが..).
次回は,フィルムの現像について簡単に紹介しようと思います.