2010年01月09日

電気少年

今どき,電化製品はすっかり高度化してしまって,それの中身がどうなってて動いているとか,考える余地が少なくなっている気がします.音楽もレコードとかカセットテープなら,送りのスピードが変わると音程が変わるとか,電話機ならダイヤルを回したら戻りがけにプチプチ音が出て番号が送られているとか,感覚で分かったのですが,いまやすっかりブラックボックスで常人の理解の範疇をすっかり超えてしまいました.

僕が小さい頃はまだまだ科学技術信奉のムードが残っていた時代だと思います.科学技術が労働を楽にして,ひぃひぃ働かなくても暮らせる未来が来る,みたいな幻想?があった時代かも知れません.しかし現在はそれが実現されることが果たしていいことなのか,というような疑念もあるし,環境やエネルギーなどのネガティブ要素とのバランスも考える必要があります.つくづく,夢が持ちにくい時代になったなと思います.実際にはそういうネガティブな部分も科学技術がまた解決すべきで,科学技術の追求が否定されるべきではないと思っているのですが,世の中ではもっと単純化して,善か悪か,みたいな水戸黄門的思考の人も多いみたいです.科学技術追求の成果が金銭的価値で測られることそのものが問題なのだと思うのですが.

ともあれ,僕が小さい頃はそういう科学技術にもっと純粋なあこがれが持てた時代で,未来は絶対に科学者になるのだと物心ついた頃から決めてました.今,それを実現した・・といえばウソではないのですが.とにかくそういうことで,電気やコンピュータには小学生時代から異常な執着があり,半田ごてを始めて握ったのが小学校2年生,電話級アマチュア無線技師の免許を取ったのが6年生で,コイルとコンデンサの共振周波数の公式 f= 1/(2π√(LC)) もそのころに覚えたものです.

dso.jpg「もし免許が取れたら無線機は買ってやるから勉強してみろ」と言って小学生に平方根を教えてくれた技術者の親父に約束通り買ってもらった無線機では,そこそこ交信などもしましたが,電気回路のおもしろさにはまってしまって,トランジスタ回路やオペアンプ回路の設計方法なども中高時代にマスターしたものです.それでアンプとか作って,中学校時代にはZ80 CPU を使ったワンボードマイコンとか EPROM ライタとかも自作したものですが,そのときにネックになったのが,波形の観測でした.電圧や抵抗を測るテスターは指針式のものがそこそこ小遣いで買える値段になっていましたが,オシロスコープはおいそれとは手が出ません.でも,アマチュア無線機の制作を解説した本には平気で「波形を観測しながら調整する」とか書いてあるわけです.そのようなことで,オシロスコープにはずっとあこがれを抱いていました.

電気系学生の学生実験ではオシロスコープを使った実験は必須課題のようなもので,僕もそのころにはアナログ式のオシロを使い,画面の波形を方眼紙にスケッチしたものです.ですが,波形が記録できるデジタル式オシロスコープはいかにも「プロの道具」という案配で,平気で数百万円の価格がついていました.しかし今は時代が変わり,液晶画面が備わったデジタルオシロがとても安くなっています.アナログオシロスコープは数万円ぐらいのものが出てきて,学生実験の設備更新でも予算上の苦労をする必要が無くなってきています.

そして2009年末,ついに写真のような超小型のデジタルオシロ "DSO nano" が発売になりました.これはいかにも,上に書いたような「オシロが買えなかったトラウマ」を持つ元青少年向けのオモチャで,プロの道具とは一線を画すものですが,なんと言っても1万円以下で買えるとあって,つい香港の通販業者のウェブサイトでポチっと買ってしまいました.

DSOpackage.jpgパッケージは一応まともです.普通のオシロのプローブを取り付ける BNC コネクタは,この小さなオシロ本体には付ける部分がないので,アダプタも一緒に買いました.FedEx で送ってもらえば速かったのですが,ケチって普通の航空便にしたら年末年始の通関のこともあったのかえらく時間がかかってしまいました.

サンプリングレートが 1MHz と遅いため,実用的に観察できるのは 100kHz ぐらいまでの波形でしょう,ですがオーディオ信号の観測には十分です.それより1チャンネルしか入力がないのがオシロとしては残念ですが,まあ,信号来てるかな?というノリで使う分は問題ないと思います.屋外での装置のチェックや,潜り込んでの作業では意外と役に立つかも知れません.

NTSC.jpgNTSC ビデオ信号を観測した様子はこのようになります.カラーサブキャリアは 3.58MHz ですのでもちろん観測できません.1周期(水平同期周波数)は 15.75kHz なので,写真のように明暗変化はそこそこ観測が出来ます.

テスターでは信号の状況はチェックしがたい場合が多いのですが,逆にこの DSO nano には DMM の機能はないので,抵抗値や導通のチェックは出来ません.まじめに使うならやっぱり,フルークの DMM 統合スコープメータなんかがいいんでしょうね.まあ,ヒトケタ以上は高くなりますが...

contents.jpgさすがに技術者向けの機械だけあってか,商品は完成品としては届きません.付属の充電式電池をコネクタで接続し,筐体内部に納めてから,両面テープで背面パネルを貼り付けるという作業が必要です.このあたり,好意的に解釈すれば技術者向けですが,まあはっきりいってキワモノガジェットの香りもプンプンします.早速,サードパーティ製のファームウェアも出回ったりしているみたいです.

まあ,そういう「実用上の意義」はともかくとして,手のひらに乗る DSO ということの驚き,トラウマの解消,という意味ではなかなか意義深い?オモチャではあります.これを必要なときにさっと取り出してトラブル解決・・といけば格好いいんでしょうけれど,さすがにデジタル時代の今は,なかなかそういうチャンスはないような..
posted by しんさく at 21:33| Comment(2) | TrackBack(0) | 電子モノ
この記事へのコメント
 やはり、この手のモノって帳尻をあわせてしまうものなのでしょうね。幼少年期に欲しかったものは特にそうなのかも知れません。

 しかし小学生から方程式、中学生でコンピュータなんて、さすがにもう末は学者かエンジニア間違い無かった訳ですね。

 私は何をしていたのかなぁと思い出してみれば、友達と「タイガー・ロケッティA」という個体ロケットエンジンを買ってきて、打ち上げて遊んでいました。岡山の天体物理観測所へ見学に行ったりもしましたねぇ。
Posted by たのけのあむら at 2010年01月10日 00:12
ははは,帳尻,そうですね,他のみんながスポーツだアレだと充実した青春時代を送っていたときに,暗い個人的趣味に走っていたわけで,そりゃ取り戻したくもなるというものです ^^;

それにしても個体ロケットとはこれまたロマンのあるものですねえ.そのうち背中にくくりつける個人用ロケットを買っちゃわないようにお気を付けください..
Posted by しんさく at 2010年01月10日 22:27
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