光造形方式の3Dプリンタではデータ通りに中身が詰まった物体が出力されますが、FDM方式ではスライサーで内部を肉抜きするのが一般的です。そうしなければ材料代がかかるだけでなく、1本1本描いていく都合上、出力時間も膨大になります。また、ノズルから押し出されるマテリアルの量にも誤差があり、もし出力物の体積よりも多めに出力されると、いずれはどこかで余りが生じてはみ出すはずですので、そもそも中身が詰まった物体の出力には適さないわけです。そのかわり優れたスライサーが出揃っていて、肉抜きした内部に格子状の構造物(インフィル)を造形してくれますので、軽量でありながらもそれなりに強度のある物体が出力できるというメリットもあります。
ホバークラフトや飛行機のボディのように軽さを追求する場合、スライサーの設定で各部のマテリアル量を削減します。インフィルの密度を下げるのはもちろんですが、表面の層を少なくすることも重要で、できれば1層にしたいところ。しかし1層では設定が悪いと層間に裂け目ができたり強度が落ちたりします。いろいろと試しましたが、結局、一番の解決策は「ヘッドの速度を落とすこと」でした。ヘッドの速度を落とすとフィラメントの繰り出し速度もその分下がるので、ホットエンドの熱が十分に伝わり、造形品質が上がるようです。特にインフィルと表面の接続部はT字型になっており、ここの接続強度が落ちたり、その周囲で裂け目ができたりしがちですが、それを防ぐのに効果があります。造形時間がその分かかるのに抵抗感がありますが、層数を減らしているので相殺され、結果的には軽さと強度を両立させるのには一番のように思われました。上の写真はいずれも左が標準の50mm/sec, 右が半分の 25mm/sec で、マテリアルはPETGですが、内外ともに裂け目がなく、インフィルとの継ぎ目も目立たない良好な造形結果が得られました。
得られた設定で出力してみました。最初の筐体は付属のPLAで、2層の出力でしたので335gほどありました。今回はPETGで1層にしたところ、少しリブ等を増やしたにもかかわらず、重さは約2/3に軽量化出来ました。手に持つと明らかに軽いことがわかる一方で、薄い部分は少し弾力を感じる部分があります。PETGのほうがPLAよりも柔らかいこともありますが、PLAでは走行時にぶつかったところが欠けたりしていましたので、それに比べると割れにくくなっているのではないかとは思います。
ホバークラフトの筐体は1個のSTLファイルとして造形し、それをスライサーソフトの Ultimaker Cura で、向きを変えて2回出力することで全体を出力しています。長さは約360mmあるので収まらないこともありますが、それ以上に、いかにサポートを設けずに出力するかということがポイントになります。この筐体では先端と後端が斜めになっていて、オーバーハング部分もサポートなしでそれなりに出力できる形状になっています(といっても少しワイヤー状の未接合部分は生じます)。あらかじめ、前後の結合強度を高めるための穴も設けてあるので、4本の竹の棒(コンビニでくれる弁当の箸、直径5.5mm)とタイラップでしっかり固定できます。出力設定の画像も載せておきます。1層、速度25mm/sec で、インフィルは6%の設定です。予測では 154g と出ていますが、実際にはそれより結構軽くなりました(原因は不明)。
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