1つ言い訳をするとすれば、このエンジンはラジコン用ではなく、その昔、1970年代のUコン(コントロールライン:ワイヤーで飛行機を引っ張りながら制御してぐるぐる飛ばすもの)用のエンジン、Cox .049 QRC です。排気量は0.049 Cubic Inch、つまり約0.8ccで、ボア・ストロークともに約1cmというもの。当時アメリカを中心に大量に製造販売されファンが多く、今も新品のエンジンや補修部品が入手できます。前のリーフブロワーがかなりうるさかったので、今回は少しでも静かになるようにとマフラー付きの QRC を入手しました。
前の記事ではラジコン用エンジンの難点として、いろいろな付属品が必要となりパワーパックとして一体感がないことを挙げていました。しかしこのエンジンの魅力は、小さいながらも燃料タンクが一体になっていること(燃料タンクが別体だと工作や配管が面倒なだけでなく、燃料を管に満たす作業などいろいろと面倒があります)。また、プロペラのそばのバネを使って手動でエンジン始動するようになっており、スターターモーターも不要です。大怪我をするほどのパワーもありませんから、燃料が違うのと、グロープラグを電池で加熱する必要があるのを除けば、難点はほとんど解消されていることになります。
始動時にグロープラグを加熱するための配線(エンジンがかかれば取り外します)は、普通の模型用エンジンとは形状が違うので専用のクリップが必要になります。安価に売られているとはいえ,このエンジンの購入価格(3,000円台)の半分ほどしてしまうので、上の写真のようにゼムクリップを使って自作しました(固定は、3Dプリンタの紫外線硬化樹脂で行っています)。燃料はさすがに買うしかなく、今回購入した燃料(メタトールにニトロメタン20%、潤滑油20%を配合したもの)も1リットルで1,000円ほどしてしまいますが、たった8ccで満タンになってしまいますので、燃費の違いを考えると十分納得できるところです。給油は100円ショップで購入した注射器で行います。他にも分解用のレンチや各部の予備部品なども入手しました。
エンジンを固定する治具は3Dプリンタで作成し、各部チェックののち、始動してみました。快調に回りました。事前に計算し予想していたとはいえ、結構な風量です。ですが、燃料タンク・プロペラ込みの「パワーパック」全体で74gしかありません。音はかなり高音の、ハエみたいな音でうるさいですが、リーフブロワーほどではないし、マフラーの開口部を閉じて有効にすればそこそこ静かになります。
そこでさっそくこれを、PC用のファンを使って作った電動ホバークラフトの筐体に乗せて動かしてみることにしました。ケースファンは単体で80g以上あり、むしろ軽量化されることになりますが、パワーは10倍ほどあるはずです。
動作の様子です。当然、アスファルト上でも余裕の浮上高と推力で走ります。ラジコンとして制御できるのは舵しかなく、速度コントロールができないので、つい止まれずにクラッシュしたり、その影響で內部のバッテリー(受信機・サーボ用なのでもっと軽くできるのですが、今回は手持ちがなく単3を4本使ったので、100g以上あります)が元の位置よりも前に飛んでしまい重量バランスがくずれてしまったりしました。さらに終盤は紙で作った舵が油でふやけてコントロール不能になったりしましたが、確認としては十分で、全体としては非常に満足行く浮上力と加速力になりました。
ちなみにホバークラフトの構造はこんな感じで、まえにPCの冷却ファンがついていたところにプロペラが配置されています。厚み25mmのスタイロフォームのボードを3枚重ねにして作りました。
今後はスロットル制御を備えた筐体を新造し、ちゃんと遊べるホバークラフトにしようと思います。このエンジンはそもそも単純なUコン用のためスロットルがないのですが、うまいこと考える人がいるもので、最近(といっても10年前ぐらいのようですが),後部の給気口にニードルを差し込む方式のスロットルが考案され、非常に軽い力で回転数制御ができるようです。届き次第、エンジン・スロットル・舵を一体化したパワーパックを作ってみる予定です。
まだ2日ほど触っただけですが、このエンジンをうまく始動するにはグロープラグの適切な加熱が重要なようです。1.5V指定ですが、電流(2A程度)が足りないとうまく赤熱しません。僕は当初、内部抵抗が小さいエネループ1本で始動していましたが、電池ボックスに100円ショップの懐中電灯を流用したものを用いたら不安定になりました。スイッチ部の接触抵抗が影響したようです。そこでタミヤの電池ボックスを買ってきて、単3のエネループ2本を並列につなぐようにしたらいい感じのようです。
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