2020年07月12日

ホバークラフトを作ろう(11)初号機の課題

エンジンや舵のマウントだけでなく、本体も3Dプリンタで作ったホバークラフト。意気揚々と?試運転してきましたが、散々でした。課題山積です。



試運転動画です。実はエンジンがかかるまでに10分ほど難儀してしまいました。今回、エンジンを横倒しにしたのですが、そのために燃料ニードルの設定変更が必要になったようで、以前の設定では燃料がジャブジャブに。1回転以上閉じたところでちょうどでした。燃料を入れるパイプが横向きになることもあって燃料の入る量が少なく、また遠心力がかかると漏れ出るようで、走行可能時間も短くなり、結局、エンジン部分は横倒しでもタンク部分は元の姿勢がいいということがわかりました。しかし現在のボディは020エンジンを前提にした高さになっているので、049エンジンは今のままでは正立姿勢では取り付けできません。検討が必要です。

そして一番問題になったのが操縦性。曲がろうと舵を切っても、ホバークラフトがスピンするだけでほとんど曲がってくれません。全体に重さが増したためにヨーモーメントが増えたこともありますが、どうも重心が後ろすぎることも問題のようです。走行時の風圧を受ける中心が重心よりも前にあるので、ボディが進行方向に対して少し横に向くと、さらにどんどん曲がる方向に回ってしまいます。內部の構造の都合でエンジンの真下に受信機・サーボのバッテリーを積んでいるのですが、これをもっと前に積まないとならないようです。さらには、方向舵だけでなく、飛行機の垂直尾翼のような安定性を増すための固定翼も付ける必要があるかもしれません。要するにボディはある程度、自然に進行方向を向くような特性がないと、とても操縦できない感じです。

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そしてもう1つ、伏兵とも言える問題がこの受信機用のバッテリーです。ラジコンの受信機には5〜7V程度の電池を繋ぐ必要がありますが、ラジコン専用のバッテリーは割高なだけでなく充電器も特殊で、電池側には過充電等から保護する機能もついていません。管理が面倒なので、スマートフォン用のモバイルバッテリーの中から小型軽量のものを探して、先にラジコンの端子を付けて使っていました。これでこれまで問題なかったのですが、今回サーボを2つに増やしたところ電流または電圧が不足するようで、すぐに電源が落ちてコントロール不能になってしまいます。やむなく今回はスロットルのサーボを外して走らせたので、せっかく作ったスロットル制御は活用できませんでした。

049エンジンはちょっとパワーがありすぎるので、小さい方の020エンジンでも試してみたのですが(動画を撮り忘れました)、こちらはこちらで問題あり。同様に重心が後ろすぎることもありますが、ホバークラフト本体の重さが増加したためにアスファルト路面ではいまひとつスムーズに走りません。前述のモバイルバッテリーと受信機(7g)を外して走らせたらスムーズだったので,このたった70g少々が分水嶺のようです。実際、
こちらで紹介した Excel での計算でも最大荷重は620g、それに対して現在の自重が500gでほとんど余裕がないですし、前の筐体よりも外寸が小さくなったので最大荷重はさらに小さくなっているはず。奇しくも計算がほぼ正確であることがわかったわけですが、いずれにしてもなんとかしなくてはなりません。よく似たエンジンとはいえ、排気量が2.5倍も違うという事実を目の当たりにしました。もう少し軽くなるように本体を作り直してもいいですが、いずれにしても安定な制御ができるよう、軽い電池を調達することにしました。あわせて、電池をもっと前方に取り付けられるようにして、重心の問題も改善することにします。続く。
posted by しんさく at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

ホバークラフトを作ろう(10)Coxのスロットル制御

Cox のエンジンはそもそもコントロールライン(Uコン)用ですし、そもそも小排気量なので、常時フルパワーで回転させる前提になっています。そのためスロットルがついておらず、回転数の制御ができません。今回作成しているホバークラフトでは、0.3cc の Cox PeeWee 020 エンジンだとそれなりにバランスしており、空き駐車場などで手軽に遊べる程度の加速力です。それに対して0.8cc の 049 エンジンを使った場合、ちょっと加速力がありすぎて持て余すことがあるのと、緊急時に停止できたほうがいいなと思えることがあります。そこでラジコンらしく、エンジンの制御ができるようにしてみます。

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Cox にもいろいろなエンジン制御の方法があります。タンクが別体式のものでは、吸気口のところにロータリーバルブを取り付けるようなオーソドックスな構造のものがいくらか見られます。また面白いものでは、排気口を塞ぐパーツを取り付け、これを回転させて排気の抜けを変えて回転数を制御するものもあります。しかし、タンク一体型の Cox では吸気側に配管などがなくスロットルを取り付けるのが困難でした。・・という状況のところ、背面の吸気口に針を出し入れすることでエンジンの回転制御をする方法が発案され、現在ではCox Internationalで部品を購入することが出来ます。これを試してみることにしました。

ちなみにタンク內部の燃料吸入パイプは、コントロールラインでは強い遠心力がかかることを前提に、側面(正面からみて9時方向)から吸入するようになっています。なので他の目的に使うときには配管を動かしてタンクの底から吸うようにするのですが、今回は020エンジンと高さを合わせるために、エンジンを横倒しで使うことにしました。このとき燃料吸入パイプは、上の写真のようにUコンと同じ設定に戻しておく必要があります。



テスト動画です。エンジン回転が不安定になりやすいマフラー閉の状態で試してみました。このスロットルを装着してもニードルを差し込まなければ元のエンジンのままですので、始動性に影響することはありません。そしてニードルを挿入すると回転数が下がります。ニードルの形状によるはずですが、敏感すぎることも、また鈍感なこともなくいい感じに制御ができ、エンジン停止も可能です。操作に必要な力もわずかで(吸気圧で少し吸われる感じがします)、小さいサーボで簡単に制御できそうです。

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エンジンの後ろにサーボを2つ固定するホルダーを、新しく届いた耐熱性の高い素材PETGで出力し組み込みました。これで完成です。スロットルは始動がしやすいようノータッチではフルパワーとし、ラジコンのスロットルをバック側に動かすとエンジン回転数が下がる設定にしました。梅雨で雨が続き、まだ試運転できていませんが、エンジンの能力的には問題ないはずです。試運転が楽しみです。

posted by しんさく at 02:10| Comment(2) | TrackBack(0) | ラジコン

ホバークラフトを作ろう(9)大きい3Dプリンタを導入しました

これまでのホバークラフトは、自分としては(それなりに見た目は整えているものの)実験機やプロトタイプの扱いでした。いろいろパーツやノウハウも貯まってきたので、ここいらでいっちょ、ちゃんとしたものを作ろう。発泡スチロールではなく・・・と思いながらいろいろと構造を検討していました。

先日来実験していた、紫外線硬化樹脂にガラスファイバーを混ぜるのもその一環。細かなパーツの強度を上げられるだけでなく、発泡スチロールの外面に塗布することで傷を予防し、見た目もFRPっぽくならないかという目論見がありました。もちろん普通の、ガラスファイバーのクロスやマットを樹脂で固める方法も検討したし、発泡スチロールカッターも作ったのですが、やっぱり最終的な形状は型の出来不出来によるし、樹脂やクロスを買うと結構なコストになります。重さを軽くするのも結構、技術がいりそうです。

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そんなこんなで、結局、大きい3Dプリンタを作ったほうが簡単確実に思い通りの造形ができる・・軽さも出せそう・・という結論に至り、買いました。前の光造形方式のものと同じメーカの ANYCUBIC MEGA X です。どうも今年新発売になった機種のようで、たくさん売れている兄弟機 MEGA S の大型版といえるものです。最大造形サイズは一辺30cmの立方体までとなっています。

なぜ急に3Dプリンタになったのかというと、海外の方の動画で、3Dプリンタでラジコン飛行機を作った例をいくつか見たためです。1つはこちらの動画で、いろんな素材・パラメータで出力して強度試験をしながら、軽量でありながらできるだけ強度が出るようなプリントを追求しています。もう1つはこちらで、3Dプリンタの出力だけでなく、カバーフィルムやカーボンファイバーロッドなどをうまく組み合わせることで強度と軽さを両立させています。言ってみれば、バルサなどを使った従来型のラジコン飛行機キットの現代版という感じで、形状データも販売しているようです。これには、必ずしも全てが3Dプリントでなくても、いろいろと工夫することで強度を出せる、ということの勉強になりました。

そんなわけで、これまで自宅の3Dプリンタでは造形サイズの制約が大きかった(2つに分けて出力してから継ぎ目に紫外線硬化樹脂を塗布して固めることで、ほとんど一体成型と遜色ない大型部品も作れますが)ということもあって、大きめのものを買うことにしました。しかしあまり大きくてもビルドプレートの反りの問題があったり、出力物が大きいと途中で失敗する確率も上がるので小分けにして繋いだほうがいいという話もあったので、そこそこのサイズのものにしました。

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もう1つ,新しい3Dプリンタを導入する理由になったのは、造形方式の違いによる出力物の軽さです。光造形方式では中身が詰まった造形が得意ですが、かなり重くなります。それに対して樹脂を溶かして積み上げるFDM方式では、中身を空洞にするのが簡単で、またそうするほうが材料代もかからず、造形速度もずっと速くなります。3Dデータから造形データを生成するのに Ultimaker Curaというソフトを使うのですが、これがまたすぐれもので、非常に多くのパラメータを変えることができ、造形精度、強度と重さのバランスを調整することが出来ます。ですが今回は初回ということであまり軽さを欲張らず、ほどほどのパラメータでホバークラフト本体を出力してみることにしました。造形サイズの限界ということもありますが、オーバーハング部分ができるだけ生じず、かつ、ビルドプラットフォームへの接触面積がある程度確保されるようにということを考えると2分割がよいという結論になり、36x28cmの本体を設計して出力しました。

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強度が高く耐熱温度も高いPETGという素材も購入したのですが、まずは付属のPLAという最も確実性の高い素材で出力。2つのパーツを同時に出力しましたが、36時間ほどかかりました。光造形とは違い、2つ同時に出力しても時間の短縮にはならないので、ミスを考えると1つずつ造形したほうが良かったと思うのですが、結果的にはうまく出力されて一安心。重さも Cura の計算どおりで約330gになりました。まえの発泡スチロール製のものに比べると倍ほどの重さになっていますが、強度も段違いという感じです。体積的には約1Lありますので、もし水上でエンジン停止しても自重を支える浮力は十分にあります。

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ボディの前半と後半は接着剤で止めてもいいと思いますが、前述の飛行機の例を参考にして、竹の丸棒(といってもコンビニの弁当に付属していたもの)を差し込んで曲げ方向の応力を受けるようにしました。そして前後の固定には別途ラグを付けておいて、タイラップで固定。十二分な強度で固定できました。內部にX字形の補強材(インフィル)が入っていて、それが外観にも影響しているのですが、これが意外といい感じで気に入りました。

そして、既存のプロトタイプに乗せていた Pee Wee 020 のパワーユニットを装着。生憎の雨天で屋外では走らせられていませんが、ガレージでは快調に浮上して走行できることを確認しました。これで完成、でもいいのですが、実はもう1つネタが残っています。エンジンの制御です。今度はパワーユニットのほうを改良して、エンジン出力をラジコンとして制御できるようにします。
posted by しんさく at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン