2013年04月14日

カメラオタクは万国共通

またカメラネタですが,今回はかなりディープです.

最近は一眼レフカメラよりも小型な,いわゆる「ミラーレス一眼」が流行っています.このタイプのカメラはレンズ取り付け部(レンズマウント)から撮像素子までの奥行きが小さいとか,レンズを通した画像をそのまま見ながら撮影できるとかで,「マウントアダプター」と呼ばれる金具を付けることによって,純正品でないレンズを取り付けて撮影することができます.メーカ自身も新しいマウントのカメラに,従来型のレンズを取り付けることができるようなアダプターを発売していることがあります.下の写真は,ニコンのミラーレス一眼カメラ Nikon 1 に,1959年以来のレンズマウントである「ニコンFマウント」のレンズを取り付けるためのニコン純正アダプター FT1 を使い,AF-S Nikkor 50mm F1.4 を Nikon1 V1 に取り付けたところです.

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上記のように,この手の「マウントアダプター」はミラーレス一眼の登場で最近かなり盛り上がっていますが,実はフィルムカメラの時代から似たようなものはありました.やはり,取り付けたレンズを通してピント合わせやフレーミングができると便利なため,特に一眼レフカメラには多く見られます.以下で紹介するカメラ,ローライフレックスSL66Eもそのような用途に便利に使えるカメラです.

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このカメラは少し大きなフィルムを用いる中判カメラです.中判カメラではレンズ内にシャッターを備え,ボディ側にはシャッターを搭載しない機種も多くありますが,このSL66はボディ内にフォーカルプレーンシャッターを備えているので,シャッターを搭載していないレンズでも使うことができます.また,普通はピント合わせのための繰り出し機構(ヘリコイド等)はレンズ側に付いているのですが,このカメラではボディ側に 50mm も伸びる蛇腹式の繰り出し機構を持っているので,極端な事を言ってしまうと「くっつきさえすれば,どんなレンズでも撮影ができる」カメラになっています.虫眼鏡のレンズを付けて撮影する人もいるぐらいです.特にこのSL66Eは露出計が付いているので,そのようにしてつけたレンズの露出調整も出来てしまいます.そこで今回,大判カメラ(中判よりも大きなフィルムで,巻取り式でなく1枚ずつ撮影する方式)用レンズである,ドイツ・ローデンシュトック製 アポマクロシロナー 120mm F5.6 を装着してみました.

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このレンズは比較的新しいレンズで,プロの写真家がカタログ用の商品撮影などをするときに使うものです.特殊なガラスを用い,色のにじみが特に出にくいような設計になっています.現在も販売されているレンズで,定価で言うと非常に高価なレンズですが,訳あって2本も譲ってもらうことが出来ました.レンズはドイツ製ですが,レンズの中間に日本製のコパル0番シャッターが付いています(大判用レンズでは一般的なものです).

さて,このレンズをローライフレックスSL66Eに付けるにはどのようにするか.上に書いたように,ボディにレンズが「くっつきさえすれば」撮影はできるので,それこそダンボールとガムテープでもなんとかなりますが,そこはやはりマウントアダプター金具の登場となります.この「0番シャッター」は直径35mmの穴があればそこにネジ止めでき,実はこのカメラが販売されていた当時はそのための金具も用意されていたのですが,今はそんなに入手が簡単ではありません.しかしそこが世界のカメラオタクネットワーク.台湾の方がそのような金具を制作して販売していますので,ネットで連絡し,譲ってもらいました.

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金具そのものは非常に単純で,アルミの固まりからレンズに取り付けるための形状を削り出しただけのものですが,あなどるなかれ.ボディに付ける金具の形状(バヨネットマウント)はかなり複雑で,下手な形にしてしまうとガタがあったり,最悪ではボディから外れなくなってしまいます.その点,この金具はオリジナルの形状に非常に忠実に作ってあり,かなり出来のよいものだと思いました.継ぎ目もなく,部品が外れるような心配もありません.よく考えると,かなりの大きさのアルミの固まりから削りだしているわけで,「大吟醸」レベルです.ともあれ,このアダプターの穴の部分に(大判カメラでは当たり前の作業である)0判シャッターをネジで取り付けて完成.

