そもそもリーフブロワーは風量よりも風速を重視して作られています。この場合、静止時の推力は大型の扇風機のような風量の大きいものよりも不利になってしまいます。推力は運動量、つまり単位時間あたりの空気の質量と風速の積で決まりますが、運動エネルギーは風速の2乗に比例するため、風速の速い送風機は推力の面では不利なのです。なので旅客機のエンジンには戦闘機のエンジンとは異なり外周にファンが付いたターボファンエンジンが用いられています。自動車で言えば、戦闘機は1速のローギアでなく2速や3速で発進しようとしているようなものだと言えます。
もう1つはブロワーの性能による問題です。ブロワーは出口を絞ると風速が上がりますので、リーフブロワーでは先端がある程度細くなっています。しかしそれでは細くするほど風速が上がるのかというとそうでもなく、ある程度以上絞っても風速が上がらなくなります。上の図は、今回使用しているリーフブロワーとほぼ同等の性能と思われるブロワーの特性曲線を関数近似したものです(二次関数で非常によく近似できます)。横軸が風量となっており、出口を絞るほど風量が小さくなりますが、その割に風速、圧力(風速の二乗に比例)ともにさほど変化がないことがわかります。推力を得るためにはできるだけ出口を絞らずに使うほうが良いことがわかりました。
そこでこのブロワーをホバークラフトに取り付けたときにどうなるか計算してみました。前述したように、浮上用のエア配管は細いものしか見つからなかったので、直径が3cmしかありません。なのでこの直径を固定し、別途設けた推進用の開口径を変化させてプロットしたのが上の図になります(配管などの損失は無視しています)。推進用の口径を大きくするほど流量が増えますが、最初の図のように圧力や風速はさほど落ちないため、浮上にまわる風量もさほど変化しません。よって浮上高の変化はわずかですが、推進用のエア流量は大きく変化するため、推進力は大幅に変化します。先日の実験では推進用のノズルが浮上用の配管より細かったために、紫色で示したあたりの動作になっており、推力はわずかに 2.6N (270gf) 前後という僅かな値になっていたようです。すでに製作した偏向ノズルは推進用の開口径が10cm^2ほどあるので、ちょうどブロワ仕様あたりの条件になり700gfほどの推力(よって 1m/s^2ほどの加速力)が得られそうです。実際にはもっと開口径を増やしたほうが良いようですが・・
スロットル制御を付けないと止まれないので,まずはそのまま走らせてみようと思っていますが、興味あるテーマとして風力増大機構があります。ダイソンの「羽根のない扇風機」は高圧(高速)だが風量の乏しい気流で周りの空気を巻き込み、扇風機らしい風量と風速を得ています。同じものをリーフブロワーに付けたら風量が増えるはず・・と思いつつ、さすがにダイソンは買えないので、これまた2000円もしない怪しげな商品を買ってみました。空気の巻き込み口を塞いだり開放したりして試してみたのが上の動画です。スリットがかなり太く、あまり高速なエアは出てこない構造になっていますが、それもそのはず、開けてびっくり、丸い筐体ですが、中にはPC用の角型の冷却ファン(90mm角、12V 0.45A のブラシレスファン)が入っていました。ですがそれでもそれなりに効果があるようです。
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