参考
http://eps-r.hatenablog.com/entry/2017/11/16/welte
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/shop/1507605776
入手してから1週間でざっと試写,テストを行いました.ここでは実写結果を幾つか挙げつつ,ひとまずのまとめをしたいと思います.
現在のところ,Light L16 のセールスポイントは,高解像度な写真を撮影できることと,撮影後に被写界深度を調整できることの2点だといえます.被写界深度の調整は前に紹介した LYTRO のカメラでも可能でしたが,出力される写真の解像度はかなり低く,SNS等への投稿には使えても,メインのカメラとしてはとても満足出来るものではありませんでした.それに対し,Light L16 では高い解像度のまま背景をぼかすことが出来ます.輪郭の形状が複雑な被写体や,髪の毛やロープのように細いもの,向こうが透けて見えるものではうまく動作しないことが多いのですが,乱雑な室内の写真等で背景を省略してSNSに投稿するような場合にはそこそこ使えるのではないかと思います(手作業で背景をぼかしたりしている人もいるぐらいですので).ソフトウェアに対する依存度が高いので,これからの発展に期待がかかります.
高解像度な写真の撮影については,多くの人にとって過剰とも言える性能があるのではないかと思います.そもそもこんなに解像度の高い写真が必要なことはあまりないのですが,解像度の高さ(画素数の多さ)は余裕に繋がります.縦・横それぞれ半分の解像度に落としても1300万画素程度の画素数となりますが,そうすると画素ごとの画像のキレ(画素値の独立性)は大変高くなりますし,ノイズも軽減されます.この場合でもやはり,髪の毛や木々の枝の向こうに別の建物が写っている場合など,複雑な形状を持つ部分ではうまく合成ができない場合がありますが,元となる1300万画素の広角画像を破綻させるような処理は行われないので,一定の画質は確保されており,あまり不安なく使用できます.
では,このカメラはずばり「お勧め」なのでしょうか?現状では万人に勧められるわけではありません.画像はPC上で処理するのが前提で,カメラ内部で生成される画像は低解像度の画像に限られ,このカメラを使うメリットがありません.画像ファイルは1カットあたり150MBほどあり,ディスク容量を圧迫する上,専用ソフトでの処理にもかなり長い時間(分単位)がかかります.得意な被写体とそうでないものとの画質差が大きい点や,高画質が得られる画角が限定されること(35mm, 75mm 時に最も高画質な画像が得られます),薄型ではありますが大柄で,思ったほど軽くないこと,などもあります.フルサイズ一眼レフやミラーレス一眼,1インチセンサを搭載した高級コンパクトデジタルカメラ等を一通り所有して使っているが,それらでは飽き足らない人に向いています.これらの「既存のカメラ」の穴を埋める(かもしれない)カメラという認識が現状としては正しいと思います.
海外では「DSLR(デジタル一眼レフ)キラー」などと誇張して報じられたこともあって,厳しいレビュー記事も多く見られます.従来の物差しで図るとまだまだ,よちよち歩きの赤ん坊だと思いますが,個人的には,このような変わったカメラがあることが嬉しく,また応援したいと思っています.
最後に,得意とするもの,不得意な条件,などについてまとめておきます.
【得意な条件】
- 遠景の風景.カメラの配置による見え方の違い(視差)がなく,画像の合成がうまくいきます.明るい昼間だけでなく,天気の悪い日や夕暮れぐらいまでならISO感度が上がりにくく,画質の低下もありません.
- 少し暗いところでの中望遠域での撮影.フルサイズ一眼レフ等では被写界深度が浅くなりすぎるケースがありますが,それに対してピントの深い写真が撮影しやすい.スマートフォン等では広角レンズでの撮影しかできないし,コンパクトデジタルカメラでは望遠にすると暗くなるものが多くなりやすい.それに対し,小型センサ用の明るい単焦点望遠レンズを備えたカメラは珍しく,意外な強みと言えます.
【不得意な条件】
- 複雑な形状を持った物体.カメラの位置により見え方が違うため,広角画像に対し望遠画像がうまくマッチせず,解像度が低いまま出力されてしまう領域が発生します.近距離ほど顕著になります.
- 非常に暗い場所での撮影.画像にノイズが乗ることにより広角画像と望遠画像の対応付けができなくなり,やはり解像度向上効果が得られなくなります.
- 被写界深度を調整する際に,被写体に細長いものなどがあると,それが欠けたり,その近辺の背景が不自然にシャープになったりします.
- 焦点距離(画角)は28-150mmの間で自由に設定できますが,もっとも画質がよいのは35mmと75mmの2箇所です.それより望遠寄りにしても周囲がクロップされるだけで解像度は上がりませんので,ズームする意味がほとんどありません(搭載されているレンズが全て,単焦点レンズなので,ある意味,当然の現象ですが).また28-35mm, 70-75mm の間では,画像の周囲部分を望遠レンズがカバーしないため,周辺部分に解像度が低い領域が現れます.中央の35mmないし75mmの画角内はシャープなので,35mm, 75mm までズームアップしなくても切り出せば同じことなのですが,拡大すると不自然に見えることがあります(縮小すると境界線は分からなくなります).1例としてこちらの写真(28mm相当)をご覧ください.
撮影例をこちらにまとめているので,よければご覧ください.
タグ:Light L16
Light16のレビュー興味深く読みました。
当方Lytro持ってまして、これは面白いだけで終わってしまった凄いカメラでした。
けれどもLightL16に関してはまだ触れてないので、実際のところどうなのか興味深々です。
文面に「不向き」な画像についてコメントありましたが、どの程度良くないのか、差支えなければ見せて欲しいです。
Lytroの場合は主に5枚の画像を合成する仕組みでした。
こちらもそのような考え方でしょうか?
専用ソフト以外で処理は可能ですか?
色々質問してすみません。
よろしくお願いします。
CM
私もLytro(初代)を持っており,職場では実験用にIllumも買いました(自分の仕事というか,専門分野がこの界隈ですので・・).もうLytroはやめてしまって残念に思っていたのですが,Light L16は新しい希望です.
ご質問の点ですが,はっきり言って,背景ぼかしはまだ,一般の写真撮影用途としてみると,実用レベルにはないといって過言ではありません.入り組んだ部分では奥行き推定が間違って,ボケるべきところがはっきりした絵になりがちです.また実例をいくつかアップしますので,少しお待ち下さい.
Lytroは画質(解像度,つまり画素数)がよくありませんでしたが,背景ぼかしについてはあまり破綻しない仕組みでした.実質的な「視点数」が多く処理が単純だからですが,Light L16は逆に,画質は良いけれども,背景ぼかしについては処理が複雑で破綻しやすい特性があります.iPhoneなどでもデュアルカメラで背景をぼかす機能がありますが,これもうまくいかないケースがあります.それと同じような感じです.これからの改善に期待したいところですが,ここのところソフトウェアアップデートがなく,最近の動向が気になっています.
将来的にはデータ・フォーマットを公開すると言っているので,そうなれば他のソフトでも処理ができるようになるかもしれませんが,いまのところまだ実現していません.
今のところ Light L16は,薄型の割に解像度の高い画像が撮れる,またズームができるというところを主眼にしたほうががっかりせずに済むと思います.
Androidアプリは入ってる、若しくは導入できるのでしょうか?
(Google ハングアウトが入ってるスクショを見たので)
Googleフォトを入れて自動アップロードが出来れば便利だなぁ〜と思ったので。
Light L16そのものは本当に素のAndroidという感じですが,アプリを入れるには少し工夫が要るのではないかと思います.まず,「Playストア」や「Android開発者サービス」が入っていません.開発者モードには入れますので,試していませんが,USB経由でのインストール(開発者用コマンド adb を使い,adb sideload 等でのインストール)はできるかもしれません.なお,Androidのバージョンは Marshmallow (6.0) です.
ご丁寧な回答ありがとうございました。