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ボディに取り付けた様子はこのようになります.レンズの焦点距離の関係で,ボディ側の蛇腹を 9mm ほど伸ばした所で無限遠にピントが合うようになりました.これはこれでありがたく,SL66シリーズの特徴である「ティルト撮影」が無限遠に対して行えます.本城直季さんの作品が評判を呼び,最近流行した「ミニチュア風写真」のための逆ティルト撮影も行うことが出来そうです.このレンズはマクロ撮影用のレンズですが,ボディ側の蛇腹をいっぱいに伸ばしたところで 1/3 倍程度,被写体の大きさで言えば一辺 15cm ぐらいの正方形をいっぱいに写すこともできます.今年の冬の写真展は(いまのところ)マクロ撮影で作品を作ろうと思っているので,これが活躍するかもしれません.

マウントアダプターといえばもう1つ.今度は「ニコンの最初のマウント」のレンズを他のカメラに取り付けるアダプターを紹介します.ニコンは1988年に現在の社名に変更する前は日本光学という名前の会社で,戦前・戦中は主に軍需品(潜水艦の潜望鏡など)を作る会社でした.それが敗戦を受けて民需品に転換し,1948年に販売開始したカメラが「ニコン」という名前でした(のちに区別のため,ニコンTと呼ばれるようになる).この「ニコン」はライカのようなレンジファインダータイプと呼ばれるカメラで,それに採用されていたレンズマウントは,1959年に販売開始された一眼レフ「ニコンF」から現在の一眼レフカメラまで綿々と続くニコンFマウントとは互換性がありません.このニコンマウントのカメラは非常に高性能・高品質だったので,現在でも完全に動くカメラを入手するのは難しくありませんが,残念ながらデジタルカメラは存在しません.そこでマウントアダプターの登場となります.

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このアダプターはニコンのレンジファインダー用レンズ(ニコンSマウントなどとも呼ばれる)を,ライカM型のMマウントに変換するアダプターです.しかも素晴らしいことに,光学式距離計に連動します.ニコンのレンジファインダー用レンズを現在のミラーレス一眼,例えばソニーEマウントやマイクロフォーサーズマウントなどに取り付けるアダプターも存在します.しかしこれらのアダプターの多くでは標準レンズが使えないことが多いのと,撮影をライブビューに頼ることになります.ライブビューは厳密なフレーミングや距離合わせが可能というメリットはありますが,開放絞りでピント合わせをしようとすると絞りの操作が面倒になるという問題もあります.その点,このアダプターであれば,ライカやエプソンのレンジファインダー式デジタルカメラと組み合わせることで,従来のレンジファインダー式カメラと同じ操作で撮影ができるわけです.

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エプソンの R-D1 に取り付けたところ.取り付けたレンズは,Nikkor-W 3.5cm F2.5 です.このカメラはAPS-Cサイズの素子を備えているので,ちょうど標準レンズぐらいの画角で使うことができます.

このタイプのレンズマウントは「カプラー」とも呼ばれ,古くからちょくちょく作られてきましたが数が限られており,中古カメラ店などで現れても非常に高価になってしまいます.そんなわけで私自身,欲しいと思いながら持っていなかったアイテムの1つでした.上の写真のものは,最近ベネズエラの方が制作されたもので,これもネットで問い合わせ,購入することが出来ました.こちらもかなり出来のよいものだと思います.つくづく,世界にはすごいカメラオタクがいるなあ..と思わされます.
posted by しんさく at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | カメラ

2013年04月09日

カメラのレンズを望遠鏡に

今日はちょっと変わったアイテムのご紹介.写真用のレンズに付けると望遠鏡になるアダプターです.

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このアダプタ,左はニコン製で「レンズスコープコンバーター」といい,右はカメラ用フィルターの有名メーカであるケンコー製の「スコープアイピース」といいます.どちらも一眼レフカメラ用のレンズに装着すると,望遠鏡のようになるアダプターです.レンズに装着している様子はこちら.

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私はニコンのカメラを使っていますので,どちらもニコンFマウント用のものですが,ケンコー製のものには他のレンズマウントのものもありました.これらはとても良く似ていて,どちらも「焦点距離 x mm のレンズに装着すると,x/10 倍の望遠鏡になる」というものです.また望遠鏡といっても,天体望遠鏡のように対象が上下・左右に逆になって見えることはなく,正立正像,つまり対象を直接見た時と同じ向きに見えるので便利です.専門的に言うとどちらにも,双眼鏡などによく使われているシュミット・ペシャン型のプリズムが入っており,その後に焦点距離 10mm のアイピースレンズが付いているような仕組みになっています.正立正像なので,どちらかというと望遠鏡と言うよりも双眼鏡やフィールドスコープ,スポッティングスコープに近い仕組みです.

どちらも望遠レンズを持っている人には別途フィールドスコープを買う必要がないというすぐれものですが,双眼鏡と同様,倍率が10倍を超えると手ぶれの影響が大きくなるので,出来れば三脚座がついたレンズを使うのが良いと思います.そして肝心の見えはというと,結構良いと思います.特に中央付近は,私の視力には十分な性能のように思えます.

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上の写真はアイピース部分に iPhone のレンズを近づけて撮影してみたところです.肉眼での見えとは必ずしも一致しませんが,参考になると思います.どちらもかなり強い糸巻き型の歪曲がありますが,視野が丸いことなどから眼視ではあまり気になりません.また周囲は中央よりも甘いですが,これも見たい方向にレンズを向ければ良いのであまり問題ではないと思いますし,さほど気になりません.

仔細に像を見比べてみると,やはりニコン製のほうが少し性能が良いようです.視野の広さ,周辺部分の画質,歪曲収差の度合いに加え,ニコンのほうが少し像が明るいようです.ただ単純にニコンばかりが良いとも限らず,中央部分の切れ味は心なしか,ケンコーのほうが良いような気も..一長一短といったところでしょうか.ただしニコンのほうはストラップホールが付いていますので,2本のレンズを持ち歩いての撮影の時にカメラにつけていない方のレンズを首から下げておくことができる,というメリットがあり,実はこの用途,つまり単なるレンズの持ち歩き用に意外に重宝していたりします.

問題はこれらのアクセサリ,どちらも現行商品ではなく,中古でしか手に入りません.しかも「珍品」のたぐいではないものの,そんなにありふれていませんので,中古カメラ屋に行けばすぐに手に入るといったほどでもありません.私の場合,ニコン製のものはかなり以前に購入していました.そしてさらに最近,ふと怪しげな中古カメラ屋の店頭でケンコー製が売られているのを見つけ,無事,保護しました.2,800円でした.この手のアクセサリは珍品とはいえないまでも,意外と探すと見つからないものなので,見つけた時に保護しておくのが良いようです.

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さて,これらの製品はいつ頃売られていたのか?自宅の山のような資料を探ってみると,ケンコー製のものは,94年ごろのアクセサリーカタログに掲載がありました.一方,ニコンのほうは,ニコン自身の資料では見つけることができませんでしたが,ニコンF4のころの解説書(1989年の書籍)の片隅の,ニコン製品一覧に表記を見つけることが出来ました.1984年から10年間ほど売っていたのではないかと思われます.

なお,どちらも古い製品のため,ニコンFマウントのレンズでも絞りリングが備わらないGタイプレンズでは絞りが閉じてしまうために使用することが出来ません.ただし最近,ケンコーが再び "lens2scope" という名前で同様の製品を発売しているようです.三脚座が付いているのと,アイレリーフが上記2製品より長い(20mm.これに対し,ニコン製のものは取扱説明書によると11mm)ようなので,よさそうです.海外には45度に折れたタイプもあるようですが..
posted by しんさく at 00:58| Comment(1) | TrackBack(0) | カメラ