2020年07月12日

ホバークラフトを作ろう(9)大きい3Dプリンタを導入しました

これまでのホバークラフトは、自分としては(それなりに見た目は整えているものの)実験機やプロトタイプの扱いでした。いろいろパーツやノウハウも貯まってきたので、ここいらでいっちょ、ちゃんとしたものを作ろう。発泡スチロールではなく・・・と思いながらいろいろと構造を検討していました。

先日来実験していた、紫外線硬化樹脂にガラスファイバーを混ぜるのもその一環。細かなパーツの強度を上げられるだけでなく、発泡スチロールの外面に塗布することで傷を予防し、見た目もFRPっぽくならないかという目論見がありました。もちろん普通の、ガラスファイバーのクロスやマットを樹脂で固める方法も検討したし、発泡スチロールカッターも作ったのですが、やっぱり最終的な形状は型の出来不出来によるし、樹脂やクロスを買うと結構なコストになります。重さを軽くするのも結構、技術がいりそうです。

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そんなこんなで、結局、大きい3Dプリンタを作ったほうが簡単確実に思い通りの造形ができる・・軽さも出せそう・・という結論に至り、買いました。前の光造形方式のものと同じメーカの ANYCUBIC MEGA X です。どうも今年新発売になった機種のようで、たくさん売れている兄弟機 MEGA S の大型版といえるものです。最大造形サイズは一辺30cmの立方体までとなっています。

なぜ急に3Dプリンタになったのかというと、海外の方の動画で、3Dプリンタでラジコン飛行機を作った例をいくつか見たためです。1つはこちらの動画で、いろんな素材・パラメータで出力して強度試験をしながら、軽量でありながらできるだけ強度が出るようなプリントを追求しています。もう1つはこちらで、3Dプリンタの出力だけでなく、カバーフィルムやカーボンファイバーロッドなどをうまく組み合わせることで強度と軽さを両立させています。言ってみれば、バルサなどを使った従来型のラジコン飛行機キットの現代版という感じで、形状データも販売しているようです。これには、必ずしも全てが3Dプリントでなくても、いろいろと工夫することで強度を出せる、ということの勉強になりました。

そんなわけで、これまで自宅の3Dプリンタでは造形サイズの制約が大きかった(2つに分けて出力してから継ぎ目に紫外線硬化樹脂を塗布して固めることで、ほとんど一体成型と遜色ない大型部品も作れますが)ということもあって、大きめのものを買うことにしました。しかしあまり大きくてもビルドプレートの反りの問題があったり、出力物が大きいと途中で失敗する確率も上がるので小分けにして繋いだほうがいいという話もあったので、そこそこのサイズのものにしました。

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もう1つ,新しい3Dプリンタを導入する理由になったのは、造形方式の違いによる出力物の軽さです。光造形方式では中身が詰まった造形が得意ですが、かなり重くなります。それに対して樹脂を溶かして積み上げるFDM方式では、中身を空洞にするのが簡単で、またそうするほうが材料代もかからず、造形速度もずっと速くなります。3Dデータから造形データを生成するのに Ultimaker Curaというソフトを使うのですが、これがまたすぐれもので、非常に多くのパラメータを変えることができ、造形精度、強度と重さのバランスを調整することが出来ます。ですが今回は初回ということであまり軽さを欲張らず、ほどほどのパラメータでホバークラフト本体を出力してみることにしました。造形サイズの限界ということもありますが、オーバーハング部分ができるだけ生じず、かつ、ビルドプラットフォームへの接触面積がある程度確保されるようにということを考えると2分割がよいという結論になり、36x28cmの本体を設計して出力しました。

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強度が高く耐熱温度も高いPETGという素材も購入したのですが、まずは付属のPLAという最も確実性の高い素材で出力。2つのパーツを同時に出力しましたが、36時間ほどかかりました。光造形とは違い、2つ同時に出力しても時間の短縮にはならないので、ミスを考えると1つずつ造形したほうが良かったと思うのですが、結果的にはうまく出力されて一安心。重さも Cura の計算どおりで約330gになりました。まえの発泡スチロール製のものに比べると倍ほどの重さになっていますが、強度も段違いという感じです。体積的には約1Lありますので、もし水上でエンジン停止しても自重を支える浮力は十分にあります。

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ボディの前半と後半は接着剤で止めてもいいと思いますが、前述の飛行機の例を参考にして、竹の丸棒(といってもコンビニの弁当に付属していたもの)を差し込んで曲げ方向の応力を受けるようにしました。そして前後の固定には別途ラグを付けておいて、タイラップで固定。十二分な強度で固定できました。內部にX字形の補強材(インフィル)が入っていて、それが外観にも影響しているのですが、これが意外といい感じで気に入りました。

そして、既存のプロトタイプに乗せていた Pee Wee 020 のパワーユニットを装着。生憎の雨天で屋外では走らせられていませんが、ガレージでは快調に浮上して走行できることを確認しました。これで完成、でもいいのですが、実はもう1つネタが残っています。エンジンの制御です。今度はパワーユニットのほうを改良して、エンジン出力をラジコンとして制御できるようにします。
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2020年07月05日

ホバークラフトを作ろう(8)COXのさらに小さいエンジンを試す

前にCox の 0.8ccのエンジンをホバークラフトに取り付けてみた話を書き込みましたが、どうもこの手の小さいエンジンにはまってしまったようです。今度はより小さい、Cox Pee Wee 020(0.33cc)を入手して試してみました。

