2020年08月30日

単3充電池の自動充電器を自作しました

突然ですが、エネループなどの単3型充電池の充電器を作りました。しかし、ただの充電器ではありません。電池を流し込んでおけば順に自動セットして充電してくれるというものです。こういうものにはすでにいくつか市販品があり、最近は廉価なモデルも出たのですが、それでも9,000円ほどと結構なお値段。なくても済むということもあって手を出さずにいましたが、ふと、作れるんじゃない?と思って作ってみました。ネットで検索すると海外も含めて自作例が見当たらなかったことも後押しになりました。

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電池を取り込んでセットし、充電後に排出する部分は3Dプリンタで作ります。中央の円筒に電池がはまるようになっていて、その円筒をサーボモーターで回転させることでこれらの動作を行います。充電器は手持ちの中から、もう使っていない古いものを使い、その充電ランプを micro:bit というマイコンで読み取り、サーボモーターを制御します。

作り始めたのは平日の火曜日の晩。晩ごはんの後に開始し、円筒と枠の部分を設計・造形して試してみたら、案の定といいますか、電池が詰まりやすくて使い物になりません。早速ものづくりの洗礼を受けたな、と思いながら、翌日、円筒にコブをつけて余計な電池をかき分けるよう設計修正し、毎回確実に電池がセットできるようになりました。木曜日(仕事が休みでした)の午前には電池の接点を作り、充電ができるように。その後、外装(筐体)を設計・造形しつつ足りない部品を注文し、それが届いた金曜日の晩にはほぼ完成。土曜日に細部を整え、動画を作って完了という、1週間にも満たないプロジェクトでした。

せっかくなので、これまでは手抜きの極みだった(というよりも、このブログに差し込むためだけだった)動画について、BGMやテロップも入れてきちんと作ってみました。ぜひ音声ONで御覧ください。



いろいろと書かずとも、この動画を見ていただければすべてわかると思います。今回、感心したのは micro:bit の便利さ。特に開発環境のブロック式のプログラミングは、「こんな面倒くさそうなもの使うか」と思っていたのですが、それがそうでもなく、ミスが未然に防がれる作りになっていて感心しました。最初からサーボモーターを制御するブロックもあり、とても標準的な作りと言うか、変わったテクニックはまったく必要なく、各電池の充電時間を記録・表示する機能なども簡単に組み込めました。

設計データやプログラムは全てダウンロード可能です(YouTube 動画の説明欄にリンクがあります)。材料は、廃品の充電器を利用するなら、最低限購入する必要があるのは micro:bit(約2000円)と小型サーボ(約250円)に、3Dプリンタのフィラメント(約400g, 約1000円)ぐらい。筐体部分は精度を必要としないので、木工などで作るのも楽しいと思います。ぜひ作ってみてください。
タグ:3Dプリンタ
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2020年08月21日

ボクスターのドアノブのぐらつき タダで直せます

毎日の猛暑で、テレビでは危険なので外出を控えろと繰り返されています。そんな中、通勤先に到着して車から出ようとすると、内側のドアノブ(ドアを開くときに引っ張る銀色の部分)の感触に違和感があり、手を離しても元の位置に完全には戻らず、グラグラになりました。中で何かが折れたのだろうと、ネットで検索すると案の定。このころのボクスターやケイマン、911(987, 997)では定番の故障らしく、多数の情報が見つかります。ドアノブを引き込むバネを支えるプラスティックパーツが折れてしまうようです。さすが、ポルシェは徹底的に軽量化を図っているということですね笑(笑 の意味は後述)。

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そこでドア内張りを剥がしてみると案の定、フックの部分が壊れています。ただしネットでよく見るのはバネの押さえが折れるケース。それに対し、うちの場合はなんと回転軸そのものが折れていました(赤の両矢印)。さらに根元にもクラックがあります(青の矢印)。ともあれ、この折れる方の右のパーツは稚拙な設計で、頑丈な左のパーツと同じ人が設計したとはとても思えない、CADの初心者が設計したような形状をしています。

さて、このパーツを取り出すため、ドア内張りを剥がすだけでも一苦労です。ですので、普通は部品を手配してから作業すべきところですが、なぜその日のうちにすぐバラしたのか。それはなんと、このボクスター、「こういうこともあろうかと」予備の部品を最初から搭載しており、交換部品がなくても修理できるのです。さすがポルシェ!・・青矢印の指した部品をよく見てください。この部品、左右対称になっています。なんと左右のドア2個分を1つの金型で済ませるために、左右対称にすることで部品を共通化してあるのです。(ただし、上の写真に写っている2つのパーツとバネが組み立てられた状態で左右それぞれに1つの部品番号が与えられていて、バラバラには買えないので、在庫削減効果はありません)。つまり、反対側に出っ張った軸やバネ受けなどの突起は全くの無駄・・・いや、予備部品としてこれから使うので文句は言えませんね。

これをみて「ああ、いつものポルシェのやり口だな」と思った人はポルシェに詳しい人だと思います。ポルシェは水冷化の時期(つまり986 型のボクスターと996型の911の時代)から、やたらと部品共通化によるコストダウンを図っているのです。例えば大物ではエンジンのシリンダーヘッド周りが左右バンクで共通になっています。ヘッドブロックそのものは部品番号としては別になっていますが、ほぼ同形状で、これは金型が共通で機械加工が異なるためのようです。なおヘッドカバーやカムホルダー・ヘッドガスケットなどは左右が部品番号からして共通です。このために左右バンクでカムチェーンが前後に分かれており、それを駆動するために悪名高きインターミディエイトシャフトが必要になっているのですが・・またサスペンション周りでも、当初はハブキャリアがフロントとリアで共通部品(前後逆に配置、つまり対角線方向に共通)だったり、ロアアームに至っては前後左右4つが共通でした(これも時期によって設計変更され別部品になっているものもあります)。そもそも、値段が倍ほども違うボクスターと911で、前席から前はかなりの割合で部品が共通であることはよく知られており、大衆車に比べ少量生産であるハンディをできるだけ克服しようとした形跡が多く見られます。そのため、必ずしも軽量化が最優先にされているわけではないのです。まあ、これらのコストダウンの成果により、アルミ製のサスペンションアームなど、高価な素材が使用できている側面はあります。

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ともあれ、長くなりましたが、修理は簡単です。左右のドアノブのヒンジを取り出し、この折れたパーツを左右で入れ替えるだけです。もっとも、この部品は3,000円程度だそうで、左右の内張りを両方とも剥がすのも面倒なので、部品を買ってしまうほうが早いかもしれません。ただし、現在の部品は設計変更されており、ボーデンケーブル(ロック機構とドアノブを結ぶワイヤー)も同時交換が必要で、このワイヤーの交換はかなり面倒です。またこの折れた部品だけを換えるにはヒンジの分解組み立てが必要で、バネが硬いので、細くて丈夫な丸パイプを使うなど工夫して作業する必要があります。

こんな方法で部品を買う必要も、到着を待つ必要もなく、壊れたその日の晩に修理完了となりました。しかし製造から10年以上暮れており、距離も13万キロ近く。あちこちの樹脂部品がかなり劣化しています。そのうち結局折れてしまって交換することになる気もします。
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2020年08月16日

ホバークラフトを作ろう(14)新コンセプト機

せっかくの夏休みの時期ですが、新型コロナウイルスの再流行に加えて、連日の猛暑。帰省もせず、遊びに出かける気にもならず、お盆休みはほぼ、じっと家にいました。で、新しいホバークラフトが出来ました。

レース用ホバークラフトと同様の、大型ファンを後方に向けて推進用と浮上用に分流する設計のものはいくつか出来たので、今度は全く異なる設計にチャレンジすることにしました。レーシングホバークラフトでは浮上しようとすると同時に推力が生まれるので、浮上したままその場でじっとすることは出来ません。静止できる方がむしろ浮上感があるとか、狭いガレージで遊べるとかいうこともあるので、今度は推力を0にできる構造にします。

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例によって Blender で試行錯誤しながら上の図のような機体を設計しました。中央には縦にエンジンとプロペラを置き、気流をボディ内部に吹き込みます。その気流をボディ底の周囲から吹き出すことで浮上します。空気をボディ内側に向かって斜めに吹き出すことでボディ下部の圧力を漏れにくする、スカートレスホバークラフト構造としました。またボディ内部には後方の吹出口(推進用)に加え、ボディ前方に、左右向きに空気を吹き出すことで向きを変える仕組みを組み込みました。ボディ後方に舵をつける設計では、右に曲がろうとしたときに一時的に反対向き(左向き)にボディを押すことになりますが、前方なら自動車が前輪で舵を切るように向きを変えたい向きに力を加えることになり、無駄がなくなるためです。空気の吹き出し量は前後ともにロータリーバルブ式とし、後方の推進用は横軸、前方の操舵用は縦軸でバルブが回るようにしました。

設計ではこのような仕組みだけでなく、いかに軽さを保ちながら強度を出すかという点が問題になります。複雑な構造のために重さがかさむので、外皮の造形は1層だけにしますが、それでは特に縦方向(積層方向)の強度が非常に乏しくなります。実際に、縦の柱はほとんど強度が出せなかったので、造形パラメータを変えることでより強度の高い別部品を作って接着したり、UVレジンを塗布して強化する必要などがありました。また、3Dプリンタで造形しやすい構造にすることも重要です。極端なオーバーハングがあると造形が難しくなるため、できるだけオーバーハングは45度以下となるよう設計しました。今回はボディを上下の2枚に分け、上ボディは転置逆にして造形します。3Dプリンタの造形範囲の問題でボディサイズは縦28cm、横26cmです。

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他にもいろいろと考えるべきことがあります。バッテリーを内部に装着する作業はプロペラが止まっている間にできますが、エンジンが掛かってしまってからは内部に手を出せないので、燃調を調整するニードルを操作できるよう、底に最低限の窓を空けました。また、燃料の供給を簡単にするため、パイプで真上から給油できるようにします。このパイプは同時に、燃料をタンクに十分に満たせるようにする役目も果たします(パイプがないと半分ぐらい入れたところで溢れてしまう)。グローヘッドを加熱する電源は普通、クリップで装着し、エンジンがかかると取り外しますが、それができないためヘッドに配線を固定してしまい、ボディ後部にコネクタを設けて電池を接続できるようにしました。上の写真ではエンジンが直接ボディに装着されていますが、これではやはり強度が不足するため、これも最終的には密度を上げた別パーツを作ってそれにエンジンを固定するようにしています。


設計からテスト走行までを動画にまとめました。今回のホバークラフトではいろいろな懸念がありました。大きさが小さく、特にボディ下面の風圧がかかる領域は 500cm2 程度しかありません。ファンの風圧に対してさほど余裕がないため、ボディを気流が通過するときの圧損を考えると浮上しないのではないかといった懸念のほか、推力の不足や、推進しようとすると圧力が逃げてボディが接地してしまうのではないかといった基本的な問題。さらに、ファンが縦軸周りに回転しているため、ボディが逆に回ってしまうという問題が考えられました。試運転の結果、浮上性能には問題がないことがわかりましたが、やはりボディは回ってしまいます。ファンの上に、気流を補正する静翼をつけたところ今度は反対向きに回ってしまう始末。その加減もいろいろな状態で変化するようで、静翼で調整するのは難しいと考え、ジャイロを搭載して自動補正するようにしたところそれなりに真っ直ぐ進むようになりました。

しかし問題がまだいろいろ残っています。最大の問題はエンジンの安定性。そもそも縦向きにして使うことが考慮されていないエンジンのため、動作しないことはないのですが、燃調が不安定となり、エンジンが掛かりづらいほか、かかった後でも急に止まったりします。このタンク一体型のCoxエンジンはニードルがタンクの後ろ(縦置きでは下)にあり、燃料の圧がかかるのが問題のようで、最終的には TeeDee のような向きに対して強いエンジンに載せ替える必要がありそうです。他に、ボディが浮上方向に振動する問題も発生しました。吹き出し気流の慣性のため、ボディが下がると急に反発・急上昇するようです。静止時はかなり振動しますが、推進するとましになること、またエンジン搭載位置(高さ)を5mmずらすだけでかなり挙動が変わったため、チューニングが必要のようです。どうも少し重さを増やすだけでも改善しそうですが、いずれにしても調整の必要があります。推進力はそれなりにありますが、方向を制御するための気流が弱いとか、内部の電装系が油で濡れるため搭載位置を変えたいとかいろいろありますが、とにかく今は暑すぎます。室内でエンジンを掛けるわけには行かないためガレージで動かしていますが、少し動かすだけで汗だくに。室内で動かせないエンジン機の続きは、涼しくなってからにしようと思います。
posted by しんさく at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン