2020年07月21日

3Dプリントの軽量化

ホバークラフト本体やエンジンマウントは3Dプリンタで作成しています。現在の出力でも、049エンジン(0.8cc)はもちろん 020 エンジン(0.3cc)でも浮上して走行します。しかし後者ではあまり余裕がありませんし、今後、ラジコン飛行機などに進出したときのため?軽量化について研究してみました。

光造形方式の3Dプリンタではデータ通りに中身が詰まった物体が出力されますが、FDM方式ではスライサーで内部を肉抜きするのが一般的です。そうしなければ材料代がかかるだけでなく、1本1本描いていく都合上、出力時間も膨大になります。また、ノズルから押し出されるマテリアルの量にも誤差があり、もし出力物の体積よりも多めに出力されると、いずれはどこかで余りが生じてはみ出すはずですので、そもそも中身が詰まった物体の出力には適さないわけです。そのかわり優れたスライサーが出揃っていて、肉抜きした内部に格子状の構造物(インフィル)を造形してくれますので、軽量でありながらもそれなりに強度のある物体が出力できるというメリットもあります。

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ホバークラフトや飛行機のボディのように軽さを追求する場合、スライサーの設定で各部のマテリアル量を削減します。インフィルの密度を下げるのはもちろんですが、表面の層を少なくすることも重要で、できれば1層にしたいところ。しかし1層では設定が悪いと層間に裂け目ができたり強度が落ちたりします。いろいろと試しましたが、結局、一番の解決策は「ヘッドの速度を落とすこと」でした。ヘッドの速度を落とすとフィラメントの繰り出し速度もその分下がるので、ホットエンドの熱が十分に伝わり、造形品質が上がるようです。特にインフィルと表面の接続部はT字型になっており、ここの接続強度が落ちたり、その周囲で裂け目ができたりしがちですが、それを防ぐのに効果があります。造形時間がその分かかるのに抵抗感がありますが、層数を減らしているので相殺され、結果的には軽さと強度を両立させるのには一番のように思われました。上の写真はいずれも左が標準の50mm/sec, 右が半分の 25mm/sec で、マテリアルはPETGですが、内外ともに裂け目がなく、インフィルとの継ぎ目も目立たない良好な造形結果が得られました。

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得られた設定で出力してみました。最初の筐体は付属のPLAで、2層の出力でしたので335gほどありました。今回はPETGで1層にしたところ、少しリブ等を増やしたにもかかわらず、重さは約2/3に軽量化出来ました。手に持つと明らかに軽いことがわかる一方で、薄い部分は少し弾力を感じる部分があります。PETGのほうがPLAよりも柔らかいこともありますが、PLAでは走行時にぶつかったところが欠けたりしていましたので、それに比べると割れにくくなっているのではないかとは思います。

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ホバークラフトの筐体は1個のSTLファイルとして造形し、それをスライサーソフトの Ultimaker Cura で、向きを変えて2回出力することで全体を出力しています。長さは約360mmあるので収まらないこともありますが、それ以上に、いかにサポートを設けずに出力するかということがポイントになります。この筐体では先端と後端が斜めになっていて、オーバーハング部分もサポートなしでそれなりに出力できる形状になっています(といっても少しワイヤー状の未接合部分は生じます)。あらかじめ、前後の結合強度を高めるための穴も設けてあるので、4本の竹の棒(コンビニでくれる弁当の箸、直径5.5mm)とタイラップでしっかり固定できます。出力設定の画像も載せておきます。1層、速度25mm/sec で、インフィルは6%の設定です。予測では 154g と出ていますが、実際にはそれより結構軽くなりました(原因は不明)。
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2020年07月12日

ホバークラフトを作ろう(11)初号機の課題

エンジンや舵のマウントだけでなく、本体も3Dプリンタで作ったホバークラフト。意気揚々と?試運転してきましたが、散々でした。課題山積です。



試運転動画です。実はエンジンがかかるまでに10分ほど難儀してしまいました。今回、エンジンを横倒しにしたのですが、そのために燃料ニードルの設定変更が必要になったようで、以前の設定では燃料がジャブジャブに。1回転以上閉じたところでちょうどでした。燃料を入れるパイプが横向きになることもあって燃料の入る量が少なく、また遠心力がかかると漏れ出るようで、走行可能時間も短くなり、結局、エンジン部分は横倒しでもタンク部分は元の姿勢がいいということがわかりました。しかし現在のボディは020エンジンを前提にした高さになっているので、049エンジンは今のままでは正立姿勢では取り付けできません。検討が必要です。

そして一番問題になったのが操縦性。曲がろうと舵を切っても、ホバークラフトがスピンするだけでほとんど曲がってくれません。全体に重さが増したためにヨーモーメントが増えたこともありますが、どうも重心が後ろすぎることも問題のようです。走行時の風圧を受ける中心が重心よりも前にあるので、ボディが進行方向に対して少し横に向くと、さらにどんどん曲がる方向に回ってしまいます。內部の構造の都合でエンジンの真下に受信機・サーボのバッテリーを積んでいるのですが、これをもっと前に積まないとならないようです。さらには、方向舵だけでなく、飛行機の垂直尾翼のような安定性を増すための固定翼も付ける必要があるかもしれません。要するにボディはある程度、自然に進行方向を向くような特性がないと、とても操縦できない感じです。

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そしてもう1つ、伏兵とも言える問題がこの受信機用のバッテリーです。ラジコンの受信機には5〜7V程度の電池を繋ぐ必要がありますが、ラジコン専用のバッテリーは割高なだけでなく充電器も特殊で、電池側には過充電等から保護する機能もついていません。管理が面倒なので、スマートフォン用のモバイルバッテリーの中から小型軽量のものを探して、先にラジコンの端子を付けて使っていました。これでこれまで問題なかったのですが、今回サーボを2つに増やしたところ電流または電圧が不足するようで、すぐに電源が落ちてコントロール不能になってしまいます。やむなく今回はスロットルのサーボを外して走らせたので、せっかく作ったスロットル制御は活用できませんでした。

049エンジンはちょっとパワーがありすぎるので、小さい方の020エンジンでも試してみたのですが(動画を撮り忘れました)、こちらはこちらで問題あり。同様に重心が後ろすぎることもありますが、ホバークラフト本体の重さが増加したためにアスファルト路面ではいまひとつスムーズに走りません。前述のモバイルバッテリーと受信機(7g)を外して走らせたらスムーズだったので,このたった70g少々が分水嶺のようです。実際、
こちらで紹介した Excel での計算でも最大荷重は620g、それに対して現在の自重が500gでほとんど余裕がないですし、前の筐体よりも外寸が小さくなったので最大荷重はさらに小さくなっているはず。奇しくも計算がほぼ正確であることがわかったわけですが、いずれにしてもなんとかしなくてはなりません。よく似たエンジンとはいえ、排気量が2.5倍も違うという事実を目の当たりにしました。もう少し軽くなるように本体を作り直してもいいですが、いずれにしても安定な制御ができるよう、軽い電池を調達することにしました。あわせて、電池をもっと前方に取り付けられるようにして、重心の問題も改善することにします。続く。
posted by しんさく at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | ラジコン

ホバークラフトを作ろう(10)Coxのスロットル制御

Cox のエンジンはそもそもコントロールライン(Uコン)用ですし、そもそも小排気量なので、常時フルパワーで回転させる前提になっています。そのためスロットルがついておらず、回転数の制御ができません。今回作成しているホバークラフトでは、0.3cc の Cox PeeWee 020 エンジンだとそれなりにバランスしており、空き駐車場などで手軽に遊べる程度の加速力です。それに対して0.8cc の 049 エンジンを使った場合、ちょっと加速力がありすぎて持て余すことがあるのと、緊急時に停止できたほうがいいなと思えることがあります。そこでラジコンらしく、エンジンの制御ができるようにしてみます。

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Cox にもいろいろなエンジン制御の方法があります。タンクが別体式のものでは、吸気口のところにロータリーバルブを取り付けるようなオーソドックスな構造のものがいくらか見られます。また面白いものでは、排気口を塞ぐパーツを取り付け、これを回転させて排気の抜けを変えて回転数を制御するものもあります。しかし、タンク一体型の Cox では吸気側に配管などがなくスロットルを取り付けるのが困難でした。・・という状況のところ、背面の吸気口に針を出し入れすることでエンジンの回転制御をする方法が発案され、現在ではCox Internationalで部品を購入することが出来ます。これを試してみることにしました。

ちなみにタンク內部の燃料吸入パイプは、コントロールラインでは強い遠心力がかかることを前提に、側面(正面からみて9時方向)から吸入するようになっています。なので他の目的に使うときには配管を動かしてタンクの底から吸うようにするのですが、今回は020エンジンと高さを合わせるために、エンジンを横倒しで使うことにしました。このとき燃料吸入パイプは、上の写真のようにUコンと同じ設定に戻しておく必要があります。



テスト動画です。エンジン回転が不安定になりやすいマフラー閉の状態で試してみました。このスロットルを装着してもニードルを差し込まなければ元のエンジンのままですので、始動性に影響することはありません。そしてニードルを挿入すると回転数が下がります。ニードルの形状によるはずですが、敏感すぎることも、また鈍感なこともなくいい感じに制御ができ、エンジン停止も可能です。操作に必要な力もわずかで(吸気圧で少し吸われる感じがします)、小さいサーボで簡単に制御できそうです。

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エンジンの後ろにサーボを2つ固定するホルダーを、新しく届いた耐熱性の高い素材PETGで出力し組み込みました。これで完成です。スロットルは始動がしやすいようノータッチではフルパワーとし、ラジコンのスロットルをバック側に動かすとエンジン回転数が下がる設定にしました。梅雨で雨が続き、まだ試運転できていませんが、エンジンの能力的には問題ないはずです。試運転が楽しみです。

posted by しんさく at 02:10| Comment(2) | TrackBack(0) | ラジコン