2015年11月03日

MFレンズをAFレンズに

これまでにもいくつかのテレコンバーターを紹介してきましたが,今回はニコン純正のテレコンバーターのご紹介です.ただしそのままでは現在のデジタルカメラでは動作しませんので,改造が必要になります.

ニコンは「不変のFマウント」と言うように,1959年のニコンF以来,50年以上に渡って一眼レフカメラのマウントの寸法を変更していません.その間に露出計との連動やオートフォーカス化など次々と新機能が追加され,それによって少しずつ拡張され,また互いに対応しない組み合わせも現れてきています.しかし依然として今でもニコンFで使えるレンズが売られていますし,初期のレンズもニコン自身による改造サービス(既に終了)により,現在のデジタルカメラに装着することもできます.

その中でも,もっとも大きな変化の1つはオートフォーカス化でしょう.キヤノンやミノルタはオートフォーカス化にあたってレンズマウントを完全に刷新しましたが,ニコンはレンズマウントに穴を開けてレンズとボディを連動させることにより,マウント形状を大きく変えることなくAF化を達成しました.そのため,従来のマニュアルフォーカス用レンズでも,その後のオートフォーカスカメラに装着して使うことが出来たのですが,ニコンはさらにおもしろい商品を用意していました.それがここで紹介する「AFテレコンバーター TC-16AS」です.

strap.jpg


上の写真は,以前の記事で500mmの超望遠レンズにつけるストラップの話を書いた時のものです.このテレコンバーターは1.6倍ですので,500mm F4 レンズに装着すると,合成800mm F6.4 のレンズに変化します.これにより撮影した例はこちらの記事の末尾で少し紹介しました.またこちらのニシオジロビタキの写真もこの組み合わせで撮影したものです.ご覧のように十分実用になり,私の野鳥撮影の主力機材になっています.開放絞りでも割りと良く写りますが,最近のカメラは高感度でも画質が良いので,よりコントラストを上げたり被写界深度を増すために,日中ではマスターレンズを1〜2段絞って撮影することが多いです.

後に述べますが,このテレコンバーターでピントが調整できる範囲は超望遠レンズに装着した時は狭くなりますので,おおまかなピント合わせはマスターレンズのフォーカスリングで合わせておき,最後の微調整をAFで行っています.私の場合,カメラ(D800E)はシャッターボタン半押しでAFが動かないように設定しており,カメラ背面のAF-ONボタンを押して初めてAFが動くようにしています(いわゆる「親指AF」です).これと併用することで,好きなときにAFとMFを切り替えたり併用したりしながら撮影できる上,AFのピントが大きく外れてしまって被写体を見失うことがないのがこの組み合わせの美点です.要するに,マスターレンズのピントリングによってAFリミッターの範囲を変えるような使い方ができるわけです.

DSC_0783.jpg


さて,このテレコンバーターをD800Eなど最近のデジタルカメラで使用するには改造しなければなりません.後に述べるように,このテレコンバーターは1980年代後半〜1990年代初頭のAF黎明期にのみ売られていたもので,当時でも対応しないボディがありましたし,最近のカメラではすっかり対応から外されてしまっているのです.しかし世の中にはすごい人がいるもので,カメラと連動させるための電気接点を移植すると動作することが発見されました.上の写真では,左から2番目のAF接点が移植されてきたもので,もとは右から2番目にあるピン(今は穴だけがあいています)を流用しています.内部でも細かな配線の付け替えがあり,少々難易度が高いですが,電子工作が得意な方なら自分で改造ができると思います.さらに内部のICのピンを2箇所カットすることで,このAFテレコンバーターは 70-210mm F4 レンズのズームリングが 145mm の位置に設定されているとしてボディに認識されるようになります(そのため EXIF にもデータが残り,例えば F5.6 と記録されていれば,マスターレンズが1段絞られていることになります).

改造の方法はこちらでは詳しく説明しません.インターネットで "TC-16AS 改造" などと検索すると,改造方法に関する詳細な記事をいくつも見つけることが出来ます.

さて,この TC-16AS ですが,超望遠レンズだけでなく,広角を含む多くのニッコールレンズに装着することが出来る点も大きな利点です.ニコンのテレコンバーターには,昔はマニュアルフォーカス用のものもありましたが,現在は超望遠レンズ用のものしかありません.しかしこのレンズはマスターレンズへ差し込まれるような構造でないために取り付けられるレンズが多いのです.

img001.jpg img002.jpg


上の写真はF-801sが発売された当初のカタログ(1991.12.10発行)で,その末尾にこのテレコンバーターが紹介されています(同じ F-801s のカタログでも,もう少し後のカタログでは紹介部分が削除され,対応表に書かれるだけになります).このテレコンバーターでよく話題になるのは,本体には TC-16A としか書かれていないのに,正式名称は上のように TC-16AS となっていることです(海外では TC-16A として売られていたようです).5群5枚構成のテレコンバーターレンズ系がカメラボディ内のモーターにより駆動されて前後され,それによりオートフォーカスが可能となりますが,その移動量(像面側で約2mm程度のピント移動)が小さいため,焦点距離の短いレンズでは比較的近くまでピントが合いますが,焦点距離の長いレンズほどその範囲が狭まってきます.ただし,マスターレンズ側を繰り出すことで元のマスターレンズよりも若干近い距離までピント合わせすることができるので,実用上は大きな問題はありません.当時のAFカメラは合成F値が F5.6 以上でなければなりませんでしたが,最近のデジタル一眼レフは F8 でAFが動作するため,上のリストでは 500mm F4P ではAF出来ないことになっていますが,D800E では問題なく使用できます.

DSC02599.jpg


上の写真は,Ai マイクロニッコール 55mm F2.8S を TC-16AS を介して D800E に取り付けたところです.この組み合わせでは 88mm の中望遠マクロレンズとなり,最大撮影倍率も等倍に迫ります.以下の写真はこの組み合わせの最短撮影距離で撮影したものです(被写界深度を得るため2段絞っています).ご覧のように十分シャープな写真を撮影することが出来ます.

DSC_0786.jpg


この他にもこちらで,Ai Nikkor 500mm F4P にこのテレコンバーターを組み合わせて撮影した野鳥の撮影例を多く掲載していますのでよければ御覧ください.

このAFテレコンバーター,発売当時はマニュアルフォーカスレンズを揃えてきた旧来のニコンファンのためのものだったと思われますが,ズームレンズを含め多くの標準域のレンズが揃った今では必要となる機会が少ないものです.しかし大口径望遠レンズはますます高価になっていますので,古めだけれども画質に定評のある望遠レンズを活躍させるためにも使えますし,また上の作例のようにマクロレンズと組み合わせても,AFとMFをうまく使い分けることができて便利なものです.

なお TC-16AS をそのまま,または改造して非対応のカメラに装着したときの故障や問題については自己責任となります.TC-16AS は,無改造のままでも D2 では動作するようですが,例えば D1 の取扱説明書では使用できないレンズのリストに入っています.また当然のことながら,ボディ内にAFモーターを備えていないボディ(初級/中級のDXフォーマット機等)には,そもそも装着してもAFの動作させようがありません.
posted by しんさく at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