もとはといえば、推力(風量)増大機構を試してみようと購入した「羽根のない扇風機」(Amazon で 1,880円)でした。そもそもはこの筐体にしか興味はなく、また使ってみると音の割に風量が微妙なので、ちょっと試してみてからすぐに分解してみました。するとびっくり・・・円筒形の筐体なのに、中からは四角いファン(でもやっぱり羽の部分はは当然、円形)が出てきました。そうです、放熱のためにデスクトップパソコンのケースに取り付けられるケースファンです。しかしさすがに扇風機として使おうというもののため、結構ハイパワーなモデルのようす。どうせならとそのへんにあった発泡スチロール箱につけて見るとうまく浮上し、小さなモバイルバッテリーを載せた状態でもなんとか浮上します。じゃあこれでもホバークラフトを作ってみよう、と悪乗りを始めました。
本体は、さすがに四角い箱のままもないだろうと思い、ちょっと凝った構造に挑戦することにしました。それは「ペリフェラルジェット式(周辺ジェット式)」という形式で、船底の周辺部から内側向きに、斜めに気流を吹き出す方式です。この気流の流れにより外へ漏れようとする気流をせき止めようとするもので、過去にはスカートなしのホバークラフトでも試みられたことがあるようですし、現在のホバークラフトでもスカート内部の気流は同様の流れになっています。ホームセンターで25mm厚のスタイロフォームを買ってきて、3枚重ねにすることにしました(1畳分が990円でしたが、使うのはその 1/4だけです)。これを壊さないようにペリフェラルジェットの経路をかこうするのにはかなり骨が折れましたが、なんとか完成。重ねて発泡スチロール用の接着剤でしっかり止めてから再度、外装を削って形を整えました。2段目はボディ內部の空気溜まりを作る部分で、最上段がファンを載せるとともに蓋となります。今回もファンは1つで、ファンの下部 1/3 ほどの領域を浮上用に、残りを推進用に用いる、一人乗りの小型ホバークラフトなどでよく見られる形式です。
ローコスト化が条件で、また、ファンの能力が乏しいので重量削減も重要です。そこで、専用の充電器を買わなくてもよいモバイルバッテリーを使うことにしました。しかし1つ問題が。それは、ファンは12Vを要するのに対しUSBは5Vしかないことです。そこでネットで検索すると、12Vに昇圧するケーブルが売られていました。Amazonで送料込み699円と非常に安い上、回路部分はUSB端子部分に収められていて小型軽量。しかもその端子部分も簡単に分解できるようで、電流値も条件を満たし、今回の目的にぴったりです。USB端子からはラジコンの受信機とサーボを動かす5Vを直接引き出し、12Vはファンへと接続しました。また、方向舵を動かすサーボも必要です。これも軽くしたいので、やはりAmazonでたった9グラムのマイクロサーボを購入しました。こちらも驚きの5個入り1,599円ですが、これだけあればまた他に作りたいものが出来ても、再利用することなく惜しげもなく使えます。受信機はさすがに高いのでリーフブロアー用と共用します。方向舵は厚紙で作成しました。
そして試運転しました。まずはペリフェラルジェット式の能力を測るべくスカートなしで試してみましたが、テスト時の発泡スチロールの箱に比べて少し重くなったこともあって、浮かないことはないですがあまりスムーズではありません。しかたがないので今回もスカートを付けました。ただし今回はペリフェラルジェットが効果的に働くのでスカートは中央から引っ張るバッグタイプでなく、真ん中に大穴を開けた周辺部だけのタイプとしました。
動作の様子です。モーター式で、しかもかなり静かなので気兼ねなく室内で走らせられます。リーフブロアー式ホバークラフトは偏向ノズル式でかなりステアリングが効いた上、重量物が中央に集中しているので操縦はそれなりにできましたが、今回のものは舵の効きが悪い上によーモーメントの収束が弱く、非常に運転が難しいです。まっすぐ走らせるのも一苦労。しかしその分面白いともいえ、一度、大きな体育館などで走らせてみたいところです。
今回用いたケースファンは一辺が92mm、厚みが25mmの、いわば中型のタイプですが、筐体には 12V 0.45A とあります。0.45Aはこの手のファンとしてはかなり強力なタイプとなります。メーカサイトでも型番(HDH0912VA)が同じものは見つかりませんでしたが、命名ルール的にはHDB0912VAの流体軸受バージョンのようです。その場合、風量は2.24m^3/min、静圧値から求めた風速は約 11.8m/sec となりました。かなり強力なタイプと言えますので、同様の構造でホバークラフトを作られる場合はできるだけハイパワーなタイプを選んでください。
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