前回に引き続き,ソニーNEX用の変わり種マウントアダプターを紹介します.
このアダプターは,一眼レフ用レンズマウントである,ニコンFマウントのレンズをソニーNEXに装着するものです.このようなアダプターには,単にレンズをまっすぐ取り付けるものがよく使われていますが,このアダプターはレンズをずらしたり傾けたりすることが出来ます.
例えば,カメラを斜め上から撮影することを考えます.普通のレンズ(Nikkor-O Auto 35mm F2 を使用)で撮影すると次の写真のようになります.
斜め上から見下ろしているので,カメラが下すぼまりに写ります.ちょうど,ビルを見上げるように写真を撮ると,ビルの先端が地面に近いところよりも小さく写るのと同じです.またカメラが斜めにおいてあるので,カメラ全体にピントが合わず,真ん中辺りしかシャープに写りません.そこで,レンズの向きを変えます.
普通のカメラでは,レンズはボディに対してまっすぐ(直角に)付いていますが,これの方向を変えます.すると,カメラに対して正面を向いた面でなく,傾いた面に対してピントをあわせることが出来ます(シャインフルークの法則といいます).クリックして拡大すると,カメラの右肩から左肩までピントがあっているのがわかります.普通はもっとレンズの絞りを絞り込んで撮影しますが,今回は分かりやすいように絞りを開いてピントを浅くしています.しかしまだカメラの下すぼまりは残っていますので,今度はレンズをカメラに対して下へ平行にずらします.
すると今度は下すぼまりの形状が補正され,整った形に撮影することが出来ます.このようなシフト撮影の場合,平行線を完全に垂直にそろえてしまうと,視覚的な錯覚により,かえって逆に上すぼまりのように見えてしまうことがあるので,ほどほど(5割〜7割ほど?)の補正に留めるのが良いようです.またピント面の調整(ティルト・スイング)も,絞り込みでは追いつかないときに補助的に用い,パッと見た目にはティルト・スイングを用いていないように見せるのが一般的だとは思います.また最近は,わざと遠景に対してティルトすることで,風景をミニチュア風に見せる技法(代表的なものに,本城直季氏の作品があります)が流行っているようです.
このような写真を撮影するためのレンズは,キヤノンではTS-Eレンズ,ニコンではPC-Eレンズと呼ばれ,数本ずつ発売されていますが,非常に高価なものです.それに対し,既存のニッコールレンズでティルト・シフト撮影ができるのはお得な感じがします.Fマウントのレンズは普通,フルサイズ用ですが,NEXはAPS判なのでシフトの余地があることや,TS-E/PC-Eレンズにはないズームレンズを使うことが出来るのも面白い点かもしれません.またNEXでは液晶画面を動かすことができることや,ピントが合った位置を拡大したり,強調するピーキング表示などがあるため,ファインダを覗きながらの作業に比べ,楽に,かつ正確に撮影をすることが出来ます.
これまで,レンズをシフトするアダプタと,ティルトするアダプタはそれぞれ別のものとして製造販売されていました.他のティルトアダプタはボールジョイント式になっていますが,レンズを正面向きで固定することが出来ないため,一般撮影にも用いるのには若干不都合があります.その点で,今回のアダプタはティルト・シフトなしの原点に戻すのも容易ですし,ティルトとシフトを同時に行うことも出来るので,少々高価ですがそれだけの価値があるように思います.
ただしこのアダプタの場合,ティルト方向とシフト方向が直交方向に固定されていることと,内部構造のためレンズ後部の金具などがマウント面から8.5mm以上突出しているレンズは装着できないことがありますのでご注意ください.
2013年11月04日
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