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今回はエンジンと舵のサーボを一体化したホルダーを作ってみました。舵も3Dプリンタ製です。最初なかなかエンジンがかからず、見てみたらかなり濡れた状態だったのでニードルを絞りきってみるとエンジンが掛かりかけます。そこから開いていくと、ちょうど良いニードルの位置は約1周ちょっと、エンジンを掛ける最初のときでも1周半も回すと多すぎるぐらいでした。プロペラは .049 の時と同じAPC Speed400 4.5x4.1 で、Pee Wee 020 には少し荷が重い様子であまり高音まで音が上がりません。

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回転数を測ってみると(今はスマホの音声入力から回転数を割り出すアプリがあります)12,500rpm程度でした。推力をプロペラの直径とピッチ、回転数から求める方法があり、それによると推力は128g。プロペラの直径内で均等に空気が流れていると仮定すると風量は約6m3/min、風速は9.7m/s となりました。風量は大きいですが風速は低めです。ホバークラフトの実際の自重350gに対して、損失がないと仮定しても浮上限界の質量は620gとあまり余裕がありませんが、風量が大きいので浮上さえしてしまえば4mmほど浮き、アスファルト路面でも走りそうです。



走らせてみました。重量バランスが今ひとつですがうまく走りました。燃料が濃すぎたり薄すぎたりして回転数が10,000rpmを割り込むと滑らなくなり、これも計算通りと行った感じです。推力が小さめなこともあって運転しやすいですが、なにぶんラジコンが下手くそなもので(右に回ろうと思っていても左に回してしまうこと多数)、ちょくちょくヘルプに走っていますが・・・エンジンが小さいためもあるでしょうが、 049 エンジンのときに比べると回転が上がらないこともあって音がかなり小さめです。しかし余力がないのでスロットル制御する余地はない感じでした。

最後に、ホバークラフトの設計に用いている Excel のファイルをダウンロードできるようにしておきます。こちらはホバークラフトに限らない基礎的計算で、風速風量から推力を求めたり、プロペラの仕様と回転数から推力を求める計算が入っています。リーフブロワーの出力特性を2次関数近似したものも入っています。またこちらはホバークラフト設計検討用のファイルで、ファンの風速風量とホバークラフトの大きさ・重さ、ファンの風量のうち何割を浮上に回すかを入れると、最大荷重、浮上高、静止時からの加速度などが求められます。
posted by しんさく at 16:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

ステンレス線でスチロールカッター

先日から作成しているホバークラフト、大きな農機具(リーフブロワー)を乗せるタイプも、PC冷却ファンや小型のCoxエンジンを乗せるタイプも、どちらも発泡スチロールが主な素材になっています。それを切ったり削ったりしていくわけですが、どうしても細かな粉が出ます。発泡スチロールの粉はとても静電気を帯びやすく、服についたら取れにくいし、どこにでも入り込むため屋内作業はしたくないところ。スタイロフォームをカッターで切る場合はさほどではないですが、これはこれで結構力がいるし、ということで、やっぱり熱線式のスチロールカッターに限るな、ということになりました。

そこで例によって amazon などでニクロム線を探してみるわけですが、いろんな太さがありどれがいいのかわかりません。それでネット検索。すると素晴らしいことに、どれぐらいの電力で熱すればちょうどよい具合に切れるか調べたブログが見つかりました。それによると、0.4W/cm(1cmあたり0.4W)ぐらいがよいようです。これと、ニクロム線の単位長さあたりの抵抗値(Ω/m)ぐらいががわかれば、どれぐらいの電圧・電流になるかがわかります。抵抗値が高いと電圧が高めで電流が小さくなりますが、あまりに電圧が高いと感電の危険があります。逆に抵抗値が低いと電流を大きくする必要があるため、電源の能力が問われたり、配線の太さが問題になります。丁度いいのはどれぐらいかな・・と思ってさらに検索をしていると、なんとステンレス線でも発砲スチロールカッターが作れるという記事を発見しました。たしかに、ステンレス(代表的なもの)も鉄にニッケルとクロムを混ぜたもの(18-8ステンレスというのは、クロムが18%、ニッケルが8%という意味)なので、ニクロム線に近いわけです。

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ステンレス線なら手持ちにいろいろあります(錆びにくく、汎用性が高いので、下手な針金を買うよりもずっとおすすめです)。その中で一番細いものというと、この0.3mmの線。距離を変えながら抵抗値の変化をテスターで調べてみると、どうも10Ω/mぐらいで、狙っていた抵抗値ドンピシャという感じです。さっそくこれで発砲スチロールカッターを作って見ました。電池式だとなにかと便利ですが、エネループ4本で電圧は約5V、ステンレス線の長さを25cmにすると抵抗値は2.5Ωなので約2Aが流れます。全体で10W、単位長さあたりの発熱量は0.4W/cmということでぴったりです。



木の棒で枠を作り、ステンレス線を張ってスチロールカッターにしました。ポイントとしては、ステンレス線へのはんだ付けでしょうか。そのままではハンダが乗らないのでステンレス用のフラックスが必要です。そして切ってみた様子が上の動画。もう少し切れ味が良くてもいいかなと思いますが、切断面もきれいでうまいこと切れました。ステンレスのほうがニクロムよりも抵抗値が低いので、同じ抵抗値ならステンレスのほうが細くなり、かえって具合がいいのではないかと思います。
posted by しんさく at 01:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 電子モノ